第百九十一話「願いを叶える木の枝と、王女の『不幸の修正術』」
その日の午後、王城の庭師ハンスは、庭園の隅で、奇妙な形状をした、苔むした古い木の枝を拾った。その枝には、魔力が強く宿っており、「三つの願いを叶える」という、古くからの呪いめいた伝承があった。
ハンスは、その枝を、最も信頼するフリードリヒ王子に渡した。
「殿下。この枝は、何か不吉な魔力を持っています。どうか、お気をつけください」
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フリードリヒ王子は、その枝の魔力を、「妹の喜び」のために使おうと決意した。彼は、枝をシャルロッテ姫殿下に渡し、「一つ目の願い」を捧げた。
「シャルロッテに、世界一美味しいマカロンを、好きなだけ食べさせてあげたい!」
その瞬間、王城の厨房は、原因不明の制御不能なマカロンの洪水に襲われた。マカロンは、天井まで積み上がり、王城の通路を塞ぎ、ついには王城の崩壊さえも危ぶまれる事態となった。
確かに願いは叶ったが、その過剰さゆえに、王城はパニックに陥った。
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フリードリヒは、自分の軽率な願いが招いた事態に、顔面蒼白になった。
「くそっ! 願いは叶ったが……これじゃあ呪いだ!」
シャルロッテは、モフモフを抱き、マカロンの山の中で、にっこり微笑んだ。
「ねえ、兄様。願いはね、誰かの迷惑になると、可愛くないよ」
シャルロッテはそう言うと、「二つ目の願い」を、枝に捧げた。
「このマカロンが、王城の誰もが、ちょうどいい数だけ食べられる量になりますように!」
その瞬間、マカロンの山は、一瞬で消え去り、王城全体に、一人一個だけ、完璧な形の、温かいマカロンとなって、優しく降り注いだ。
災難は消え、愛と感謝の形に変換されたのだ。
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シャルロッテは、残された「三つ目の願い」を、枝に捧げようとした。
しかし、フリードリヒは、妹の手を握り、真剣な目で言った。
「シャル。もう願い事はするな。俺はわかったんだ。願い事は、神や魔物との契約ではない。自分の弱さを、世界に押し付けることなんだ」
シャルロッテは、その言葉に、深く頷いた。
「大丈夫だよ、お兄様」
シャルロッテは、枝に向かって、三つ目の願いを捧げた。
「この枝が、もう誰の願いを叶えるためにも使われませんように」
その瞬間、枝は、温かい光を放ち、その魔力を失い、ただの、古くて可愛い木の枝に戻った。
シャルロッテは、枝を庭園に植え、光属性魔法で、「愛の木」として、永遠の祝福を与えた。
シャルロッテの純粋な哲学は、「願いを叶える力」よりも、「願いをしない自由と、今あるものへの感謝」の方が、遥かに尊い真実であることを、王城にもたらしたのだった。




