第11話 10万石の大名の鍋寿丸君です
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第11話 10万石の大名の鍋寿丸君です
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天文23年8月。
おかしいな……。
なんでだろうか……?
俺は何を間違えたのだろうか?
いや、間違えたわけではない。
俺は見誤ったのだ。
「殿、やりまっしたぞ!」
自慢げにする占部右馬助氏時。
その顔はやり切った感のある晴れやかなものだ。
「立花鑑光、鑑載親子を降伏させましてござる」
こちらは至って冷静な吉田弾正忠兼致である。
いや、ちゃうねん!
儂は撃退してこいと言ったよね?
なんで立花山城を落として、立花親子を降伏させてくるのよ!?
「あまりにも脆すぎて、歯ごたえがござらぬ」
土橋越前守氏康が静かに言う。
お前も他のヤツらも、脳筋か!?
この脳筋どもが捕縛したのは、当主立花兵庫頭鑑光、その子新十郎鑑載、そして重臣の米多大学助比直知、薦野三河守宗鎮。
おいおい、フルキャストじゃないか。
意図したものではないが、褒めてあげないといけないのが当主の悲しいところだ。
「弾正忠、右馬助、越前守、三河守、そして他の者らもよくやった。褒美はできる限り弾むぞ」
「「「ははぁぁぁ」」」
「さっそくだが、立花の者らに会おう。連れてきてくれ」
4人は俺の前に座った。
太刀どころか脇差も持っていない。
4人とも憔悴しきった顔だ。
こんなはずじゃなかったと思っているんだろうな。
儂の蔦ヶ岳城を落としてやろうと意気軒昂に出陣したら、数日後には落城の憂き目に遭っているのだ、その気持ちは分からないではない。
「さて、立花殿。儂が宗像鍋寿丸である。この度は、何ゆえ我が領地を攻めたのか、教えてもらえぬか?」
敵の心理を知るのは、大事なことだ。
彼らと同じように考える者は、他にもいるかもしれないからね。
「……豊かなところから奪う。それが戦国の倣い、でござるよ」
まさに戦国ならではの理由である。
分かりやすい理由だ。
「では、立花殿はこれからどうされるか? 儂も戦国の倣いに従い、奪った城をお返しする気はござらんぞ」
「是非もござらん。この首、好きなようにされよ。ただ、最後に宗像殿に頼みがある」
「頼み、か。言うがよい」
「儂のこの首1つで、許してはくれまいか。息子新十郎や大学助、三河は宗像に仕えるよう言い含めるゆえ、どうかこの通りだ」
深々と下げる頭は、かなり薄い。
今年で41歳か。
体質かもしれないけど、苦労の跡かもしれない。
息子の新十郎鑑載はまだ17歳だ。
10歳の俺が言うことではないが、若い。
そんな若い命を守りたいようだ。
そこは戦国武将ではなく、親の顔なんだな。
「随分と虫のよい話だ」
「そのことは承知しておる。故に頼んでいるのだ」
「ならば、儂の頼みも聞いてくれ」
「……うかがおう」
「兵庫殿を殺したら、新十郎も大学助も三河守も儂に従うことはないだろう。その3人の不満げな顔見れば分かる」
「そのようなことは!?」
儂は手を上げ、分かっていると頷く。
「そこで、兵庫殿には儂に仕えてもらいたい。そうすれば、他の3人は儂に仕えずとも、其方には従うだろう」
「……よ、よろしいのか」
「領地はそのままということはできぬ。今回の戦に出た者らに、褒美をやらねばならぬからな」
「………」
「どうだろうか、兵庫殿」
「お情け、忝く。この上は殿にお仕えいたします。以後、よろしくお願いいたしまする」
兵庫助が頭を下げると、3人も慌てて下げた。
立花には米多比の米多比城と薦野の臼ヶ岳城を残す。
米多比城には立花鑑光を入れ、元城主の米多比直知は城代にする。
臼ヶ岳城には立花鑑載を入れ、元城主の薦野宗鎮は城代だ。
他の城は召し上げ、残った城の領地も少し削る。
特に立花山城はこちらで押えないといけない。
てか、あの脳筋たち、どうやって立花山城を落としたんだ?
結構な規模の山城だぞ?
聞くのが怖いな。
常備兵に無茶させたんとちゃうか?
天文23年9月。
はい、思わぬことで100,000石の大名になった鍋鶴丸君です。
予定よりも3年早く勢力拡大をしてしまった鍋寿丸君です。
宗像領48,000石、立花領54,000石、合計102,000石。
てか、なんで500の兵で54,000石もの領地を切り取れるんだよ。
それを聞くのは怖かったが、聞いた。
初戦、これは野戦だったけど、そこで土橋氏康率いる鉄砲隊が大活躍を見せた。
たった100の鉄砲だが、まるで雷のような音を立てると、立花の将兵が倒れる。
それに恐れをなした兵たちは逃げ出し、そこに占部氏時率いる主力300が突撃した。
肉体を鍛え上げた常備兵たちは、人間凶器だった。
振り回した槍は敵をなぎ倒し、突き刺せば防具を貫通して致命傷を与える。
剛力無双の300の槍が突き進んだおかげで、初戦で立花息子を気絶させ捕縛、同時に米多比直知も捕縛した。
そしていくつかの支城を落とし、立花山城に迫った。
ただ、立花の兵は余程鉄砲隊と槍隊が恐ろしかったようで、立花山城には戻ることはなかった。
百姓兵なんてそんなものだ。
立花山城はそれなりの規模の山城で、普通なら落とすのが難しい。
それなのに、あいつら門とか関係なく空堀や塀をズンズンよじ登り、城内に侵入したらしい。
クライミングなんて訓練メニューになかったんだけどな……。
そして、あっけなく立花山城も落ちたらしい。
吉田兼致には1,000貫の加増と、立花山城の城代を命じた。
今後、立花山城は毛利と大友の戦いの中で城主を何度か変えることになるが、この歴史線ではそうはさせない。
財力を使って堅城に魔改造する。
吉田兼致には魔改造を指示した。
「まかいぞう、にございますか?」
ぽかんとするなよ。
「言葉尻は気にするな」
「はぁ……」
「石垣を組み、空堀を増やし、水堀も増やし、とにかく攻め口を潰せ。誰が見ても堅牢な城に改修するのだ」
「承知いたしました」
占部氏時は1,000貫の加増。
許斐氏任は300貫の加増。
土橋氏康は1,000貫の加増。
他の家臣らにも加増や太刀などを与え褒美とした。
あと、名島城は博多に近いので、ジイ様に城代を頼むことにした。
たくさんの銭を持っているんだから、名島城を堅城にしてくれよ、ジイ様。
「儂にまかせるのじゃ」
一抹の不安が……。
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