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九州の覇王  作者: 大野半兵衛


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第7話 悪だくみじゃないよ、商談だよ

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 第7話 悪だくみじゃないよ、商談だよ

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 天文21年4月。

 俺は宗像の当主であり、宗像神社の大宮司だ。

 そんなわけで宗像三宮へ参るのだが……。

 総本山である辺津宮へつみやはいい。

 ここは蔦ヶ岳城から1里(4キロメートル)ほどしか離れていない。

 陸路だ。


 だが、中津宮なかつみやは筑前大島、沖津宮おきつみに至ってはさらに遠い沖ノ島に宮があるのだ。

 そんなわけで、沖津宮から帰ってくる船の上の人である俺。


 筑前大島は陸から2里ほど。

 筑前大島から沖ノ島は12里くらい。

 現代なら動力のある船でサーッといける距離だが、この時代ではそうもいかない。

 しかも、船はめっちゃ揺れる。


 日本で使われている船は、小型の小早、中型の関船、大型の安宅船がある。

 基本的にどれも手漕ぎだ。


「エイッ」

「ホッ」

「エイッ」

「ホッ」

「エイッ」

「ホッ」


 かけ声で息を合わせ、40人の屈強な水夫たちが櫂を漕ぐ。

 暑苦しいく気性が荒いヤツらだが、単純で気のいいヤツらでもある。

 こういうヤツらは嫌いじゃない。


 俺は船酔いになりかけつつも、なんとかキラキラを出さずに済んだ。

 宗像水軍の総司である鷲が、船酔いで情けない姿を晒さずに済んだのだ、素晴らしいことだよ。




 天文21年7月。

 宗像強化計画は順調だ。

 順調すぎて怖いくらいだ。

 許斐氏任に任せた玻璃の生産が軌道に乗ったのが、10日前。

 市場に出した途端、膨大な利益を得た。

 色のないビー玉のような玻璃玉、直系1尺の平皿の2商品だ。


 さらにジイ様が銭の鋳造により良銭を市場に出している。

 ジイ様め、博多の商人と組んで鐚銭6枚を良銭1枚と交換してやがる。

 なんでも朝鮮を経由しているから、経費がかかるのだとか。

 上手いこと言うわ。

 博多の商人はその良銭を使い、地方の鐚銭を1対7以上の比で集めてくるのだろうな。

 博多商人は、これで銭自体で商売ができると知った。

 良銭と鐚銭の交換比率は、今後大きくなっていくことだろう。


 儂としては、日々体を鍛え、書を呼んでいる。

 どんなに現代の知識があっても、戦術や戦略は素人だ。

 ゲームの知識がリアルでも通用するなら、誰も苦労はしない。

 それに体を鍛えなければ、この激動の時代を生き残ることさえできない。

 自己啓発大事。


 時々狩りにもいく。

 狩りは山野を歩くので、これもよい体力強化になる。

 まだ7歳(実際は6歳)だから、ガチムチに鍛えることはしてないが、歩きなら健康になり体も鍛えられる。


「若」

「うむ」


 貞安の声に反応し、体を低くする。

 貞安は弓の名人というだけあって、遠くの獲物を発見するのが早い。

 獣の息遣いを感じ取っているかのようだ。


 獲物は熊だった。

 え、デカくないですか?


「討ち漏らしたら、猛然と遅いかかってくるやもしれませぬ」

「分かった」


 つまり、討ち漏らすな、と。

 そんなプレッシャーをかけられると、手が震えるじゃないか。


 スコープの向こうの熊が遠く見える。

 いかん、いかん。

 落ちつけ、俺。

 息を大きく吸って吐く。

 よし、落ちついた。

 銃声が木霊し、熊が倒れる。


「若、もう1発入れておいてください」

「そうだな」


 九州の山で、手負いの熊ほど危険なものはない。

 今度は頭を狙う。

 丁度眉間がこちらに向いていたので、撃ち抜く。

 なかなかいい腕じゃないか。

 スナイパー、鍋ちゃんと言ってくれ。


 大きな熊を城に持ち込み、解体する。

 この熊の皮で俺の防寒具を作ろうかな。

 防御スーツのおかげで寒さは防げているが、こういうのを着て戦うのも面白そうだ。

 敵が驚いて逃げてくれたなら、それもありがたい。




 天文21年8月。

 今年一番の暑い日に、神屋孫八郎と面会した。


「お殿様、ご無沙汰いたしております」

「ああ、久しぶりだ。随分儲けたそうだな」

「いえいえ、ボチボチです。はい」


 嘘言え。


「噂は聞いているぞ。なんでも大友に飴を持ち込んで、100個を500貫で売りつけたらしいじゃないか」

「ハハハ。これはこれは。ハハハ」


 笑って誤魔化してやがる。

 どうもすでに300個を売り、1,500貫を手にしているらしい。

 110貫で儂から買ったものを、1,500貫で売っているのだから、商売人とは恐ろしいものだ。

 儂は精々5倍くらいだと思っていたんだが、13倍以上で売り抜けやがったよ。


「で、今日は何用だ?」

「はい。また飴をご用立ていただけないかと」

「この業突張りめ、またぼったくるつもりか」

「いえいえ、そのようなことは、はい」


 まあいい、俺は110貫で納得して売ったのだから、これ以上グチグチ言うつもりはない。


「飴はない」

「そうですか……」

「と言いたいところだが、1壺ある」

「本当にございますか!?」


 曇った表情が一瞬で輝いた。


「売上の半分だ。それで譲るぞ」

「それは……」

「と言いたいところだが、3割でよい」

「1,500貫で売れば450貫だ。高値で売れば売るほどお主も儂も儲かる」


 ウィン・ウィンの関係というやつだ。


「お殿様には敵いませんな。それでお願い致します」


 船千代丸に壺を持ってこさせる。


「ところで、神屋」

「はい」

「飴以外の甘味で儲ける気はないか」

「……詳しくお聞きしても?」

「3割だぞ」

「承知しております」


 2人でグフフフと笑い合う。


 商材は簡単手に入るもので、簡単に作れるものだ。


 水あめ。


 米や大麦のでんぷんを、大麦麦芽に含まれる酵素の力で糖化させたものだ。

 奈良時代からあるようだが、その製法は広く伝わっていない。


 もちろん、水あめをそのまま売っては芸がない。

 そこで水あめを使ったお菓子のレシピをいくつか提示する。

 これらのお菓子の製造販売を神屋に任せようと思ったわけだ。


「ほうほう、なるほど。それはいいですね。銭の匂いが致します」


 悪だくみのようだが、これは商談だ。

 悪いことなんて何もしてません。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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