第27話 豊前攻めを決意
+・+・+・+・+・+
第27話 豊前攻めを決意
+・+・+・+・+・+
永禄2年7月。
結局、毛利は企救郡を割譲しなかった。
「毛利は我らを見下しておるのだ!」
「毛利討つべし!」
「「「討つべし!」」」
家臣たちは毛利への不信感を露わにし、儂も気分が悪い。
「毛利を誅すべし!」
「「「誅すべし!」」」
こうなった家臣を止めることは、儂にはできない。
だが、小早川隆景は宗像が攻めてくると考えているだろう。
つまり、策を弄しているはずだ。
それに毛利元就も手をこまねいているはずがない。
何か悪だくみをしていると、考えるべきだ。
「貞安。常備兵はどうか」
「はっ。すでに5,000を確保。訓練を施しております」
「訓練をこなせる者は、何名だ」
「4,500にございます。残りの500は1月もすれば、戦に出せましょう」
予定数は揃ったか。
常備兵5,000にはそれぞれ鉄砲隊、槍隊、木砲隊を組織している。
木砲は木で作った大筒だ。
4人いれば、山だろうと谷だろうと木砲本体ほか台座や3発分の弾薬を運ぶことができる。
そして船にも設置が可能だ。
木砲は全長1間(1.8メートル前後)、口径は約4寸(12センチメートル前後)、飛距離は最大で5町(545メートル前後)で、3発撃ったら廃棄する。
4発以上撃つと、暴発の可能性が高くなるから使わない。
旋盤が普及したから生産は難しくないし、材料も木だから入手しやすい。
それに弾は石を大量に詰めた散弾と、石工に作ってもらった砲弾型の石なので鉄は使っていない。
その木砲300門と、900回分の弾薬は既に用意してあるが、今回の毛利戦で使うことになるか。
儂が考えの沼にはまっていると、広間はシーンッと静まり返っていた。
家臣たちは儂の言葉を待っていたようだ。
「是非もない。毛利を攻める」
「「「おおおおおおおおっ!」」」
大歓声。
こいつら、どんんだけ戦がしたいんだよ。
それからは秋月と原田に毛利と同盟が解消されたこと、約定を守らなかった毛利を攻めると使者を送った。
原田はともかく、秋月はごねるかと思ったが、約定を守らなかった毛利への怒りを表明してくれた。
逆に原田のほうがごねたが、ことは領地問題なので強くは言ってこなかった。
武家にとって領地は極めて重大な問題だ。
領地割譲の約定を守らなかった毛利を擁護すれば、原田も宗像の敵と判断されてもおかしくない。
原田がごねたのは、毛利が大きいことだ。
毛利は安芸、備後、周防、長門、そして豊前の大半を治める大大名だ。
宗像は大きくなったとはいえ、さすがに5カ国を領有する毛利との戦いは不利だろうと思ったのだ。
俺も毛利との戦いはしたくないが、ここで引くわけにはいかない。
引けば家臣たちがついてこなくなる。
そして何よりも儂が九州の覇王になるには、毛利は邪魔な存在なのだ。
永禄2年8月。
暑い日、儂は出陣を命じた。
領内から集めた百姓兵5,000、常備兵4,000、輜重隊1,000、宗像水軍120隻の陣容だ。
宗像水軍で関門海峡の毛利を駆逐し、援軍や物資を送らせないようにする。
その上で陸上部隊9,000が進軍する。
「貞安。海は任せた」
「お任せくだされ!」
宗像水軍を率いるのは、儂の傅役である吉原貞安。
海のプロフェッショナルである貞安に任せておけば、毛利の水軍を蹴散らせてくれるだろう。
あとは儂が率いる陸上部隊だ。
副将は吉田兼致、参謀として占部氏時、幕僚に許斐氏任、土橋氏康、立花鑑光、高橋鑑種、少弐冬尚、龍造寺胤栄。
少弐冬尚と龍造寺胤栄は肥前の者でも重用しているというスタンスを見せるためのメンバーだ。
海上で貞安が毛利の水軍と開戦。
その一報を聞き、儂は進軍を命じた。
「進め」
陸上部隊9,000が筑前国遠賀郡から豊前国企救郡へと進軍を開始した。
進軍していると、海上戦の続報が届く。
「お味方、大勝利! 毛利水軍を散々に蹴散らし、海に沈んだ船多数。拿捕した船50余り! 毛利水軍は壊滅!」
走破船、疾風船、韋駄天船に積んだ木砲のおかげで、味方に被害らしい被害はなかったらしい。
これで関門海峡は宗像の海域になった。
ここからは補給線を絶つために、海上を封鎖する。
商人の船は通すが、豊前・豊後方面への進行は禁止だ。
陸上部隊も門司城へと迫った。
海上には宗像水軍が見える。
小早川隆景は野戦を避け、門司城に籠ったようだ。
「門司城には兵5,000が籠っております」
葉隠正三の報告に頷く。
さて、どうしたものか。
あの小早川隆景が何の策もなく籠城をするか?
だが、本土からの援軍は望めない。
それは貞安が許さない。
であれば、どこだ?
筑後の蒲池か?
それとも大友と和議を結んで後方を攪乱か?
それとも……まさかとは思うが、秋月や原田か?
「正三。念のためだ、大友、秋月、原田の動きを確認してくれ」
「……承知いたしました」
秋月と原田が入っていることに、一瞬驚いたような正三。
何もなければいい。
情報というものは、無駄なものも含めて精査するものだ。
そして無駄と思えるものの中に、意外な真実があるものだ。
儂は門司城を囲むように指示をし、攻撃のタイミングを窺うことにした。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。
『ブックマーク』『いいね』『評価』『レビュー』をよろしくです。




