第19話 龍造寺夜襲
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第19話 龍造寺夜襲
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草木も眠る丑三つ時(午前2時頃)ではなく、もうすぐ朝という時間に城内が騒然となった。
儂はぐっすり寝入っており、葉隠正三に起こしてもらわなかったら、そのまま殺されていたことだろう。
「殿は肝が太うございます」
「ただ疲れていただけよ」
実際に疲れた。
恐怖で逃げ出すことはなくても、すぐそばで殺し合いが行われていたのだ。
精神がすり減っていたのかもしれない。
「敵は何人だ」
「少数です。おそらくは50もいないかと」
「そうか……。正三はここにいてくれ」
「はっ」
喧噪が近づいてくる。
結構激戦の音だ。
「きたか」
儂は防御スーツを顔まで覆う。
目だけ出している怪しいヤツだが、安全には代えられない。
儂の部屋の前で、足音が止まる。
そして障子がバンッと開け放たれる。
目がつり上がり血走っており、まるで鬼のような形相の武者が抜き身の太刀をだらりを下げている。
「面妖な恰好……」
「人の部屋に入ってきたのに、紡ぐ言葉がそれか?」
「……失礼。宗像四郎氏貞殿とお見受けいたす」
「いかにも、儂が宗像四郎氏貞だ。貴殿は?」
「某、龍造寺山城守が臣、鍋島孫四郎直茂と申す。宗像殿のお命、頂戴仕る」
「儂を殺せるかな」
「殺す」
すごい殺気だ。
まるで無数の鎌鼬が見えない刃となって飛んできているようだ。
これがあの鍋島直茂か。
晩年の龍造寺を支え、結果的には佐賀藩357,000石が鍋島のものになった。
ある意味、傑物だ。
「殿」
「出るな」
正三が儂を庇おうとするが、儂はそれを制す。
「儂には宗像三女神様の加護がある。何者の刃も儂には傷をつけぬ」
「しかし……」
「構わぬ」
俺は2歩前に進んだ。
「貴殿が神の加護を持つなら、その加護ごと斬り捨てるのみ!」
鍋島直茂が踏み込んだ。
儂は動かない。
反応できないとも言う。
袈裟斬り。
鍋島直茂は手応えがあったと思っているようだ。
だが、儂は生きている。
多少の衝撃はあったが、防御スーツがその衝撃を分散させた。
完全にその攻撃を無効化してくれるとは、この防御スーツはすごいな。
「なっ!?」
「儂が生きていることが不思議か?」
「この化け物め!」
振り被る。
動揺しているのか、鍋島直茂の動きがぎこちない。
儂もただ斬られるつもりはない。
袖に忍ばせてあったグロックを取り出し撃つ。
激しい音をわずか数センチメートルの距離で聞いた鍋島直茂の振り上げた太刀が小刻みに震える。
「ガハッ」
鍋島直茂は血を吐いた。
胴を貫通し、腹を抉った銃弾は、背中から抜けたようだ。
グラリッ。
鍋島直茂が力なく膝をつく。
「正三。手当をしてやってくれ」
「はっ、承知仕りました」
その後、城内に侵入した龍造寺の者は完全に制圧。
「お主は何をしておったのか!?」
儂の護衛を務める寺内秀郷が、吉田兼致に叱責されている。
儂の部屋に鍋島直茂が押し入ったことへの叱責だ。
「申しわけ次第もなく」
寺内秀郷は平謝りだ。
「もうよい。治部とて、5人に囲まれ奮闘していたのだ」
「しかし、殿」
「儂に三女神様の加護がある。斬られたとて、死にはしない」
防御スーツで守られていないところを斬られたら死にます。
だが、多くの者は胸や首などをめがけて突くか斬る。
目とか狙われていたら、さすがに危なかったよ。
「治部よ」
「はっ」
「今回の件、村中城攻めで汚名をそそげ。よいな」
「はっ。名誉挽回の機会を与えていただき、感謝申しあげまする! 必ずや龍造寺山城守の首を取って、殿の御前に捧げまする!」
「その意気やよし」
寺内秀郷には、常備兵300を与える。
脳筋たちをしっかりまとめ上げ、武功を立ててくれ。
夜襲はあったが、予定通り村中城を攻める。
皆が一番手柄(隆信の首)を狙い、村中城に殺到した。
たった数百の兵では、さすがに総攻めを防ぎきることはできなかった。
2刻(4時間)ほどで城は落ち、龍造寺隆信は首になって儂の前に現れた。
その首を取ったのは、300人の脳筋を率いた寺内秀郷である。
「治部よ、有言実行、真に天晴れよ」
「はっ!」
これで今回の遠征は終わりだ。
残りの肥前は、調略で少しずつこちらにつける。
さて、今回の遠征で肥前国の養父郡10,000石、三根郡11,000石、神埼郡30,000石、佐賀郡83,000石を得たことで、総石高は350,000石ほどになった。
肥前統一までにはまだ多くを残しているが、それでも大きな足掛かりを得た。
儂が肥前遠征をしている間、秋月家は毛利と共に豊前を侵食している。
姓氏対立事件を起こした小原鑑元は、かなりマズい状態だ。
あの雷神戸次鑑連と、吉岡長増が本腰を入れて鎮圧を行っている。
この2人に攻められたら、尻尾を巻いて逃げ出したくなるよ。
さて、論功行賞では、龍造寺隆信の首を挙げた寺内秀郷に1,000貫の加増。
肥前に城を与えると言ったのだが、俺の護衛だから常にそばにいたいと言ってくれたんだ。
「某は殿の護衛にございますれば、城は不要にございます。常におそばにいさせていただきたい。それに、山城守(龍造寺隆信)殿の首を挙げたことで、先の不始末の禊としたく存じまする」
嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
「禊よりも功が勝っている。よって1,000貫の加増といたす」
「感謝申しあげまする」
家臣たちには移封を含めて加増をした。
移封は嫌という者もいるが、それは仕方がない。
だが、移封したほうが便利なんだよ。
飛び地が多くなればなるほど、管理が面倒になる。
だから、移封で1カ所にまとめる。
ただ、先祖代々の土地を離れるのが嫌というのも分かるので、無理強いはしない。
それでも結構な数が移封に応じてくれたので、助かった。
寝返った龍造寺胤栄には、肥前に領地を与えた。
「しばらくの間、村中城の城代は弾正(吉田兼致)に任せる。頼むぞ」
立花山城に続いての城代だ。
吉田兼致なら上手く治めてくれるだろう。
「ハハハ。お任せくだされ。なんなら村中城も大幅に改修しますかな?」
「改修、か」
それは佐賀城を築くということか?
それはそれで楽しそうだな。
だが、今はその時じゃない。
「いや、この城は平城だ。改修しても大した防御力はない。それなら逃げたほうがいい」
「逃げる、ですか」
そんな変な顔をするなよ。
「丁度いいから、皆の者に言っておく。城の1つや2つ、取られても取り返せばいい。だが人は死ねばそこで終わりだ。ゆえにお主らは城のために死んではならん。お主らの死に場所は、儂が決めてやる。ゆえに、無駄死には許さん」
「「「ははぁぁぁっ」」」
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