大人の事情を、WEBの暴力(再生数)で殴り倒す!
みなさん、お待たせしました!『フラワーボーイズ』第11話です!
前回、謎の男・T×3から告げられた「アニメ化始動」の報せ。
歓喜に沸くしょうたたちですが、テレビ業界という名の巨大なモンスターは、そう甘くはありませんでした……。
浮かれる男たちを待ち受ける、容赦ない「大人の事情」とは!?
激動の第11話、どうぞお楽しみください!
「もしもし、しょうたです……!」
俺は震える手で通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。居酒屋のテーブルを囲むかずとさん、たける、たくみの視線が、痛いほど俺に突き刺さる。
スピーカーから聞こえてきたのは、ボイスチェンジャーで変調された、不気味なほど機械的な声だった。
『――素晴らしい。男性陣のボイスデータ、確かに受信した。完璧だ。君たちの泥臭いイケボ、私の計算を遥かに超えていたよ』
「じゃ、じゃあ……!」
『合格だ。約束通り、フラワーボーイズの地上波アニメ化プロジェクトを正式に始動する。……ただし』
T×3の声のトーンが、一段と冷徹さを増した。
『ここからはWEBの世界じゃない。テレビ業界という“大人の事情”という名のバグが、君たちを待ち受けている。覚悟してくれたまえ』
プツリ、と非情に切れる通話。
一瞬の静寂の後、「うおおおおお!」とかずとさんが居酒屋のジョッキをガタガタ言わせながら狂喜乱舞した。
「やったなしょうた! アニメ化決定だ! 俺たちの時代が来たぞ!」
「マジかよ……俺、テレビに出るのか。某国民的アイドルM・Jに似ているこの俺の素材が、ついに……!」
俺が髪をかき上げようとした瞬間、たけるの高速タイピング音が室内の温度をマイナスまで引き下げた。
「おい、エンタメ(笑)脳。浮かれるのはそこまでだ。T×3が言った『大人の事情』。その第一波が、私のメールボックスにすでに着弾している」
たけるがノートPCの画面を俺たちに突き出す。そこには、アニメ制作会社から届いた【第一回・企画構成案】というPDFファイルが開かれていた。
「なになに……? 『キャスト配役について。話題性および大人の事情(スポンサー枠)により、男性キャラ【オレ】役には、今をときめく超人気イケメン声優・神楽坂響氏を起用。なお、これに伴い、元々の音声担当者(しょうた氏)は、背景の“通行人A”および“ガヤ”へのスライドを打診する』……って、おいぃぃぃぃ!?!」
俺の絶叫が居酒屋に響き渡る。
「ちょっと待て! 俺のイケボは!? プライドを捨てて絞り出した、あのガチのテイクはどうなるんだよ!」
「当然の結果だ、しょうたさん」
たけるは表情一つ変えずに眼鏡を押し上げた。
「知名度ゼロの一般WEBライターと、数々の女子を気絶させてきたトップ声優。戦闘力で言えば、初期ステータスの村人と、ラストダンジョンの魔王ほどの差がある。プロのマーケティングの観点から見れば、お前がガヤに降格されるのは論理的帰結だ」
「シュールですね……」
たくみがボソッと呟く。
「しょうたさん、せっかく10話で格好つけたのに、11話の冒頭で声帯を奪われるなんて。前代未聞のデバフ(弱体化)ですよ」
「俺だけじゃないだろ! たける、お前の『相棒』役はどうなんだよ!」
俺が食い下がると、たけるは画面をスクロールした。
「私は『現状維持』だ。どうやら私の冷徹ボイスは、制作側の音響監督に『本物のAIを雇うより安上がりでリアルだ』と評価されたらしい。コスパという名のロジックが勝った」
「AI扱いされてんじゃねえか!」
「それより、もっと深刻なエラーはこれだ」
たけるが次のページを開く。そこに映し出されたのは、アニメ版フラワーボーイズの【先行カット(キャラデザ)】だった。
それを見た瞬間、俺たちの動きが完全に止まった。
画面に映っていたのは、綺麗に描かれた5人組……ではなかった。
作画が絶妙に崩壊し、手の指が6本あったり、俺の顔のパーツが中心に寄りすぎて別人のようになっていたり、背景のビルがピサの斜塔ばりに傾いている、まさに「地獄の作画」だった。
「……なぁ、たける」
かずとさんが引きつった笑顔で呟く。
「これ、俺たちの動画の立ち絵の方が、遥かにクオリティ高くねえか……?」
「予算とスケジュールのバグだな」
たけるがため息交じりに分析する。
「地上波アニメ化とは名ばかりの、超低予算・深夜3時枠の1分間ショートアニメ枠だ。制作会社のアニメーターが過労で限界を迎えているデータが、この線のブレから見て取れる。このままだと、第1話が放送された瞬間に、ネットで『作画崩壊クソアニメ』として大炎上する確率が98%だ」
声帯を奪われた上に、顔面まで崩壊の危機。
WEBでちやほやされていた俺たちは、テレビという巨大なモンスターの足元で、完全に迷子になっていた。
「クソッ……! 舐めやがって!」
俺は机を叩いて立ち上がった。
「アニメ化はめちゃくちゃ嬉しい! でも、こんなバグだらけの状態で俺たちの『フラワーボーイズ』を世に出せるかよ! 神楽坂さんだか何だか知らねえが、俺の声帯も、俺たちの作画も、自分たちの手で修正してやる!」
「ほう、具体的にどうするつもりだ、しょうたさん」
たけるが冷ややかな、しかしどこか楽しそうな視線を向けてくる。
「決まってるだろ! 次の動画で、アニメ制作会社も、T×3も、ぐうの音も出ないほどの『圧倒的な神回』を作って、俺たちのクオリティをテレビ側に見せつけてやるんだよ!」
「なるほど。大人の事情を、WEBの暴力(再生数)で殴り倒すわけですね」と、たくみが拳を握る。
「いいぜ、やってやろうじゃねえか!」とかずとさんも吠えた。
その時、たけるのPCに、新たな通知がポップアップした。
件名は【地上波アニメ『フラワーボーイズ』制作発表、及び、リアルファンミーティング開催決定のお知らせ】。
「……さらにエラーが追加されたぞ、しょうたさん」
たけるが画面を指差す。
「来週、アニメ化発表のリアルイベントが開催される。そして、そこには【オレ】役の神楽坂氏と、WEB版のオリジナルキャストである『俺たち』が、同じステージに登壇することが決定している」
「え……? 本物の超人気声優と、声帯を奪われた俺が、同じステージで生お披露目……!?」
地上波の荒波は、俺たちの想像を遥かに超えるスピードで、フラワーボーイズを飲み込もうとしていた。
第11話をお読みいただき、ありがとうございました!
せっかく格好つけたのに、冒頭で声帯を奪われ「通行人A」に降格させられる主人公・しょうた(笑)。さらに追い打ちをかける作画崩壊と地獄のリアルイベント告知……!
果たしてフラワーボーイズは、このテレビ業界の荒波を「WEBの暴力(再生数)」で殴り倒すことができるのか!?
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【追記】
実は……今から6〜7年前に、私(木村 昇 名義)がKindleで自費出版した幻の小説『家族ごっこ・いたちごっこ』という作品があります。
今のオレたちの創作のルーツや原点が詰まった、少し尖った自信作です。もし興味を持っていただけたら、AmazonやKindleアプリで検索して覗いてみてもらえると嬉しいです!
それでは、次回の更新もお楽しみに!




