第35話 大友の終焉
+・+・+・+・+・+
第35話 大友の終焉
+・+・+・+・+・+
追撃戦により、隈部家は当主や主だった者らを討ち取った。
阿蘇家のほうは上手く逃げたようで、重臣の首は1つだ。
それでも両家とも、兜首が多く討ち取られた。
隈部氏は当主親永が討ち取られたことで、降伏。
隈部の一族は筑前に送られ、捨扶持として1,000石を与える。
阿蘇も降伏前提の交渉を行う使者がやってきた。
使者は甲斐宗運、阿蘇の重鎮だ。
「阿蘇大宮司惟将が臣、甲斐宗運にございまする。宗像大宮司様に拝謁叶い、望外の慶びにございまする」
「儂に会えて慶ぶか。その脇差で、儂を刺すか?」
「そのようなことは致しません」
儂の指摘に動じることなく、にこやかにほほ笑む甲斐宗運。
「で、降伏するのか?」
「はい。降伏いたします。どうか、寛大なる処置をお願い申し上げまする」
降伏の条件を口にしない。
つまり、全面降伏か。
潔いことだ。
その潔さに免じて、寛大な処置をするとしよう。
「阿蘇大宮司には阿蘇神社周辺に20,000石の社領を残す。それ以外は召し上げる。宗運ら家臣は儂の直臣として仕えよ」
「承知いたしましてございまする」
阿蘇惟将は阿蘇神社の大宮司として、神社を守ることに専念。
阿蘇氏の家臣は儂の直臣として出仕させる。
その裁定を聞いても、甲斐宗運は眉一つ動かさずに従った。
さすがの胆力だ。
これにより、戦国大名の阿蘇氏は滅んだ。
永禄5年4月。
合志郡34,000石の赤星親隆、飽田郡・託麻郡60,000石の城親冬、宇土郡25,000石の名和顕忠は恭順の意を示してきたので、所領安堵する。
肥後北部の勢力は粗方従えたことになる。
肥後国では、先に上げた3家の所領以外の、玉名郡73,000石、山鹿郡33,000石、菊池郡26,000石、山本郡17,000石、益城郡123,000石、阿蘇郡34,000(20,000石は阿蘇神社領)を得た。
さらに、貞安の宗像水軍が問題なく天草郡(22,000石)の天草五人衆は降伏した。
肥後は合計で447,000石だ。
筑後では上下蒲池氏・黒木氏・田尻氏・五条氏が滅んだか逃げたことで、の山門郡・三潴郡・下妻郡・上妻郡 で230,000石ほどを得た。
宗像に降った筑後十五城のうち10家が、130,000石ほどになる。
筑後の合計は360,000石。
筑後、肥後合わせて807,000石だ。
戦果としては、素晴らしいものだと思う。
もっとも、筑後は戦う前から筑後十五城が降伏を約束していたので、出来レースのところはある。
永禄5年5月。
筑後・肥後の安定を図っていると、豊前で動きがあった。
豊前・豊後勢と対峙したいた大友勢に、大和貞秀が率いる軍勢8,000が横槍を入れた。
大友勢を率いる戸次鑑連はこれをよく凌いだが、倍する宗像勢に押され潰走した。
最後は籠城したが、宗像勢は木砲を並べて砲撃を加えた。
多くの者が城の残骸の下敷きになった中、5月20日に降伏。
大友義鎮他重臣らの身柄を確保した。
豊後国大分郡・直入郡・大野郡・海部郡196,000石を平定した。
今回の遠征では100万石の領地を得た。
従属勢力を入れての石高は2,421,000石となり、儂は200万石を超える大大名になった。
永禄5年6月。
立花山城に戻った儂は、大友義鎮、戸次鑑連、吉岡長増、吉弘鑑理、臼杵鑑速らと面会した。
大友義鎮は焦燥しきった顔をしており、威厳などを感じなかった。
それに対して戸次鑑連、吉岡長増、吉弘鑑理、臼杵鑑速の4人はさすがの貫禄だ。
「左少将(大友義鎮)殿、貴殿は伴天連の神、たしかデウスと言うのだったか? その神の教えを信じているとか、真かな」
大友義鎮は肩をビクリッとさせ、儂の顔を力なく見る。
「ま、真……ございます」
か細い声だ。
「デウスは唯一神だと聞く。つまり、我が宗像三女神様を否定する教え、だと儂は思うておる。それで間違いないかな?」
「そ、それは……」
ビクビクしながら儂の顔色を窺う。
「まあよい。伴天連でもない、ただの信者には分からぬこともあろう」
大友義鎮はあからさまにホッとするが、これで終わりではないぞ。
「もう一つ、聞きたい」
また肩を跳ねさせる。
「鉄砲や塩硝を買い求める際、お主はこの日ノ本の民を南蛮人に売り払ったと聞く、これは真か?」
大友義鎮の顔色が真っ青を通り越して土気色になった。
「答えてはくれぬのか?」
ガタガタ震えるばかりで、答えてはくれなさそうだ。
「その反応が答えを物語っておるのは分かる。吉岡下総守よ、其方が答えてくれるか」
黙って見守っていた吉岡長増に話を振る。
彼は儂の目を真っすぐ見て、ゆっくりと口を開いた。
「宗像殿の申されている通りにござる」
「そうか。なんと愚かなことをするものか」
「されど、奴隷販売を決定したのは、我らにござる。左少将様に罪はござらん」
戸次鑑連と吉弘鑑理は覚悟を決めているようで、頷く。
それに対して臼杵鑑速は忌々しいといった表情で吉岡長増の横顔を睨んだ。
主君の罪を被る者、そううでない者、主君に対する想いが分かるというものだ。
臼杵鑑速は奴隷販売を反対していたと、正三から報告を受けている。
もちろん、他の3人も反対していた。
それでも強硬に反対したのが、臼杵鑑速だった。
だから主君とはいえ、このような愚かな行動の責任を被るのは嫌なのだろう。
「左少将殿よ。貴殿は自らが治める民を売り払って、何をもって領主と言うつもりか」
「あわわ、あわわわ……」
これは駄目だ。
だが、糾弾しないと腹の虫がおさまらない。
「恐れながら!」
吉弘鑑理が前のめりに叫ぶ。
「何か」
「奴隷販売は某が推し進めたもの! 左少将様は何も知らなかったのでござる!」
いい家臣を持ったな。
クソの大友義鎮には勿体ない家臣たちだ。
「そうか……。沙汰を申し渡す」
大友義鎮以外が頭を下げる。
場の空気も分からないこんなヤツには、本当に勿体ない家臣たちだ。
「大友義鎮は立花山城下にて幽閉」
大友の家臣たちが奥歯を噛む音が聞こえてくる。
「戸次鑑連、吉岡長増、吉弘鑑理、臼杵鑑速、その他の者は儂に仕えよ。お主らは働きをもって大友の罪を償うがよい」
大友義鎮は人質だ。
家臣団の働きを見て、将来許すかどうかを判断する。
これだけの忠誠心を持っているのだから、大友義鎮のために粉骨砕身働くだろう。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。
『ブックマーク』『いいね』『評価』『レビュー』をよろしくです。




