第百九十話「秘蔵の標本室と、王女の『異形な指のコレクション』」
その日の午後、マリアンネ王女は、王立学院の地下深くにある、王家秘蔵の『異形標本室』の鍵を、シャルロッテにだけ見せた。そこには、過去の魔法実験や、古代の呪いによって生まれた、異形な動植物の標本が、ホルマリン漬けや剥製として、静かに並べられていた。
「ここは、王族の誰もが、不吉なものとして、避けている場所よ」と、マリアンネは、冷たい美学をもって妹に語った。
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シャルロッテは、その薄暗い標本室を、何の恐怖もなく、まるで「個性的な芸術品の美術館」のように、目を輝かせて見て回った。
彼女の目が釘付けになったのは、巨大なガラスケースの中にある、「七本指の魔法生物」の、乾燥した、美しい標本の手だった。その指は、一本一本が長く、骨格の構造は奇妙だが、どこか優雅な曲線を描いている。
「わあ、お姉様。この手、とっても綺麗だよ!」
マリアンネは、驚愕した。誰もが「グロテスク」と断じる標本を、妹は「綺麗」と称賛したのだ。
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シャルロッテは、その七本指の標本に、「愛の欠如」という、深い悲しみの魔力を感知した。それは、異形な姿ゆえに、誰からも愛されず、「存在の価値」を否定された者の、切実な嘆きだった。
シャルロッテは、その悲しみを、「蒐集」という愛の行為で救うことにした。
シャルロッテは、マリアンネに、その七本指の標本を譲り受けることを懇願した。
「ね、お姉様。この子をね、私の可愛いコレクションに加えてあげるの! そうすれば、この子は、**『愛される価値がある』**って、わかるでしょう?」
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譲り受けた七本指の標本を、シャルロッテは、薔薇の塔の自室に持ち帰った。
彼女は、その標本を、豪華なベルベットの台座に置き、その七本の指の一つ一つに、光属性と変化魔法を融合させた。
彼女の魔法は、七本の指に、**「優雅で、可憐な、小さな花のブーケ」**を持たせた。乾燥した異形の指と、鮮やかな生命の花という、倒錯的で耽美な美学の融合だった。
「ね、これでいいの。異形はね、誰にも真似できない、最高のアクセサリーなんだよ!」
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マリアンネ王女は、妹の「異形への愛」の深さに、改めて驚愕した。
「シャルロッテは、美の基準を、**『普遍性』ではなく、『純粋な愛による個別の肯定』**に置いたわ。それは、私の知性を超える、究極の耽美主義よ」
アルベルト王子は、その標本を見て、優雅に頷いた。
「シャルロッテは、存在の価値とは、誰かの判断ではなく、**『愛されること』**そのものだと証明したのだな」
シャルロッテの純粋な愛は、異形の標本に、**「愛されるという、最高の美しさ」**をもたらしたのだった。




