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九州の覇王  作者: 大野半兵衛


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第4話 天文21年、始めました

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 第4話 天文21年、始めました

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 天文21年1月。

 俺は傅役の吉原貞安と共に山に分け入る。

 貞安は今年で37歳の働き盛り。

 しかも弓の名手で、宗像水軍の将でもある。

 こんな重臣が俺の傅役になっているのは、なぜか。

 山田殿に嫌われているのだ。

 歯に衣着せぬというが、貞安はそういう男だ。

 だから、山田殿にもずけずけとものを言う。

 それが気に入らなかった山田殿は、貞安を遠ざけた。

 それで俺の傅役になったわけだ。

 傅役というのは、教育係のようなものだと思えばいい。

 俺の最初の家臣でもある。

 なお、吉原姓を名乗ってはいるが、出身は占部氏だったりする。


 それはさておき、九州でも1月は寒い。

 ごく稀に雪も降る。

 俺は防御スーツを着込み、その上から和服を着ている。

 防御スーツの保温性が高いおかげで、寒さは気にならないのがありがたい。

 さらに、ガチャのレア景品、AK-47を背に背負っている。

 このAK-47はセットで出たけど、本体1挺とライフル弾1,000発がついていた。

 もちろん懐にはグロックも入っている。


「若。猪の足跡にござる」

「追え」


 そう、今日は狩りにきている。

 鷹狩なんて高尚なものではない。

 俺は肉が食いたい。

 栄養補給食おかげで、この体に必要な栄養はとれている。

 だが、肉が食いたいのだ。

 缶詰もいいが、牡丹鍋やステーキが食いたいのである。

 だから狩る!


「若」


 貞安が声を抑えて俺を呼んだ。

 その視線の先には、大きな猪が地面を掘っている姿があった。

 俺はAK-47を構え、狙いをつける。


 肉。

 肉。

 肉を寄こせ。


 ダンッ。

 猪はどさりと倒れた。

 練習した甲斐があった。


「お見事」

「まだ息があるかもしれぬ。とどめを刺し、すぐに血抜きを」

「承知」


 足軽たちがその場で血抜きと内臓を取り出す。

 100キログラムくらいありそうな大きな猪は、内臓を出しても重い。

 棒に括りつけ、4人で運ぶ。

 城で解体を行い、毛皮は河原者に鞣してもらう。

 その際に、河原者に肉をおすそ分け。

 武士の多くは肉は食わないが、河原者のような人々は肉だろうと何だろうと食べる。

 そうしないと生きていけない厳しい環境なのだ。




 最近、何やら城内に人が多い。

 母への挨拶をしてから、俺のところにも挨拶をしにくる。

 以前はそんなことなかったが、どうしたんだ?

 まさか国丸か千代松が病気か何かで危険な状態なのか?

 この時代、無事に7歳を迎えられる子供は多くない。

 千代松はともかく、まだ4歳の国丸がポックリ逝っても不思議ではないのだ。

 こんな衛生環境の時代では、それが当たり前なのだ。

 だから、俺は色姫に近づく者には清潔な身なりをさせている。


 さて、母の部屋にいくと、来客中だった。

 まだ30になってない若い博多の商人で、名前は……。


「神屋だったな」

「はい。神屋孫八郎にございます。名前を憶えていただき、感謝申しあげます」


 深々と頭を下げてくる。

 母の隣に座り、面を上げるように促す。

 柔和な笑みは、商人といえるものだな。


 この孫八郎は、神屋寿禎の子だ。

 神屋寿禎といえば、石見銀山を発見し、朝鮮から職人を呼んで灰吹法を定着させた人物だ。

 あと、勘合船の副使とかもしていた大物、そして大金持ちだ。

 その勘合船には、我が宗像水軍も噛ませてもらっているので、大変助かっていたのだが……。

 まあ、大寧寺の変以後、陶のオジチャンが勘合貿易を取り仕切っているおかげで、儲けなんてないんだけどね。

 勘合貿易は衰退していくんだろうなー。

 陶のオジチャン、マジウゼー。

 父が勘合符をこっそり盗んできてくれていればと、思わないではない。

 できっこないけどさ。


「して、今日は母にどんな無理難題をふっかけられたのだ?」

「これ、鍋寿丸。わたくしは無理難題など言いませんよ」

「それは失礼しました」

「ハハハ。むしろ無理難題を言っているのはわたくしめにございます、お殿様」

「ほう、神屋がか」

「神屋殿がおりますのに、於色が飴をどうしてもとせがむもので」

「ほう、それで飴に目をつけたか」

「はい。どうかわたくしめの店で、取り扱いさせていただけたらと」

「ふむ……構わんぞ」

「本当にございますか!?」

「ただし、数はない」

「承知しております」


 俺はスクッと立ち上がり、神屋についてこいと促す。


「これ、鍋寿丸殿。わたくしに何か用があったのではないのですか?」

「ご機嫌伺いにきただけです。毎日顔を見せないと、機嫌が悪くなりますからね、母上は」

「まあ、なんて言いぐさですか」

「それでは、また」


 神谷は母に辞する挨拶をし、俺についてくる。

 途中で、船千代丸に封が切られていない飴の壺を持ってくるように指示する。


 俺の部屋で神屋と商談だ。

 先ずは神屋に飴の美味しさを味わってもらう。


「これは……なんと甘美な……」


 幸せそうな顔をしているよ。

 落ちたな。


「この壺の中には365個の飴が入っている。神屋はいくらつける?」


 のらりくらりの交渉は性に合わない。

 スパッと決めちゃってくれ。


「さればでごあいます。1個300文、365個で109貫と500文、ではいかがでしょうか?」


 109貫か。いい値段だ。

 1貫が100,000円くらいの値段だから、10,000,000円超えか。


「それでは切りが悪い」

「でしたら、100貫で」

「莫迦者。なぜ下げる」

「ハハハ。110貫でお願いいたしまする」

「持っていけ、泥棒」

「泥棒、は酷うございます」

「言葉の綾というものだ」


 1壺110貫で売れたよ。

 飴ちゃんなのに、大金になった。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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