第40話 お前は追放だ
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第40話 お前は追放だ
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医師は鍋寿丸の死因は不明、おそらく心の臓が急に止まったのだろうと言った。
儂は正三を呼んだ。
「鍋寿丸を調べろ。毒の可能性が少しでもないか確認するのだ」
「……はっ」
そして鍋寿丸の体を調べた正三から、不自然な小さな傷痕があったと報告が入った。
「これにございます。小さな傷痕ですが、このような傷は滅多につきませぬ」
「何者かがつけた、のだな」
「恐らくは」
どこのどいつだ。
儂の鍋寿丸を殺したことを、絶対に後悔させてやる。
「調べよ。何者が鍋寿丸を殺したか、徹底的に調べよ」
「はっ」
鍋寿丸の葬儀を行い、儂は1年間喪に服すことにした。
が、今や巨大な組織と化した宗像にとって、トップの俺が1年間も働かないとマズいことになる。
仕方がないので、最小限の政務は行うことにした。
そんな中、評定を行う。
両方面軍が前線で戦っているため、有力家臣の半分ほどはいない。
決めることを決め、指示するべきことを指示した。
評定が終わると、家臣らは思い思いに雑談に興じる。
儂も家臣らと一言二言言葉を交わし、席を立つ。
「それにしてもこれでお家騒動がなくなり、ようござった」
ピタリ。
今、なんと言った?
よかっただと?
鍋寿丸は廃嫡されており、お家騒動の種になり得ない。
それなのに、鍋寿丸が死んでよかっただと?
ギロリ。
儂はその言葉を吐いた国分直頼の前に立った。
国分直頼を見下ろす。
国分直頼が見上げる。
「今、なんと言った」
「殿?」
「今、なんと言ったか!?」
今の俺は鬼の顔をしていると思う。
「儂の子が死んでよかっただと? 貴様が鍋寿丸を殺したのか!?」
「そ、某は……」
国分直頼の胸倉を掴み、持ち上げる。
「貴様が!」
「殿! 落ちつきてくだされ!」
「「「殿!」」」
家臣が儂を押さえようとする。
これでも毎日稽古をしている。
体も大きくなり、筋力は結構ある。
俺が暴れるのを押さえ込むのは、簡単ではない。
「四郎!」
ジイ様が儂をぶん殴った。
拳が頬にめり込む。
「落ちつけ、四郎!」
「ジイ様……だが、こいつは鍋寿丸が死んでよかったと言ったのだぞ」
「それは言葉の綾、でございます」
「言葉の綾だろうが、言っていいことと悪いことがある。貴様は儂の子が死んでよかったといったのだ!」
「申しわけございませぬ。そのような意味ではなかったのです」
「四郎、落ちつけ。その手を離すのだ」
舌打ちをし、手を離す。
「そこに座れ、四郎」
ジイ様に促されるまま、座る。
「ジイ様……皆の者、騒がせたな」
皆が徐々に腰を下ろしていく。
「国分直頼、お主は宗像より追放する。今すぐ出ていくがいい」
「そ、それは!?」
「どのような理由があろうと、儂の息子の死を喜ぶようなものを家臣として近くに置いておくことはできぬ」
「うっ……」
「この際だ、皆の者にはっきりと言っておく。今後、儂の家族、世継ぎに関しての発言を禁止する。世継ぎは、儂が決める。儂が意見を聞いた時のみ、申せ。それ以外で、我が子のことを口にした者は、斬る!」
儂は強い言葉で最後を締めた。
今度は追放では済まさない。
「以上である。ジイ様はこの場におらぬ者らに、このことを周知してくれ」
それだけ言うと、儂は大広間を出た。
自室の前の縁側に座り込む。
勢いに任せて国分直頼を追放したが、後悔はない。
あれは主君をただの神輿としか思っていない者の発言だ。
ジイ様がきた。
儂の横に無言で座り込む。
「撤回はせぬぞ」
「そうか」
「鍋寿丸は殺された」
「……そうか」
「鍋寿丸を殺したヤツは、たとえ地獄だろうと追いかけていき、儂自ら恨みを晴らしてやる」
「そうか」
「絶対だ」
「分かっておる」
その後、日が暮れるまで2人で中庭を無言で眺めていた。
永禄7年9月。
三好長慶が死んだと聞いた。
史実通り死んだ。
次は来年になって足利義輝が死ぬ。
天下は織田信長を呼んでいる。
失われる命があれば、授かる命もある。
綾瀬が懐妊した。
産み月は来年の3月だそうだ。
男でも女でもいいから、無事に生まれてきてほしいものだ。
千寿丸も4歳になっており、可愛い盛りだ。
鍋寿丸を可愛がってやれなかった分、千寿丸を可愛がる。
そんなある日、相良氏が降伏したと報告がもたらされた。
占部氏時の西部方面軍は、そのまま南下を続ける。
相良はよく戦った。
だが、それだけだ。
儂の前に連れてこられた相良義陽は、儂と変わらない年齢の青年だった。
「相良四郎太郎には、肥後国葦北郡を安堵する。他は召し上げる。以上、何か質問はあるか?」
相良氏が領有していた八代郡、球磨郡、葦北郡のうち、葦北郡のみを残す。
それ以外は召し上げる。
方面軍で働く者らに、褒美を与える必要があるから八代郡と球磨郡は召し上げだ。
相良はそれほど大きな家ではないが、攻略に9カ月ほどかかった。
儂がゆっくりでいいと命じたことで、相良はゆるやかに干上がっていったのだ。
それは東部方面軍も同じだが、向こうは伊東氏が相手だ。
伊東は相良ほど簡単に攻略できるほど軟ではない。
日向一国を従えているため、底力はある。
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