第百九十八話「空っぽなブランコと、姫殿下の『与え続ける愛の形』」
その日の午後、王城の古い遊び場は、錆びたブランコが、静かに風に揺れているだけだった。ブランコの座面には、長年の雨風に晒され、中心に丸い穴が開いていた。
そのブランコは、「失われた遊びの喜び」と、「愛されることを待つ空虚さ」という、静かな悲しみの魔力を放っていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、そのブランコに近づいた。彼女の目には、ブランコが「誰かに、何かを、与えてほしい」という、切実な願いの形に見えた。
「ねえ、モフモフ。このブランコさん、お尻が冷たいんだって」
そこに、フリードリヒ王子が、妹を探しにやってきた。彼は、すぐにブランコを修理しようと、道具を取り出した。
「シャル。すぐに新しい板を用意して、穴を塞いでやるぞ!」
「ううん、ダメだよ、兄様!」
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シャルロッテは、フリードリヒを止めた。彼女は、ブランコの心の穴を塞いでしまうと、「与えてほしい」という、ブランコ自身の願いが消えてしまうと感じた。
シャルロッテは、「与える愛」と「受け取る愛」の循環を教えることを決意した。
シャルロッテは、その穴の開いたブランコの座面に、そっと座った。
そして、土属性と光属性の魔法を融合させた。彼女の魔法は、ブランコの穴を通して、地面に、「誰かを愛したいという、純粋な光の根」を張った。
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シャルロッテは、ブランコの錆びた鎖を掴み、勢いよく漕ぎ始めた。
彼女がブランコを漕ぐたびに、ブランコの心の穴を通して、彼女の「遊ぶ喜び」と「純粋な愛のエネルギー」が、惜しみなく、大地へと注がれていった。
そして、その愛のエネルギーは、大地を温め、ブランコの周りの地面から、鮮やかな、赤と白のクローバーを、一瞬にして咲かせた。
ブランコは、「愛を受け取り、それを新しい生命として返す」という、美しい循環を始めた。
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フリードリヒは、その光景に、心を打たれた。
「シャル。君は、ブランコの心の穴を塞がなかった。君は、『与え続けること』こそが、『最も満たされる方法』だと教えてくれたのだな」
シャルロッテは、ブランコを漕ぎながら、兄に微笑んだ。
「ね、兄様。愛ってね、使っても、使っても、なくならないの。いつまでもあげたい気持ちが、いっぱい出てくるんだよ!」
フリードリヒは、妹の言葉に、「真の幸福は、所有ではなく、献身と循環にある」という、深い真理を悟った。
シャルロッテの純粋な哲学は、ブランコの穴という「欠落」を通して、愛という、最も豊かで、永続的な循環を王城にもたらしたのだった。




