第5話 当主様だ、ひかえおろー(なんちゃって)
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第5話 当主様だ、ひかえおろー(なんちゃって)
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天文21年3月。
城内が騒然としている。
まさか本当に国丸が死んだのか、と思いつつ母のところへいく。
「母上、城内が騒がしいようですが?」
「鍋寿丸、山田殿が討たれました」
「はい?」
山田殿がなんで?
「陶晴賢殿の手配だそうです」
「……なるほど、そういうことですか」
理解してしまった。
陶晴賢は昨年、大内義隆を自害に追い込んだ張本人だ。
そして、母の伯父にあたる方だ。
陶晴賢にとっては、血縁のある俺が宗像の当主になったほうが都合がいい。
俺が当主になるのを断固反対していた山田殿は、とうとう陶晴賢を怒らせてしまったのだ。
主君を自害に追い込んでいる人物だ、女子供とて容赦はせぬだろう。
俺もそうだけど、山田殿もそのことに思い至らなかったのだ。
さらに、次期当主に内定していた千代松も殺されてしまった。
子供を殺すなど、まさに戦国。
恐ろしいと感じ、身震いする。
野心を持った千代松の父氏続も一度は逃げたが、結局成敗された。
氏続は宗像を自分の血筋に継がせようとして、墓穴を掘ったのだから自業自得だと思う。
宗像の者なら、誰でも当主になり、大宮司の職に就きたいと思うかもしれない(俺以外は)。
兄の子である俺を蔑ろにし、陶晴賢という化け物を怒らせてしまった。
可哀想なのは、巻き添えになった千代松だろう。
ここにきて、そういえば宗像のお家騒動があったな、と前世の記憶を思い出した。
さすがに覚えてないよね。
そういったことがあったと思い出しただけ、すごいと思うよ。
そんなわけで、俺は家臣らに押され、宗像の当主になることになった。
俺は家臣らに神輿にされているわけだ。
せっかく野心なく平穏無事な生活を送ろうと思っていたのに……。
家臣たちは他に神輿がいたり、神輿が重過ぎたらすぐに逃げ出すことだろう。
神輿にされた挙句に独りぼっちは勘弁だ。
だから、家臣たちに楔を打っておかないといけない。
そして何よりも当主になった以上は、家臣に動かされる当主ではなく、自分で突き進む当主になろう。
モブ武将の俺の生き様を見せてやろうじゃないか。
これからは天上天下唯我独尊でいく。
お前ら、俺を神輿にしたことを後悔するなよ。
どうせ一度は死んだ身だ(死んでるよね?)、もう一度死ぬことなんて怖くない(嘘です、怖いです)。
太く細く生きてやるよ。
そうだな、手始めに九州の覇王になろうかな。
大友がなんぼのもんじゃ!
龍造寺? 体がデカいだけのでくの坊だろ!
島津が怖くないかって? そんなもん怖がっていたらサツマイモなんぞ食ってられんわ!
博多は陶と手を結んだ大友が押えたようだが、情勢は安定していない。
しかも、いずれ毛利が筑前に出張ってくる。
毛利がわざわざ関門海峡を渡ってくるのは、博多があるからだ。
堺に次ぐ商人の町を押さえれば、それだけ財政が豊かになる。
当然ながら大友は毛利如きに博多をくれてやるほど、無欲なヤツじゃない。
博多を巡って毛利と大友が争うが、その中には宗像もいる。
俺の宗像は毛利と結び、筑前の支配権を確立する。
最初はこの筑前を、その後は豊前と肥前、筑後。
信長の●望では、大友宗麟の能力はそれなりに高いが、リアルの宗麟はそうでないと、俺は思っている。
大友ほどの勢力があったら、大寧寺の変があった時に、自力で筑前を奪う。
それができない時点で、信長の足元にも及ばないモブ武将並みの能力なのだ。
後世の人は大友宗麟を過剰評価しているんだよ、マジで。
と願望のようなことを思っているが、俺は大友宗麟は嫌いだ。
なぜなら、塩硝や大筒欲しさに日本人を海外に売り飛ばしたヤツだからだ。
さすがにこういうのは嫌いだ。
俺は伴天連かぶれの大友宗麟に、頭なんぞ下げない。
よし、青写真は固まった。
蔦ヶ岳城に移った俺は、息つく暇もなく家臣との面会になる。
家臣団を前に、俺は当主席に座り、その横には母がいる。
さらに反対側の横には宗像貞氏が座っている。
この宗像貞氏は、母の父、俺にとっては祖父になる。
しかも父はこの人の婿養子になっている。つまり、この人と母の子である俺が本来は正当な宗像の後継者と、この人は思っているのかもしれない。
もしかしたら、この人が裏で暗躍して陶を動かし、家中の者を動かしたのかもしれない。
それは今となってはどうでもいいことだ。
それじゃあ、家臣に楔を打ちますかね。
頭を下げている家臣らを一段高い場所から見下ろす。
「面を上げよ」
家臣らの顔がよく見える。
最前列には宗像家臣団の中核をなす吉田、占部、許斐、土橋、吉原が陣取っている。
いずれも一癖も二癖もありそうなヤツらだ。
「皆、よく集まってくれた」
俺は静かに言葉を紡ぐ。
「これより、儂が宗像を率いる。よいな」
「「「ははぁぁぁ」」」
全員が頭を下げ、了承する。
言質はとったからな。
「儂はまだ幼い。よって祖父貞氏に後見してもらう。それも、よいな」
「「「ははぁぁぁ」」」
再び頭を下げ、ゆっくりと上げる。
「さて、お主ら。儂を神輿と思うておろう?」
目を白黒させる者、顔色を変える者、平然とする者。
それぞれの反応が面白い。
「昨日な、宗像三女神様よりお告げを受けた」
「「「なっ!?」」」
皆驚いた顔をしている。
こういうのを見るのは楽しいよな。
「これよりの宗像をよりよきものにするため、宗像三女神様のお告げを伝える。心せよ」
市杵島姫神
田心姫神
湍津姫神
この三女神が宗像の神だ。
どよめき。
騒然。
楽しくなってきました!
「まず、今後の北九州の件だ」
ざわざわ。
それが収まるまで待つ。
やがて、俺が見ていることに気づいた者から口を閉ざしていく。
「北九州はこれより荒れる」
「「「なっ!?」」」
「陶殿は大友殿と手を結んだが、その影響力は大友殿に偏っていく」
「「「………」」」
「其方らは、儂が陶殿の血を引いておるからと安心しておるようだが、それで安心できると思うでないぞ」
「そ、それは陶殿が……」
それ以上言うなと、手で制す。
「皆の者。歴史とは今生きている我らが作るものだ。今、三女神様が儂にお告げをくださったのは、我ら宗像にとってよりよい未来を作れという啓示である」
「「「おおおっ!?」」」
「ゆえに、お主らのこれからの働き次第で、宗像はよきほうにも、悪きほうにも進もう」
「「「………」」」
「よく考えよ。そして、感じるのだ。三女神様が我らを導いてくださる」
「「「はっ!」」」
さて、次だ。
儂は小姓の船千代丸に目で合図をする。
船千代丸は三方(神事などに使う台)を持ってきて、儂の前に置いた。
ああ、当主になるにあたって、一人称は俺から儂に変えた。
まだ慣れないところもあるので、しばらくは混ざって使うかもしれないが、気にしないでくれ。
三方には風呂敷が被せてある。
皆の目がその風呂敷に集まる。
「吉田兼致、占部氏時、許斐氏任、土橋氏康、吉原貞安。前に出よ」
宗像家臣団の重鎮たちだ。
彼らは一歩前に出る。
「お主らには、宗像三女神のお告げを伝える」
船千代丸に目で合図を送ると、風呂敷を取る。
三方の上にカプセルが載っている。
カプセルはそのままでは、儂以外の誰にも見えない。
だが、一度開けてしまうと、他者にも見えるようになる。
それを再利用したに過ぎない。
「どれでも好きなものを手に取れ」
五人はお互いに顔を見合わせ、ゆっくり手を伸ばした。
「本日はこれまで、お主ら五名はその玉を持ち、儂の部屋にこい」
俺は立ち上がると、自分の部屋に向かった。
皆、目を丸くしている。
お前らが担いだのだ、最後までつき合うのが筋ってものだろ?
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