第30話 勝べき賭け
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第30話 勝べき賭け
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永禄3年6月。
立花山城に帰った儂は、肥前併呑戦の間に溜まった書類をやっつける日々に追われていた。
このほうがいい。
忙しいほうが、芽衣と鍋寿丸がいない寂しさを忘れられる。
さて、現在の宗像の石高だ。
筑前国は早良郡、志摩郡、怡土郡が田原領なので除外し、それ以外で411,000石。
豊前国は330,000石。
豊後国は157,000石。
肥前国は松浦郡の東部が原田領なので除外し、それ以外で520,000石。
合計で1,418,000石になる。
この他に筑後国の従属国人もいるが、こちらかこれから整理するから今はいい。
ちょっと前の大友や大内のような石高になっている。
領国が100万石を超えていることから、常備兵を10,000人に増やすことにした。
さて、肥前と豊前、豊後の4郡を手に入れたはいいが、豊前と豊後はかなり荒れている。
肥前も戦によって荒れた田畑がある。
そこで今年と来年はできるだけ戦はせず、領国の安定に注力しようと思う。
それに筑前と豊前では、石灰石、石炭、鉄、銅、銀、金が採れる。
石灰石を採掘し、鉄筋コンクリートを使った城を築く。
先ずは門司城を魔改造だ。
鉄はガチャ景品で毎月10トンが手に入る。
その鉄に微量の炭素、ケイ素、マンガンを混ぜて鉄筋が作れる。
門司城の近くには良質な石灰石を産出する場所がある。
さっそく石灰の採掘を指示し、鍛冶師たちにも鉄筋を作ってもらう。
この鉄筋コンクリート造りは、鍋島直茂に任せる。
永禄3年8月。
門司城の魔改造が始まった。
鉄筋コンクリートの生産は順調だ。
鍋島直茂は戦だけでなく、こういった生産でも優秀な人材のようだ。
鉄筋コンクリートの鉄が足りない時は、竹筋コンクリートで対応する。
竹は多く自生している優秀な素材だ。
城には鉄筋を使うが、他の場所には竹筋を使うように住み分けるようにしよう。
永禄3年10月。
今年は綿花がしっかり収穫できているそうだ。
糸を紡ぎ、布にするために女性たちに働いてもらっている。
あと、穀物の生産を上昇させる取り組むのおかげで、以前からの領地である筑前と肥前の米の収穫量は上がっている。
5割増しくらいになっているので、非常にありがたい。
「殿。聞き及んでいますかな?」
現在、儂の部屋には主だった者10名がいる。
部屋が狭いんですけど……。
それはさておき、貞安は何が言いたいんだ?
「いきなりだな、なんの話だ?」
「東国の話ですが、駿河の今川治部大輔が3万の兵で尾張に攻め込んだものの、3千の織田上総介に討ち取られたそうにござる」
桶狭間の戦いのことだな。
貞安としては10倍の兵力差を覆した織田信長の英雄譚が心を躍らせたようだ。
「さすがに眉唾物の話ではないか。10倍の戦力差を覆すなど、本当にあり得るのか」
割って入ってきたのは、許斐氏任だ。
「だが、商人らが嘘を言うとも思えぬ」
貞安が唸る。
「噂には尾ひれがつくものよ。3万は大げさだが、1万くらいは3千で打ち破っておろう」
そこに大和貞秀が口を挟んだ。
「殿は、いかが思われますかな」
貞安が俺に水を向けてきた。
元々貞安が俺に話しかけてきた話題だったな。
「織田が今川に勝つのは分かっておった」
「まさか……それも三女神様のお告げにございますか」
「そうだ。畿内はこれよりさらに混沌とするぞ」
「と、申しますと?」
「将軍家は数年のうちに弑逆される」
「「「なんと!?」」」
「あれほど下の者らを裏切ってきたのだ、殺されても仕方がなかろうな」
「殿、そのようなことを……」
「儂は裏切りを繰り返した者が討たれるだけと思っておる。お主らも儂が裏切れば儂を殺すであろう?」
「「「そのようなことは!?」」」
儂は笑って皆を見た。
「儂はお主らを裏切らぬ。だから問題はない」
「し、しかし、本当に公方様が弑逆されるのですか……?」
これはいい機会かもしれない。
儂の心の穴をこれを機に埋められるかもしれないぞ。
「信じられぬか?」
「そのようなことは!?」
「ならば、こうしようではないか。将軍家が数年のうちに弑逆されなければ、儂はお主らにそれぞれ1,000貫ずつ与えよう」
「「「なっ!?」」」
「ッカッカッカ。これは剛毅よな」
ジイ様が儂の部屋に入ってきて、儂の横に腰を下ろした。
また部屋が狭くなった。
「もちろん儂にも銭をくれるんであろうな?」
「構わんぞ。だが、儂が言うように将軍家が弑逆されたら、芽衣と鍋寿丸を戻す」
「「「それは!?」」」
「秋月には、しっかり禊をさせる。その上で芽衣と鍋寿丸を戻す。よいな」
俺は静かに、いつもより声のトーンを1オクターブ落として言い切る。
家臣らは秋月の裏切りにかなり怒っているが、何も芽衣や鍋寿丸を憎んでいるわけじゃない。
だったら、芽衣と鍋寿丸を許す理由を与えてやる。
「正室と嫡子に戻すわけじゃない。側室と庶子だ」
「ッカッカッカ。儂はそれで構わんぞ。お主らも、構わんであろう」
「「「………」」」
他の者は二の足を踏んでいる。
「ッカッカッカ。庶子と言っておるのだ、その程度は受け入れてやれ」
「某は承知いたした」
貞安が頷くと、他の者もそれに続く。
これは勝たねばならぬ賭けだ。
だが、結果の分かっている賭けだ。
皆には済まないが、こういう時に前世の知識を使わずしていつ使うのだ。
これで芽衣と鍋寿丸とまた一緒に住める。
あと5年の我慢だ。
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