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九州の覇王  作者: 大野半兵衛


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第18話 龍造寺野戦

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 第18話 龍造寺野戦

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 弘治3年6月。

 儂が勝尾城に入った翌日、龍造寺は兵を集め出した。

 ただし、勝尾城に近い少弐勢力は、呑気なもので兵を集める気配はない。

 向こうが兵を集めきるのを待つ必要はない。

 俺は全軍に進軍を命じた。

 少弐勢力が多い養父郡、三根郡、神埼郡は10日でほぼ陥落した。

 少弐冬尚は、逃げる暇もなく降伏した。

 この頃になると、龍造寺も万全、とは言えないものの、兵を集め終わっている。

 龍造寺の村中城(後の佐賀城)には、およそ5,000の兵が集まっている。

 かなり無理をして動員をかけたようだ。


 儂は少弐の本拠地である勢福寺城に入り、軍勢を配置する。

 この時点で、宗像の兵数は旧少弐勢力の1,500人を合わせて7,500人ほどになっている。


 その3日後、勢福寺城と村中城の間、筑紫平野で両軍は対峙した。


 宗像7,500に対し、龍造寺5,000。

 戦力は1.5倍だが、油断はしない。


 日が昇ると、先陣を務める嶺氏兼みねうじかね隊が接敵した。

 常備兵と共に山野を走り回る変わる元気印の武者で、その武勇は家中随一だ。

 その武勇に圧倒的なパワーとスタミナがついた……もはや誰も氏兼を止められる者はいない。


 次々に伝令が駆け入っては、報告をしていく。

 儂は軽く頷き、伝令に「ご苦労」と声をかける。

 多くはいい報告だ。

 味方が敵の誰それと討ったといった勇ましいものである。

 たまに配下の誰かが怪我をしたという報告がある。

 心が痛い……。


 儂の周囲には常備兵1,300が陣取る。

 早く俺たちを使えと、うずうずしているのが分かる。

 だが、その判断は儂がするわけじゃない。

 今回の儂は見学だ。

 戦というものを身近で見、聞き、そして感じるためのものだ。

 幸い、今のところは恐ろしくて居ても立っても居られないということはない。

 まだ人を切ったことも殺したこともないが、今のところ大丈夫そうだ。


 鉄砲の発砲音が聞こえる。

 あっちは土橋氏康の騎馬鉄砲隊か。

 一撃して離脱、早合で装弾が終わるとまた接近して斉射を繰り返す部隊だ。

 戦場を縦横無尽に駆ける自由人たちである。

 宗像はあまり騎馬武者が多くないため、騎馬鉄砲隊は200騎しかいない。

 これでもがんばって育てたんだからね。


「殿、大和左衛門尉(貞秀)の隊を押し上げとうございます。よろしいか」


 軍奉行の占部氏時が地図上の白石を動かす。


「よい」


 一応、儂が総指揮を執っていることになっているので、命令前に儂の了承を得る行程がある。


「はっ。伝令じゃ。大和左衛門尉の隊を押し上げよ」


 弓の名手、大和貞秀の部隊が動くと、敵左翼は押し込まれて崩れかける。


 また鉄砲の発砲音だ。

 連射音だから、石松尚貞の鉄砲隊か。

 500人が3段構えで連射を行う部隊だ。


 さらに嶺氏兼の隊を下げ、筑紫惟門の隊を押し上げる。

 豪勇で鳴らす嶺氏兼でも、戦い続けるのはキツい。

 息を整える時間を与えるためだ。


 外様の立花親子、高橋鑑種、そして筑紫惟門は、よく戦っている。

 ここで戦功を立て、宗像家内で出世を目指すのもいいだろう。

 しかし、高橋鑑種はよく立ち直ったな。

 脳筋どもに怖い目に遭わされたせいで使い物にならないかと思っていたんだが、がんばっているよ。


「そろそろかの」


 地図上の白石が黒石を半包囲しているのを見て、許斐氏任が呟く。


「うむ。そろそろか。で、なければ、嘘じゃったというところかの」


 吉田兼致もそろそろと言う。


「その時はその時よ。だが、殿を謀った時には、この世に生まれてきたことを後悔しながら死んでいくことになろう」


 その時、伝令が駆けこんできた。


「伝令! 龍造寺豊前守(胤栄)殿が、龍造寺山城守(隆信)殿の本陣を攻撃! 龍造寺山城守殿の本陣、瓦解!」

「豊前守め、覚悟を決めたか」


 俺は静かに口にした。

 龍造寺胤栄は龍造寺の本家だが、分家の水ヶ江龍造寺、つまり龍造寺隆信がデカい顔をしていた。

 それが気に入らなかったようで、今回の儂の侵攻に合わせて内応を自分から持ちかけてきた。

 さすがに半信半疑だったが、本当にこちらについたようだ。

 竜造寺隆信は体だけじゃなく、態度もデカかったらしい。


「殿。畳みかけます」

「よい」


 占部氏時が立ち上がり、追撃を指示する。

 陣内が湧き立つ。

 龍造寺隆信の首が取れたら、これ以上の戦果はない。

 さて、どうなるか。


 夕方、儂は大財端城に入った。

 この大財端城は、村中城の出城で、目と鼻の先にある。

 村中城内には、兵が500もいればいいだろう。

 龍造寺隆信はこの村中城内まで撤退したが、巨体が祟ってこれ以上動けなくなったようだ。

 こちらは村中城内を包囲するよう部隊を配置し、交代で休憩を取らせている。


「さて、乾坤一擲、起死回生を狙うなら、この儂を殺せば成る」


 儂の言葉に、家臣らの目が鋭くなる。


「野戦での大勝後の今は、皆の気が緩んでおろうな」

「殿は、龍造寺が夜襲をかけてくると?」

「フフフ。さあな。だが、この大財端城は龍造寺の城だった。もしかしたら、儂らが知らぬ抜け道があるかもしれぬぞ、三河守(許斐氏任)」

「な、なるほど……」

「それなら、殿の寝所を厳しく警護いたしましょう。抜け道があったとしても、少人数のはずです」

「越前(土橋氏康)殿は、殿を餌にされるおつもりか!?」

「どこにいても夜襲の危険性はあるぞ、弾正(吉田兼致)殿」

「2人とも止めよ。儂が餌で龍造寺が釣れるのであれば、それでも構わん。ただし、それで龍造寺の息の根を止めよ」

「「「はっ!」」」



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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