第23話 何がめでたいんだ!?
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第23話 何がめでたいんだ!?
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儂は寺内尚秀、古野威成、深川貞國、市丸守種を呼んだ。
古野威成と市丸守種は宗像の神官でもある武士だ。
ん、逆か? 武士であり神官……どっちでもいいか。
「備後守(寺内尚秀)には、綿花を栽培してもらう」
「綿花、にございますか?」
「走破船や疾風船に使っている帆は、綿だ。だが、綿布は朝鮮より買い求めておる。それを国内で作れるようにする」
「なるほど……しかし、某にできますでしょうか」
「問題ない」
綿花栽培の手引書と種を渡す。
共にガチャから出たもので、手引書はアンコモンだが、種のほうはコモンだ。
「その手引書に記されているようにすれば、育つ」
「承知いたしました。殿のご期待に沿えるように、綿花栽培を成功させてみせましょう」
前世で小倉織という綿布があったはずだから、ここら辺でも綿花は栽培できる。
がんばれ。
「甚九郎(古野威成)には、大筒を造ってもらう」
「お、大筒、にございますか」
「そうだ。鉄砲の大きいものだ。よって、越前守(土橋氏康)の下でこれを担当してもらう」
「はっ! 承知いたしましてございます!」
鉄砲生産の技術がどこまで役立つか分からないが、5年くらいで造ってくれたらいいかな。
「右京進(深川貞國)には、石炭採掘をしてもらう」
「某、せきたんなるものが何か存じませぬが……」
「石炭は、燃える石で、遠賀川の上流で採れる。あそこの辺りは秋月や毛利との領境も近く派手に採掘はできぬが、宗像が大きくなるために必要なものだ」
「宗像が大きくなるために必要なものであれば、なんでもやりましょうぞ!」
製鉄所をどこに設置するかはまだ不確定だが、設置してから石炭を採掘しても間に合わないだろう。
今のうちに手を打っておく。
「七郎(市丸守種)には酒を造ってもらう」
「ほう、酒にございますか」
市丸守種は宗像神社の少宮司だ。
よく神官が酒を造っているが、それは神事に酒が必要だからだ。
蒸留酒の醸造を任せるには丁度いい。
次に少弐冬尚、高橋鑑種、筑紫惟門、龍造寺胤栄を呼んだ。
この4人には、穀物増産の手引書を渡した。
これは米の他に麦、蕎麦、稗、粟などの雑穀を含めた増産法と二毛作の手引書だ。
外様である彼らにも仕事を与える。
ただし、硝石や鉄砲の製造のような軍事物資は扱わせない。
そこまで彼らを信用してないということだ。
まあ、食料も軍事物資と言えばそうなのだが、こちらはばかすか扱わせてやろう。
特に少弐冬尚と龍造寺胤栄は野心を持っているような目をしている。
2人にとって目の上のたん瘤である龍造寺隆信を儂に倒させ、隙あらばと狙っている気がする。
そんな中に高橋鑑種を入れたのは、スパイのようなものだ。
高橋鑑種は一度完全に心を折られたため、儂に背くことはない。と思う。
だが、宗像にとっては外様であるのは、他の3人と変わりない。
だから、高橋鑑種には3人の不満を探れと命じている。
永禄1年6月。
肥前の調略は徐々に進んでいる。
有馬、大村、松浦、波多の家臣らが徐々にこちらに降っている。
特に、有馬に対する調略は進んでおり、その家臣団はガタガタだ。
今年は侵攻しないが、来年には肥前を統一にむけて動こう思っている。
筑後の調略はさらに順調だ。
大友は豊前を取り戻すために、筑後の国人らにも最大の兵を出すように命じた。
もちろん、宗像がいるため、すっからかんになるような動員はできない。
それを無理にでもと大友は迫ったのだ。
おかげで筑後十五城と言われる有力国人の10家が宗像についた。
そうなると、他の5家は宗像に囲まれることになる。
このまま大友に従属するか、宗像に降るか、独立するか、三択。
蒲池が5家を糾合して独立すれば、結構な勢力だ。
だが、蒲池はそういったことができるようなヤツじゃない。
大領を抱えていても大友に従属していた男だ、独立するならもっと早くしていただろう。
永禄1年7月。
毛利・秋月に対し、大友は大攻勢に出た。
葉隠の報告では、特に毛利領への攻勢は激しく、すでに宇佐郡と下毛郡の沿岸部は奪還しているらしい。
戸次鑑連、吉岡長増、臼杵鑑速が対毛利軍を率いている。
秋月のほうは、吉弘鑑理が対峙している。
こちらは秋月が毛利の援軍を行えないように、抑えの軍だ。
大友は豊後の動員兵力、およそ10,000をはるかに超える18,000を動員した。
年寄りも成人したての若者も皆動員され、ペンペン草も残ってないらしい。
そんな夏の暑い日、儂は芽衣と夕暮れの海を見つめていた。
潮風が心地よい。
「海はいいな。どこまでも続いている」
「広うございますね」
「ああ、2年もかけなければいくことができない南蛮とも繋がっているのだ。海とはすごいものだ」
前世では1日か2日でいける場所でも、この時代では2年もかかる。
前世では世界一周の船旅は安全だったが、この時代では命懸けだ。
「あれは走破船でしょうか」
海に浮かぶ巨大帆船。
日本の和船とは明らかに違うフォルムで、南蛮のガレオンやキャラックに似ている。
「ああ、走破船だ」
「大きな船です……うっ」
芽衣がいきなり顔を伏せ、胸を押さえた。
「どうした!? おい、芽衣!?」
彼女の顔は夏の強い日差しの下でも真っ青だった。
「芽衣、どこか痛いのか!?」
「お殿様。失礼いたします」
侍女が芽衣を介抱する。
「うぅぅ」
苦しそうな芽衣。
「医師だ、誰か医師を呼べ」
芽衣を部屋で横にさせ、医師にきてもらった。
最近食事が細いように見えたが、体調が悪かったのだ。
気づいてやれないなんて、夫として失格だ。
芽衣の部屋の障子が開いた。
縁側で座っていた俺は振り返る。
「芽衣は大丈夫なのか!?」
医師に詰め寄る。
「おめでとうございます、お殿様」
「何がめでたい!? 芽衣は苦しんでいいるのだぞ!?」
「落ちつきなさい、四郎殿」
「は、母上……」
母の厳しい声で、俺は医師の胸倉から手を離した。
「すまん、つい」
「いえいえ」
「四郎殿、そこに座りなさい」
芽衣を挟んで母と向かい合うように座る。
「秋月殿(芽衣)はおめでたです」
「ですから何がめで……え?」
「やや子ができたのですよ」
「やや、子……それはつまり……」
「はい。四郎殿の子ができたのです」
「っ!?」
儂は瞠目した。
これでもかというほど目を見開いただろう。
「め、い……やや子ができたのか……?」
「はい。旦那様」
「でかした! よくやったぞ、芽衣!」
儂は芽衣の手を取り、喜びを表した。
「これ、四郎殿。そう乱暴にしますな」
「あっ!? す、すまぬ」
「喜んでいただき、嬉しゅうございます」
「ああ、喜んでいるとも! 何をしたらいい? 産着は何着いるのだ? そうだ、玩具も作らせよう! あとは」
「四郎殿!」
「はい、なんですか、母上」
「落ちつきなさい。必要なものはわたくしが手配します。四郎殿はどっしり構えておればいいのです」
「で、ですが、母上」
「お黙りなさい」
「……はい」
「秋月殿は現在妊娠3カ月、産み月は来年2月です」
「はい」
「しばらくは安静にしなければいけません。分かってますね」
「はい」
母は強し。
実感したわ。
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