第12話 天文24年、始めました
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第12話 天文24年、始めました
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天文24年1月。
俺の記憶に間違いがなければ、今年は厳島で毛利と陶が激突し、毛利が勝つ。
たしか秋のことだから、まだ時間はある。
それから改元も行われるはずだ。
新しい年号は弘治だったはず。
毛利が飛躍する年号だ。
昨年は立花との戦があったものの、被害は皆無と言っていい奇跡的な大勝利を掴んだ。
そのおかげで石高は102,000石と、倍増している。
さて、昨年の収支だが……。
稼ぎ頭のジイ様の銭の造り直しは40,000貫に至った。
宗像にはその半分の20,000貫が入った。
吉田兼致の椎茸生産は6,000貫の売上だ。
その半分の3,000貫が宗像に入る。
許斐氏任の玻璃の売上は18,000貫。
半分の9,000貫が宗像に入る。
なお、玻璃にかんしては製品の種類が増え、品質も上がりつつある。
そのうち切子など作りたいな。
土橋氏康の鉄砲生産は150挺。
1,500貫で宗像が買い上げた。
これで保有鉄砲は200挺だ。
吉原貞安の新造船は、2隻が完成した。
1隻2,000貫で宗像が2隻とも買い上げ、4,000貫の支出。
これで走破船は4隻保有になった。
先に完成していた2隻は、朝鮮経由の澳門との往復を終えて博多の商人は10,000貫の売上を出した。
こちらは5,000貫が宗像に入るが、そこから4割の2,000貫を水夫の手間賃・船の修繕費などに充てる。
博多商人の売上の中には、硝石を俺が2,000貫で買ったのも含まれている。
だから、俺の儲けは実質的には1,000貫かな。
走破船が増えた分、水夫も増やしている。
あとは海戦の経験を積めばと思わないではないが、もし走破船が沈んだら心が折れそうだ。
水あめ菓子の売上は2,000貫。
飴ちゃんの売上は2,400貫。
ここは共に3割が宗像に入ってくるので、600貫と720貫の合計1,320貫の儲けだ。
常備兵は700人のまま。
戦で死者も重傷者もいないという奇跡を起こしているから、扶持を増やしてやりたいが、今は難しい。
よってマイナス10,500貫だ。
生産分配もマイナス6,000貫だ。
今年の収支は大幅プラスの12,320貫になった。
これまでのマイナスを帳消しにしてくれるプラスだ。
よかったー。
天文24年5月。
硝石が完成したと、占部氏時から報告を受けた。
「南蛮から購入した硝石と遜色ない硝石です」
「うむ。ご苦労であった。だが、硝石はどれだけあってもいい。増産してくれよ」
「はっ!」
さて、次の行動に移るか。
儂は立花鑑光・鑑載親子を呼んだ。
「2人にやってもらいたいことがある」
2人は顔を見合わせ、何をさせられるのかと身を硬くしている。
「そう身構えずともよい」
何も取って食おうというつもりはない。
「我らにできることであれば、全力で取り組みまする」
その言葉を聞き、俺は懐から書を取り出す。
「これはな、宗像三女神様によるお告げを元に作った手引きの書だ」
「「宗像三女神、様……」」
驚いているな。
そういう顔を見ると、楽しくなる。
性格が悪いという自覚はある。
「我が宗像が豊かなのは、宗像三女神様のお告げのおかげだ」
そんなことがあるのか、といった表情だな。
俺だってこんな話は、俄には信じられない。
それでも、俺には転生という事実と、ガチャという神の奇跡がある。
「信じられぬか? ならば、もう1つ教えてやろう」
「もう1つ……」
「今年、ある人物が大きな戦によって命を落とす。それにより、この北九州の情勢は大きく動く」
「……それは」
「フフフ。詳しく聞きたいか?」
2人の喉が鳴る。
神の名は重い。
そして宗像三女神が宗像の者である俺にお告げをしても不思議はない。
信じるべきか、信じぬべきか。
心の葛藤が顔に現れておるわ。
「まずは騙されたと思って、儂の言う通りにしてみよ」
「……承知いたしましてございます。殿のお言葉に従いましょう」
「……して、我らは何をすればよろしいのでしょうか」
手引き書を差し出す。
これは石鹸の生産について記したものだ。
石鹸は日本では知られていないが、南蛮では高く買ってもらえる商材である。
石鹸を澳門に持ち込めば、銭になる。
「それは、南蛮ではシャボンと言われるものだ。それを使って体を清めれば、穢れを払えるというものだな」
「穢れを……」
「それをお主ら親子に作ってもらう。それが富を生む。どうだ、やるか?」
2人は顔を見合わせて、頷く。
決まったようだ。
「我らにそのような大事をお任せいただき、感謝申しあげまする」
「ありがとうございます」
「財は貯めこむのではなく、使う。それが宗像の強さの秘密よ。よって、両名の働きに期待する」
「「はっ!」」
「そのシャボンの製造法は秘匿せよ。お主らの総力を挙げ、生産を行い、情報は秘匿だ。製造にかんしては決められたことを守れる者がいればよい。職人は不要ゆえ、戦で働けなくなった者、戦で夫を失った者、年老いた者らを使うとよい。手間賃は多く払ってやれよ」
「はい、承知いたしましてございます」
戦で負け、領地を減らされた不満は、彼らの中に燻っているだろう。
だから、以前よりも豊かにしてやる。
豊かさを実感すれば、不満は小さくなるものだ。
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