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フラワーボーイズ  作者: TTT


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第3話:『残り数センチの限界』

いつも『フラワーボーイズ』を応援いただき、ありがとうございます!

第3話は、チャンネルの動画撮影風景をお届けします。

かずとさんとたくみが「成金vs貧乏」というぶっ飛んだ企画で大暴れ!

現場は爆笑に包まれ、手応えもバッチリ……に見えますが、カメラの「画角の外」では何やら不穏な空気が漂い始めており……?

華やかな表舞台と、張り詰めていく裏方の心理描写にぜひご注目ください。それでは本編をどうぞ!


「はい! 成金は新陳代謝が激しいからね。ふぅー、今日も札束の重みで肩が凝るわぁ!」


ワンルームの事務所に、かずとさん(28)の誇張しすぎた大声が響き渡る。

頭には通販で買った安っぽいシルクハット。首元には、たくみ(24)がハサミで切り抜いたおもちゃの1万円札を何枚もぶら下げ、それでわざとらしく顔の汗を拭いている。


「最高です、かずとさん。これぞ僕が思い描いていた成金のディテール。じゃあ、次、貧乏のターンいきます」

その隣で、たくみが真顔のまま、床に敷いたブルーシートの上にどっかと座り込んだ。手にはどこからか拾ってきた2本の流木を握っている。

「貧乏を極めるということは、文明を捨てるということです。……ふんっ、ふんっ、……あ、木から煙が出ました。これが僕たちの今日の晩御飯です」


「ギャハハハハ! 木を擦り合わせて火を起こす貧乏って、それただの原始人だろ! マジで意味がわからないよ!」

カメラのすぐ横で、リーダーのしょうた(25)が腹を抱えて大爆笑していた。


「でもこれ、ビジュアルのインパクトが強すぎて絶対にサムネ映えするよ! いいよ二人とも、その調子でフリートークを続けて!」


撮影現場は、間違いなく1話以上の熱量で盛り上がっていた。動画の企画としては文句なしに「バズる」手応えがある。


だが――。

その3人の楽しそうな声を、カメラのファインダー越しに、冷徹な目で見つめている男がいた。カメラマン兼、進行担当のたける(26)だ。


たけるは微動だにせずカメラを固定しながら、心の中でズキズキとした、重苦しいイライラを募らせていた。

(……しょうたさん。あの二人ばっかり見て、僕のカメラワークや、この無茶苦茶な設定を画角に収めるための工夫は全然見ていないじゃないですか……)


画面の前で全肯定されて輝くかずとさんとたくみ。そして、その二人のエンタメを全力で楽しそうにプロデュースするリーダーのしょうた。

カメラの後ろという「画角の外」に置かれたたけるには、誰も言葉をかけてくれない。それどころか、この撮影が終われば、あの原始人の火起こしシーンのシュールな「間」をどうやってテンポよく編集するか、成金の音割れした大声をどう調整するか、その膨大な裏仕事が全てたける一人の肩にのしかかってくるのだ。


募る孤独と嫉妬。たけるの胸の奥にあるストレスゲージは、じわじわと赤色に染まり始めていた。


撮影が後半に差し掛かると、二人のノリはさらにエスカレートしていった。


「あ、成金がステップを踏んだ拍子に、貧乏人の食糧(バナナ)が踏まれました! これは格差社会の縮図です!」

「そうだよ! これが成金のステップだぜぇ! オラオラァ!」

かずとさんがシルクハットを揺らしながら、狭い事務所の中をドタバタとステップを踏んで暴れ回る。


「ちょっと、かずとさん危ないです! そこ、僕の編集用デスクのすぐ近く……!」たけるが慌てて声を尖らせるが、爆笑する声にかき消される。

「大丈夫だって、たける! ホラ、たけるももっと笑顔でいこうよ、楽しい企画なんだからさ!」しょうたが屈屈のない笑顔で振り返り、たけるの肩をぽんと叩いた。


楽しい企画。カメラの前で騒ぐだけの彼らにとっては、確かにこれはただの「楽しい遊び」かもしれない。

(何も分かっていないくせに……)たけるの奥歯が、ギリ、と音を立てた。理性の糸が限界の95%まで張り詰める。


「――はい、カット。今日の分の撮影、終了です」

たけるは感情を完全に押し殺したトーンで機材の録画ボタンを止めた。


「いやー! 今日も最高の絵が撮れたわ! マジでフラワーボーイズ最強じゃない?」

「ご飯行きましょう、ご飯。かずとさんの奢りで」「おう、成金の俺に任せろ!」

ハイタッチを交わし、大騒ぎしながら片付けを始める3人。たけるは一人、無言でカメラを三脚から外し、いつものようにデスクに向かって夜の編集作業の準備を始めた。


一見、大爆笑の中で何事もなく一件落着したかのように見える撮影現場。

しかし、3人が「何食べに行く?」と盛り上がっている、そのすぐ後ろ。


カメラのレンズが、床の電源タップの周辺を静かに捉えていた。


かずとさんたちが暴れ回った拍子に、足に引っかかったのだろう。

たけるのメインPCに繋がる太い電源コードが、コンセントから抜けるか抜けないかの、本当にギリギリの位置まで力任せに引っ張られ、パツパツに突っ張っていた。


あと数センチ、誰かがそこに触れるだけで、全てが崩壊する――。


不穏な、静かな心臓の鼓動のような余韻を残したまま、事務所の照明が暗転した。

第3話をお読みいただき、ありがとうございました!

現場は大盛り上がりでしたが、カメラマンのたけるのストレスゲージは限界寸前。そしてラスト、あのパツパツに突っ張った電源コードが不穏すぎます……!

誰の足が引っかかるのか、あるいはたけるの理性が先に弾けるのか。

「ああっ、そこ危ない!!」と思った方は、ぜひ【感想】や【ポイント評価】、ブックマークで教えていただけると嬉しいです!

次回、フラワーボーイズの事務所に最大の危機が訪れる……!?

第4話もどうぞお楽しみに!

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