第24話 毛利からの要請
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第24話 毛利からの要請
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永禄1年10月。
西牟田親氏の姫、綾瀬が嫁いできた。
身重の芽衣に配慮し、派手な歓迎はしていない。
綾瀬はぽっちゃりとした子で、見た目はおっとりしている。
「皆々様、これよりよろしく願い申しあげまする」
家族との面会。
母、色、芽衣が揃って挨拶を受ける。
「宗像に嫁いできた以上、綾瀬殿はもう宗像の人です。これよりは四郎殿を支えてください」
母の言葉に、綾瀬は「はい」と緩やかに答える。
「芽衣よ。綾瀬は右も左も分からぬゆえ、気にかけてやってくれ。綾瀬も芽衣を立て、奥を守ってくれ」
「「はい」」
嫁同士のゴタゴタはしてほしくない。
とはいえ、こればかりは相性があると思うので、最悪は綾瀬を別宅に移すことも考えよう。
あくまでも最悪は、だな。
永禄1年11月。
穀物増産を任せていた少弐たちから、一部の田で試験的に二毛作を行うと許可を求められて1カ月。
筑前の沿岸部、筑前の内陸部、肥前の沿岸部、肥前の内陸部でそれぞれ試験をするそうだ。
肥料も小魚を使ったものや、竈などの灰を撒いたりしている。
宗像では多くの火を使っていることから、灰が結構出ているので有効利用ができて丁度よかった。
あと、澳門や朝鮮経由で手に入れたサツマイモやカボチャ、ジャガイモ、人参、ホウレンソウ、玉ねぎ、キャベツ、蜜柑などの栽培も任せている。
サツマイモとジャガイモは手引書に栽培法が載っているが、他のものは手探りだ。
失敗してもいいから、少しずつ前に進めてくれと言ってある。
さて、豊前の情勢だが、大友は沿岸部を進んで京都郡に至っている。
門司がある企救郡まであと一歩だが、ここにきて兵の離散が進んでいるようだ。
そりゃ、国元には働き手はほとんどおらず、田畑は荒れているはずだから、百姓としては戦どころの話ではない。
必死に兵の離散を押さえ込んでいるが、すでに限界を超えているのだろう、焼け石に水だ。
おかげで、京都郡から先に進めずにいる。
さすがの九州の軍神も、無理矢理集めた百姓兵の士気維持は難しいようだ。
百姓兵の士気はどん底だし、離散するし、他の兵にも悪影響が出ていることだろう。
大友が苦しむと、なぜだか儂の心がウキウキする。
性格が悪いと、自分でも思うよ。
そんな折、毛利元就の子、小早川隆景が儂を訪ねてきた。
毛利勢の九州方面の総大将である小早川隆景は、26歳の若き武将だ。
「初めてお目にかかる。某、小早川又四郎隆景と申す。九州方面の毛利勢を率いており申す」
堂々たる挨拶だ。
父元就の薫陶が生き届いているのか、それとも血なのか、謀将の気配がうかがえる。
「噂には聞いておったが、お若いですな」
「小早川殿もお若いではないですか。それに、小早川殿の兄である吉川殿は、今の儂の年になる前に初陣を果たしたと聞いておりますぞ」
「兄のことまで知っておりますか」
「噂程度です」
儂の家臣にほしい吉川・小早川兄弟。
毛利元就のあとを継いだ隆元はあと数年で亡くなるが、元就とこの兄弟が健在だったおかげで毛利は崩れない。
残念だ。
本当に儂の配下にほしい人材だ。
「して、本日お越しになった要件をおうかがいしよう」
「宗像殿も知っておられるように、大友の攻勢は限界に達したと思われる。そこで、大友を駆逐するために、宗像殿の兵をお借りしたい」
「援軍、か」
儂は顎に手をやり考える。
大友と毛利がお互いに疲弊してくれるのは、ありがたい。
だから、豊前でバチバチやりあってくれているほうが、俺にとっては都合がいいのだ。
ここで大友を押し返すにしても、大打撃を与えてはいけない。
毛利と秋月との戦線を維持できるくらいの力は残しておかないと、俺の青写真が崩れてしまう。
「援軍をいただけ、大友を豊前から追いやれば、企救郡を割譲することを約束しよう」
企救郡を割譲とは思い切ったな。
毛利にとって企救郡は手放せない場所だと思っていたんだがな。
何せ企救郡には門司城があるから。
「門司城はいいので?」
「京都郡に代わりの城を築いている。そこを拠点に豊前を統治することにした」
石見銀山のほうが重要だが、豊前を捨てる決断もできないか。
「では、企救郡の割譲を当主の大膳大夫(毛利隆元)殿と右馬頭(毛利元就)殿の連名による書面にて約していただきたい。それをもって、援軍を出しましょう」
毛利元就は平気で約束を破りそうだが、隆元は生真面目な人物だと聞く。
あの親からこんな生真面目な人がよく生まれたな、と思わないではないが、元就は元就で狡猾にならなければ生きてこれなかったのだろう。
戦国という時代が生んだ化け物なのかもしれないな。
「承知」
その翌月には、毛利元就・隆元の連名による約定が届いた。
大友撃滅戦は、来年1月20日に行われることになる。
秋月には、領地の通行の許可を得た。これで大友の背後を窺えるはずだ。
「皆の者、来年は毛利を助け大友を豊前より追い出す。兵力は常備兵1,500、百姓兵3,000、輜重1,000だ」
「殿、某に先陣を!」
嶺氏兼がいきり立つ。
相変わらずの脳筋ぽい発言だが、政務もこなせる貴重な男だ。
「先陣は現地で決める」
「そんな~」
「先陣を与えないと言っているわけではないのだ、そこまで落ち込むな」
落胆が激しい。
だが、先陣は皆がほしい役目だ。
儂は先陣なんてしたくないけど、戦国時代では名誉ある役目なのだ。
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