第三百十話「薔薇の塔の朝食と、姫殿下が教える『クロワッサンの美学』」
その日の朝、薔薇の塔の居室は、焼きたてのパンと、エスプレッソの、洗練された香りに満ちていた。シャルロッテはめずらしく、エマに淹れさせたハーブティーではなく、特注の、ごく小さなデミタスカップで、エスプレッソのような濃いコーヒーを味わっていた。
彼女の膝の上には、モフモフが、いつものように優雅な姿勢で座っている。
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そこに、アルベルト王子が、妹の優雅すぎる朝食風景を見て、微笑みながらやってきた。
「シャルロッテ。そのエスプレッソは、体に良くないぞ。お前にはまだ濃すぎる」
アルベルト王子は、妹*「生活の優雅さへのこだわり」を、理解しつつも、健康面から、その習慣を心配していた。
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シャルロッテ姫殿下は、兄の隣の椅子を指さした。
「ね、兄様。エスプレッソはね、『大人の憂鬱』の味がするんだよ。でもね、『大人の憂鬱』は、一瞬で飲んじゃうのが、一番カッコいいんだよ!」
彼女は、「人生の苦味」を、「洗練された一瞬の味わい」として受け入れるという、都会的な美学を持っていた。そのわりにエスプレッソを飲んだ後は、必死に苦みをこらえる顔をしていたけれど。
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続いてシャルロッテは、アルベルト王子に、「クロワッサンの究極の楽しみ方」を教え始めた。
テーブルには、完璧に焼き上げられた、パリの街角のような、無数のクロワッサンが並んでいた。
シャルロッテ姫殿下は、一つのクロワッサンを手に取り、光属性と風属性を融合させた。
彼女の魔法は、クロワッサンに、「最も美味しく食べられる、ごく一瞬の、サクサクとした時間」を、永遠に持続させた。
「ね、兄様。クロワッサンはね、『音』を楽しむのよ! 外側のサクサクと、内側のフワフワが、『今日一日、幸せな音が鳴り響く』って、約束してくれるの!」
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アルベルト王子は、妹にうながされて、クロワッサンを一口食べた。彼の口の中に広がる、完璧な音の連鎖と、バターの優雅な香りの交響楽に、彼は、妹の「日常への愛着」という哲学の深さを悟った。
「シャルロッテ。君は、食べ物に、一日の幸福の設計図を見出すのだな。独特の、美しい視点だ」
シャルロッテは、モフモフの頭を優しく撫でた。モフモフも、優雅な姿勢を崩さず、クロワッサンの破片を味わった。
「えへへ。だって、毎日がね、『究極の優雅さ』で始まらないと、可愛くないもの!」
姫殿下の純粋な美学は、日常の朝食というごくシンプルな瞬間に、「洗練された愛と、幸福の約束」という、最大の価値を与えたのだった。




