第32話 官位など要らないんだがなー
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第32話 官位など要らないんだがなー
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永禄4年5月。
2種類の蒸留酒が完成した。
麦焼酎と芋焼酎だ。
芋焼酎の原料であるイモをサツマイモと呼ぶのはさすがによくないことから、ムナカタイモと呼称している。
ムナカタイモは米が育てられないような荒地でも育ってくれる。
ありがたいイモだ。
しかも甘くて美味しい。
芋焼酎は癖が強いため、儂は麦焼酎のほうが好きだ。
まあ、これは好みが分かれるところだな。
貞安は芋焼酎のほうが好みらしい。
永禄4年6月。
京から公家がやってきた。
これまでも何度かやってきており、その都度ジイ様に対応を頼んでいた。
儂は公家などというものに、価値を見出していない。
貧困に喘いでいるのも、自業自得。
そんな公家が儂に会いたいというのは、大概は銭の無心だ。
だから、会うつもりはないのだが、今回はジイ様もさすがに会えと言うので、会うことにした。
上座に座った公家は、山科言継。
公家のことはあまり知らない儂でも知っている名前だ。
この山科言継は東国のほうで活動することが多かったと思うのだが、九州にまでやってくるのだな。
「ようこそおいでくださった、内蔵頭(山科言継)様」
ジイ様の手前、丁寧に対応する。
簡単な挨拶をする。
のらりくらり、無駄話をされる。
イライラするので、本題に入ってほしい。
どうやら山科言継は、こちらから朝廷に献金すると言わせたいようだ。
献金なんかするくらいなら、常備兵に米の1粒でも多く与えるわ。
と思いつつも、にこやかに対応する。
いい加減疲れてきたので、ジイ様に話を進めろと目で訴える。
これ以上は儂が爆発するぞ。
「ッカッカッカ。内蔵頭様、細かい話は某が。本日は日も落ちて参りましたゆえ、日を改めまする」
「ホホホ。左様か」
山科言継とジイ様が部屋を出てった後、儂は木刀を振り回した。
ジイ様には悪いが、二度と儂の前に公家を連れてくるなと言おう。
今度会ったらグロックを抜く自信がある。
結局、ジイ様は1,000貫の献金をすることにしたらしい。
物乞いにきたんなら、頭を下げてめぐんでくださいと言えばいい。
儂も鬼ではないから、きちんと頭を下げてきたら無下には扱わないさ。
それができないヤツらが公家という生き物だ。
後に朝廷は儂に従六位下左衛門大尉を贈ってきた。
こんなもの要らないんだが、ジイ様がありがたがっている。
それならジイ様に譲ると言ったら、殴られた。
痛いんだが……。
永禄4年8月。
満月を見上げ、1人で麦焼酎をチビリチビリとやる。
先月の20日に、綾瀬が子を産んでくれた。
男の子だ。
名前は千寿丸とした。
鍋寿丸が廃嫡されていることから、千寿丸が儂の世継ぎになる。
千寿丸も鍋寿丸も儂にとっては可愛い子だ、スクスク育ってくれることを願う。
永禄4年9月。
領内にある鉱山開発が進み、鉄をはじめとする色々な金属の生産が製鉄所で行われている。
ガチャ景品の10トンの鉄は、全て純粋な鉄なので柔い。
だからクロムやマンガン、硫黄などを加えて鋼にする。
その鋼は製鉄所の敷地内に設置した鍛冶工房で鉄砲や大筒になる。
八幡長兵衛が設置してくれた鍛冶工房は、近代的な設備が揃っていた。
八幡長兵衛がどうやってあの設備を用意したのか分からないが、鋼の加工が簡単にできる。
だから、刀鍛冶や野鍛冶、鉄砲鍛冶師を入れるのではなく、成人したての若い少年少女を鍛冶工房に入れて、一から仕事を覚えさせている。
製鉄所の所員は、設備の操作を教えるだけで、生産はしない。
そういったところは徹底しているよ。
この製鉄所と鍛冶工房は儂の直営にしている。
さて、その鍛冶工房ではなく、古野威成が大筒を完成させた。
先月のことだ。
もちろん、この時代なりの大筒で月に2門を生産できればいいほうだ。
この大筒は1,200貫で儂が買い上げることにした。
永禄4年11月。
俺も今年で17歳。
体を鍛えに鍛えぬいている。
常備兵と同じ訓練メニューをこなし、米には麦を混ぜたものを食べている。
元々肉、魚、野菜をしっかり食べていることから、身長は6尺(180センチメートル)を超える。
まだ成長期だから、もう少し伸びると思われる。
この秋、綾瀬を正式に正室に格上げした。
もちろん千寿丸も正式に嫡子としている。
千寿丸でも鍋寿丸でも、儂が多くの領地を持てば2人に、そしてこれから生まれてくるかもしれない子供たちにも豊かな土地を与えられるだろう。
「儂は止まれなくなったな」
以前は九州の覇王になろうと思ったが、こうなったら日本の覇王になろう。
「子供のために……」
満月に誓うために、盃を掲げる。
その儂に近づく気配。
「正三か」
今は縁側で満月を愛でているため、屋根裏がない。
正三は庭先に片膝をついて頭を垂れる。
儂の感覚が鋭くなったのもあるが、正三があえて気配を漏らしてくれたことが大きいな。
「何かあったか?」
「阿蘇、隈部、赤星、城が大友を離れましてございます」
阿蘇、隈部、赤星、城は肥後国北部の国人で、これまでは大友に従っていた。
それが離れたか。
もはや末期だな。
ここから持ち直すのは難しいだろう。
もし持ち直したら、神業だ。
今年はしっかり内政に力を使った。
来年は大攻勢の年だ。
肥後が大友から離れたの大きい。
「秋月はどうか?」
「新天地の内政に励んでおります。今のところ、怪しい動きは見えません」
「そうか……」
また秋月が裏切れば、せっかく芽衣と鍋寿丸を戻せそうなのに、またケチがつく。
それだけは絶対にさせない。
もしそんなことを考える莫迦がいたら、闇から闇に葬ってくれるわ。
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