第13話 厳島の戦いをさらっと流す
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第13話 厳島の戦いをさらっと流す
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天文24年7月。
立花親子がシャボンを完成させたと持ってきた。
さっそく手を洗ってみると、いい感じにスッキリする。
「うむ。よい出来だ。これなら南蛮人も買っていこう。よくやったな、2人とも」
「お褒め頂き、感謝いたしまする」
「殿。そのシャボンを澳門で売るのですよね?」
「そうだぞ、新十郎」
「某を、その澳門への船に乗せてはいただけませんでしょうか」
「何を言っているのだ、新十郎!?」
父のほうは寝耳に水らしい。
「父上。某は広い世界というものを見てみたいのです」
「むぅ、しかしだな……」
「新十郎。1度海に出たら、命の保証はないぞ。それでも澳門へいきたいか?」
「はっ! どうか、某を澳門に!」
「分かった。次の船に乗せてやろう。ただし、勝手な真似をするなよ。南蛮人と我らでは風習も仕来りも違う。何が南蛮人を怒らせるか分からぬからな」
「はっ! 感謝いたします!」
「兵庫よ、可愛い子には旅をさせよ、と言う。許可をしてやれ」
「殿がそこまでお仰ってくださるのでしたら、許可しましょう」
立花親子の後は、寺内治部丞秀郷を呼ぶ。
儂の側近の1人で、護衛も務めている。
「剣の稽古をする。相手をせよ」
「承知」
俺は1刻ほど秀郷と剣の稽古をした。
数えで11歳、実年齢10歳、現代なら小学校4年生の年齢だ。
激しい動きでも、ガチムチにならないように気を使いながら体を動かす。
天文24年9月。
毛利から密使がやってきて、陶との戦いにおいて宗像水軍を貸してほしいと言ってきた。
今や知らぬ者はいない走破船を出してほしいと。
走破船であれば、1隻で1,500人は運べる。
物資だって2,000石の米を運ぶことが可能だ。
その走破船を貸せだと。
家臣らと相談すると言って、密使は別室に入ってもらう。
「陶殿は大友とも結んでおります。ここで毛利に味方すれば、宗像は北九州で孤立してしまいますぞ」
吉田兼致が毛利に手を貸すなどもってのほかと、息巻いている。
他の家臣も兼致の意見に賛成のようだ。
「だが、陶殿は勝つのか?」
言葉を発した貞安に、皆の視線が集まる。
「殿は以前、仰られた。北九州が荒れると」
ざわり。
そう言えば、と思い出す者がほとんどだ。
たしかに儂が当主になった際にそう言った。
「陶が負け、毛利が台頭し、大友との戦いになる。それならば、北九州が荒れるという意味も分かる」
貞安は、しっかり考えていたのだな。
それ、正解です!
そこから陶と毛利、どちらにつくかを家臣らは話し合った。
いや、どっちにもつかないという判断もあるんやで。
議論が白熱し、大和貞秀と石松尚貞が殴り合いそうになったのを止めるのに声を張り上げたりと、大変だった。
結論、宗像水軍で毛利を援護する。
あくまでも援護だけ。
物資や兵員の運搬を助けるだけにとどめる。
密使にも物資や兵員の運搬を助ける程度でよければ、と返事をする。
密使はそれでよいと言って帰っていった。
毛利との連絡は、貞安が行うことになった。
天文24年10月。
宗像水軍は先月の終わりに、密かに安芸へと向かった。
そこで毛利の兵員を運搬し、無事に帰ってきた。
そして、それから2日。
毛利が厳島で陶勢を撃破。
陶晴賢は逃走中に討たれた。
そこで、我が宗像は東側に隣接する麻生氏を攻めることにした。
家臣らがどうしてもと言うので、仕方なく了承した。
あいつら、脳筋すぎる。
常備兵700人と、徴兵した百姓兵2,000人の、合計2,700で攻め入った。
儂はお留守番だが、今回は前回の立花戦で出陣しなかった者らも多く出陣した。
麻生とは昔からいがみ合っていたので、家臣たちはやる気だ。
しかも立花の親のほうも家臣を率いて参戦している。
ここで活躍して領地を広げようという思惑だろう。
天文24年11月。
はい、分かってましたよ。
脳筋どもが麻生領を切り取ってきました。
麻生氏は籠城していたが、城壁をよじ登ってくる常備兵たちを見て逃げたらしい。
普通は梯子とか使うのに、あっちこっちの城壁を素手で上ってくる化け物たちがいたら、怖くて逃げるよな。
儂も逃げるわ。
そんなわけで、麻生領の遠賀郡およそ40,000石が手に入ってしまった。
今回は参戦した者も多く、褒美も多くなる。
それでも宗像は142,000石の領主になった。
十分大名と言える石高だと思うが、大友と戦うには、まだまだ小勢力だ。
天文24年12月。
旧麻生領の遠賀郡の配置を終えた俺は、石松但馬守尚貞を呼び出した。
「但馬守よ、お主に遠賀川の整備をしてもらう」
「治水、にございますか?」
「水路、水運の整備だ」
旧麻生領には、日本最大の炭田が眠っている。
日本の近代化を支えた八幡製鉄所は、この筑豊炭田があったからこそ膨大な火力を賄えたのだ。
その炭田を有効に使うには、遠賀川の水運を整備しなければいけない。
一朝一夕ではできないことなので、徐々にやっていくしかないのだ。
明治期になると、鉄道が整備されて水運は廃れることになるけど、水運だっていいものだ。
船も喫水が浅く、大量の石炭を運べるものが要るな。
「殿が仰るのであれば、何か重要なことなのでしょう。承知いたしました。某の全身全霊をかけて、その水路の整備をいたしましょう!」
石松尚貞は気炎を吐く。
気合い入れすぎて空回りしないようにな。
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