第二百五話「雲の上の使者と、王城の『遊びの交換協定』」
その日の午後、王城の庭園は、突如として強い突風に襲われた。突風が去った後、庭園の芝生の上には、見たこともない、奇妙な形をした、木製の玩具が一つ落ちていた。それは、この王国の技術や文化とは全く異なる、「雲の上の世界*の玩具だった。
玩具は、鮮やかな橙色と赤色に塗られ、遊ぶための明確なルールがわからない、極めて独創的な形をしていた。
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シャルロッテ姫殿下は、その玩具に、すぐに強烈な好奇心を抱いた。
「わあ、モフモフ。この玩具、空の向こうのお友達の匂いがするよ!」
マリアンネ王女は、その玩具を解析し、驚愕した。
「この玩具は、雲の上にある、別の文明圏の素材でできているわ! そして、この玩具の遊び方は、私たちの知るすべてのゲームの法則を逸脱している!」
王城の大人たちは、この異文化の玩具の「価値」と「目的」を理解できず、困惑した。
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シャルロッテ姫殿下は、玩具の「目的」を理解しようと、一人で遊び始めた。彼女は、王国の常識的な遊び方を全て捨て、玩具が持つ、奇抜な形そのものに、遊びを見出した。
彼女は、玩具を頭に乗せたり、回転させたり、空中に浮かせたり(浮遊魔法)と、予測不能な遊び方を続けた。その無邪気な好奇心は、玩具が持つ「遊びの無限の可能性」を、次々と引き出した。
「ね、お姉様。この玩具はね、『自分でルールを作る』のが、一番楽しいんだよ!」
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その日の夕方、王城には、玩具を失くした雲の上の世界の使者が、謝罪と共に訪れた。使者は、彼らの世界の「最も大切な遊びの宝物」を、人間界に落としてしまったことを深く憂いていた。
使者は、シャルロッテ姫殿下が、その玩具を、「常識を逸脱した、純粋な創造性」で遊び尽くしているのを見て、驚愕した。
「我々の玩具は、厳格な規則の中で遊ぶもの。しかし、姫殿下は、その規則を破り、玩具の真の魂を解放された……」
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使者は、シャルロッテ姫殿下に、感謝の念を伝えた。
「姫殿下。我々は、遊びを『学ぶもの』と捉えておりました。しかし、姫殿下は、遊びを『創造するもの』として捉えられた。我々は、遊びの真の心を、あろうことか貴国で学んだのです」
そして、使者は、王城と雲の上の世界の間で、「遊びの交換協定」を結ぶことを提案した。それは、「互いの文化の最も純粋な遊びを交換し、理解を深める」という、愛に満ちた協定だった。
シャルロッテは、にっこり微笑んだ。
「わあ! 嬉しい! じゃあ、今度は、私の可愛い折り紙を、雲の上のお友達に教えてあげるね!」
姫殿下の純粋な好奇心は、異文化間の壁を、「遊び」という共通の言語で乗り越え、愛と交流の未来を創造したのだった。




