第三百十三話「王立書庫の秘密と、姫殿下の『言葉の重み比べ』」
その日の午後、王立書庫の最も静かな一室は、重い空気に包まれていた。アルベルト王子とマリアンネ王女は、王国の法律を定める「条文」の論理的な曖昧さについて、激しい議論を交わしていた。
マリアンネ王女は言った。
「この条文は、『公正』という言葉に、あまりに多くの解釈の余地を残しているわ。論理の厳密性が足りていない!」
アルベルト王子がそれに答える。
「しかし、マリアンネ。法律とは、冷たい論理だけでは成立しない。国民の『心』を考慮した、曖昧さも必要だ」
二人は、「言葉の厳密性」と「言葉の柔軟性」という、統治の根幹に関わる対立に直面し、結論を見出せずにいた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、二人の兄姉の間に座った。彼女の目にはすでに、二人が「言葉の重さ」を、異なる基準で測っているのが見えていた。
「ねえ、お兄様たち。言葉って、どうしていっつも喧嘩しちゃうのかな?」
彼女は、二人の論争を、「言葉の重み比べ」という、愛らしい遊びで解決することを決意した。
シャルロッテ姫殿下は、アルベルト王子に、「愛」という言葉を紙に書いてもらい、マリアンネ王女に、「公正」という言葉を紙に書いてもらった。
そして、彼女は、二つの言葉を、精密な天秤にそっと乗せた。
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天秤は、微動だにしなかった。二つの言葉の重さは、物理的に同じだったからだ。
シャルロッテ姫殿下は、光属性と土属性の魔法を融合させた。
彼女の魔法は、言葉の重さを「論理的な重さ」から、「感情の純粋さ」へと変換させた。
シャルロッテ姫殿下は、「愛」の言葉に、「国民の笑顔の数」という感情的な重みを注入した。そして、「公正」の言葉に、「論理の厳密さ」という知的な重みを注入した。
しかし、天秤は再び、微動だにしなかった。
そこでシャルロッテは、首を傾げた。
「うーん、おかしいね? なんで重さが変わらないのかしら?」
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彼女は、自分の銀色の巻き髪から、魔法を纏った小さな虹色の髪の毛を一本抜き、それを天秤の真ん中にそっと置いた。
その瞬間、天秤は、激しく、しかし優雅に、傾いた。
シャルロッテ姫殿下は、にっこり微笑んだ。
「ね、お兄様たち。言葉の重さはね、言葉そのものの論理じゃなくて、それを愛する『純粋な気持ち』の重さで決まるんだよ! これがわたしの愛なの!」
アルベルト王子とマリアンネ王女は、妹の純粋な愛の力に、言葉を失った。
アルベルト王子は、言った。
「言葉の価値は、その論理的な厳密さではなく、シャルロッテのような、純粋な愛の献身によって、初めて決定されるのだな」
マリアンネ王女がそれに続く。
「私たちは、『愛』と『公正』を対立させていた。しかし、シャルロッテの愛は、その二つを、最も高次の次元で調和させたのね……!」
その日の午後、王立書庫は、「言葉の重み」という哲学的な問いを、「愛の純粋さ」という最も温かい答えで満たした。




