第三百十四話「王国の旗の青と、姫殿下の『優しすぎる境界線』」
その日の午後、王国の城壁に、長年国境警備を担ってきた老いた衛兵が、引退を前に、王国の旗を一人静かに見上げていた。旗の青色は、長年の風雨に晒され、色褪せ、くたびれている。
老衛兵は、その色褪せた青に、自分の人生を重ねていた。彼は、国境という「曖昧な境界線」を守り続けたが、その献身は誰にも気づかれることはなく、彼の心は、引退を前に「私は、本当にこの王国の一部だったのだろうか」という孤独に囚われていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その老衛兵の横に立った。彼女の目には、旗の青色が、衛兵の心の中で、「王国との断絶」という、冷たい感情を表現しているのが見えていた。
「ねえ、おじいさん。旗の青色はね、悲しい色じゃないんだよ」
老衛兵は、姫殿下の純粋な言葉に、驚いた。
「姫殿下。この青は、王国と、外界を分かつ、冷たい境界線でございます。この線を守ることが、私の人生のすべてでした」
シャルロッテは、その「境界線」という冷たい概念を、「愛と優しさ」という温かいものへと再定義することを決意した。
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シャルロッテ姫殿下は、光属性と風属性の魔法を融合させた。
彼女の魔法は、旗の青色を操作した。旗の青色は、一瞬、鮮やかなターコイズブルーに輝いた後、その色を保ちながら、旗の縁から、ごく微細な、白い、優しい光の粒子を放ち始めた。
シャルロッテ姫殿下は、その光の粒子を、城壁の周囲の空気全体に、均質に拡散させた。
そして、シャルロッテ姫殿下は、老衛兵に、その光の粒子を指さした。
「ね、おじいさん。この光はね、『優しさの境界線』だよ」
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シャルロッテは、その魔法の真実を、老衛兵に教えた。
「境界線はね、誰かを排除するためのものじゃないの。誰かを優しく受け止めて、『ここから先は、あなたの温かい心で決められる安全な場所だよ』って、教えてあげるための、優しい輪郭なの」
老衛兵は、その光の粒子が、自分の心の中で、「孤独」を「愛に満ちた守護」へと変えているのを感じた。彼が守り続けた境界線は、「断絶」ではなく、「愛という名の、優しすぎる結界」だったのだ。
老衛兵は、涙を流し、姫殿下に深々と頭を下げた。
「姫殿下。私は、長年、自分の献身が冷たい義務だと信じておりました。しかし、姫殿下は、私の人生のすべてが、『愛という名の優しさ』に包まれていたことを教えてくださいました。私は姫殿下に仕えることができて、幸せです」
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ルードヴィヒ国王は、娘の行動を知り、引退する老衛兵に、王国の旗を贈呈した。そして、その旗に、「優しさの境界線は、愛によって守られる」という、新しい家訓を加えた。
シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、冷たい線よりも、優しくてふわふわな輪っかのほうが、絶対可愛いもん!」
その日の午後、王国の旗の青色は、「愛と優しさ」という、最も温かい意味を纏ったのだった。




