第百九十二話「子爵夫人の仮面と、王女が仕掛けた『静かなる真実』」
その日の午後、王城のサロンでは、優雅な貴族たちが集い、慈善事業についての議論を交わしていた。フローラ子爵夫人は、「慈善は、高貴な者の義務」と、熱心に語り、その献身ぶりで社交界の称賛を集めていた。
しかし、シャルロッテは、モフモフを抱き、子爵夫人の優雅な笑顔の裏に、「名声のために、屋敷の使用人を慈善事業のために不当に働かせ、苦しめている」という、冷たい魔力の波動が渦巻いているのを見ていた。子爵夫人の屋敷の使用人たちは、慈善事業の準備という名目で、睡眠時間さえ削られ、深く疲弊していた。
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シャルロッテは、その「優雅な偽善」の犠牲となっている人々のために、行動することを決意した。
シャルロッテは、子爵夫人に、一輪の完璧な白い薔薇を差し出した。
「ねぇ、奥様はご存じかしら。この薔薇はね、嘘をつく人の心には、トゲを生やすのよ」
子爵夫人は、優雅に薔薇を受け取ったが、その言葉に、一瞬だけ、顔の表情が固まった。
シャルロッテが子爵夫人が抱える「使用人への不当な重労働」という秘密を知っているのではないかと思ったからだ。
しかし彼女の目的は、子爵夫人の名誉を傷つけることではなく、疲弊している使用人たちを解放することだった。
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その直後、サロンの扉が開き、子爵夫人の屋敷の使いの者が、慌てて飛び込んできた。彼は、極度の疲労から、重要な慈善事業の書類を王城に持ってくるのを忘れたのだ。
子爵夫人は、公衆の面前で秘密が露呈することを恐れ、優雅な笑顔の裏で、激しい怒りの魔力を放った。
子爵夫人は、優雅な言葉で優しく叱ろうとしたが、その言葉を遮るように、シャルロッテの魔法が効いた。
シャルロッテは、光属性と風属性を応用し、子爵夫人の口から出ようとした「怒りの言葉の音の波動」を、一瞬だけ、「感謝と労い」の言葉の波動へと変換させた。
子爵夫人の口から、意図しない言葉が出た。
「ああ、感謝します、あなたの献身は、私にはもったいないわ……! すぐに休みなさい!」
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子爵夫人は、自分の口から出た言葉に、驚愕した。周囲の貴族たちは、子爵夫人の寛大さに、さらに称賛の声を上げた。
しかし、シャルロッテは、その静かな混乱の中で、子爵夫人の手を握り、光属性と共感魔法を応用した。
「ね、奥様。あなたの本当の心は、『感謝』を言いたかったんでしょう? 王族の義務はね、一番弱い人を、一番優しくすることだよ」
シャルロッテの純粋な慈愛は、子爵夫人の心に直接届いた。彼女は、名声という仮面よりも、純粋な感謝が、どれほど心を温めるかを知った。彼女は、その場で、疲弊している使用人をすぐに帰らせることを決断した。シャルに畏敬の思いを抱きながら……。
シャルロッテの純粋な愛は、大人の優雅な偽善を、「真の感謝」という温かい真実で打ち破り、不当に苦しむ人々の「解放」をもたらしたのだった。




