第三百十二話「石造りの迷路と、姫殿下が解く『時間の孤独』」
その日の午後、王城の庭園の最も古く、苔むした一角にある石造りの迷路は、夏の日差しにもかかわらず、ひんやりとした静寂に包まれていた。迷路の壁は高く、視界は完全に遮られ、誰もが「空間的な孤独」を感じる場所だった。
シャルロッテは、モフモフを抱き、マリアンネ王女と共にその迷路に入った。マリアンネ王女は、「この迷路の石には、時間魔法が施されているわ。入った者の「孤独な記憶」を反芻させる、一種の『精神的な檻』よ」と、解析魔法でその恐ろしさを説明した。
迷路の複雑な曲がり角は、思考を巡らせるたびに、「もしあの時、違う選択をしていたら」という「時間の孤独」を、訪問者に静かに突きつけてきた。
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シャルロッテは、その迷路の壁に、そっと触れた。彼女の目には、迷路の石の一つ一つが、「誰かに寄り添ってほしい」と、無言で泣いているのが見えた。
「ねえ、お姉様。この迷路は、一人でいるのが怖くて、みんなを閉じ込めようとしているんだね」
シャルロッテは、その迷路の持つ「孤独」を、否定も排除もしなかった。彼女は、「孤独」を「愛の可能性」に変えることを決意した。
シャルロッテは、迷路の壁に、光属性と風属性の魔法を融合させた。彼女の魔法は、壁の石の一つ一つに、「愛しい誰かの体温の記憶」を、微細な熱として注入した。
そして、彼女は、マリアンネ王女に、ある遊びを提案した。
「ね、お姉様。今からね、目を閉じて、壁を触りながら歩くの。一番温かい壁を探すのよ!それが、お姉様の『愛の正解』だよ!」
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マリアンネ王女は、妹の遊びに戸惑いつつも、目を閉じた。彼女が壁に触れるたびに、冷たい石の感触の奥から、微かな、しかし確かな「温もり」が伝わってきた。それは、かつて家族がこの迷路を歩いた時の、「優しさ」や「喜び」といった感情の魔力だった。
マリアンネ王女は、最も温かい壁を見つけ、その壁に抱きついた。
「ああ、シャル! この温もりは……! 論理では説明できない、愛の存在の証明だわ!」
マリアンネ王女は、迷路の「孤独」が、「愛の温もりが閉じ込められた宝物庫」へと変わったことに気づいた。彼女は、目を閉じ、「孤独とは、愛と繋がっていない時の状態を言う」という真理を悟った。
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その瞬間、迷路の壁全体が、シャルロッテの魔法と、マリアンネ王女の「愛の発見」に呼応し、温かい、虹色の光を放った。
シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、迷路の壁はね、一人で歩くよりも、誰かと温かい手を繋ぐのが、一番可愛いんだもん!」
その日の午後、石造りの迷路は、「孤独」という名の悲しい記憶から解放され、「愛という名の、永遠の温もり」に満ちた、新しい聖域となった。




