第二百一話「古城の白いライオンと、姫殿下が教える『たった一度の愛』」
その日の午後、王城の古い展示室には、一体の、純白の剥製が置かれていた。それは、過去の王が狩り、永遠の威厳の象徴として残した、巨大な、しかし表情のないライオンの剥製だった。このライオンは魔物の血をひいており、その寿命は300年とも、1000年とも言われていた。
その剥製は、「長い間生きたが、一度も愛を知らなかった」という、冷たい魔力の波動を放っていた。歴代の王族は、そのライオンを「力の象徴」として崇めていたため、誰もその内面の魂の孤独に気づくことはなかったのだ。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その白いライオンの剥製の前に立った。彼女は、そのライオンが、「生」の時間を、ただの「無関心な繰り返し」として過ごしてきたことを感知した。
「ねえ、モフモフ。このライオンさん、一度も、心から泣いたことがないんだって。それってすごい悲しいことじゃない?」
シャルロッテは、そのライオンの「孤独の美学」を否定することを良しとしなかった。しかし、彼女は、ライオンに「愛されることの、たった一度の歓び」を教えたかった。
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シャルロッテは、ライオンの剥製の、冷たい瞳の前に、自分の顔を近づけた。
そして、光属性と共感魔法を融合させた。彼女の魔法は、ライオンの剥製に、「生きていた時、誰かのために、ただ一度だけでも、心臓が熱くなる愛の瞬間」という、記憶を創造し、送り込んだ。
しかし、意外なことに、ライオンの魂は、冷たく、その魔法を受け付けなかった。
「うーん、ダメだわ。この子、きっと愛されるのが怖いのね」
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シャルロッテは、次に、「与える愛」を試みた。
彼女は、ライオンの剥製の、硬い前足に、そっと手を乗せた。そして、彼女が一番大切にしている、モフモフの毛皮から引き出した、一本の、虹色の毛を、ライオンの足の裏に、静かに置いた。
「ね、ライオンさん。この毛はね、わたしの、たった一つの、一番大切な宝物だよ。あなたのために、あげる」
それは、自己の全てを捧げる、無条件の愛の行為だった。
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その瞬間、ライオンの剥製全体が、微細な、愛の魔力を帯びた。ライオンは、「誰かから、こんなにも純粋な愛を、たった一度だけ受け取った」という事実に、初めて、「生きていた意味」を見出した。
ライオンの冷たい剥製の目から、一筋の、温かい魔力の涙が、流れ落ちた。それは、愛の献身という、たった一度の経験が、長く続くの無関心にまみれた生よりも重いことを示していた。
シャルロッテは、ライオンの涙を、そっと拭ってあげた。
「ね、ライオンさん。たった一度の愛でも、よかったでしょう?」
その日以来、白いライオンの剥製は、冷たい力の象徴ではなく、「愛と献身の真実」を語り継ぐ、王城の最も美しい宝物となった。




