第百八十四話「粘土のドーナツと、王女の『変わらない愛の形』」
その日の午後、マリアンネ王女は、粘土を使って、複雑な幾何学的なモデルを作り、その本質的な性質を探求していた。彼女の目の前には、穴が一つ開いた粘土のドーナツ型と、穴のない粘土のボール型が置かれていた。
「おかしいわ。この二つの形は、いくら伸ばしたり、縮めたりしても、穴の数という、最も大切な性質だけは変わらない。この『変わらない本質』は何を意味するのだろう」と、マリアンネは、論理の先に、深遠な謎を感じていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、研究室にやってきた。彼女は、マリアンネの困惑を見て、すぐにその「変わらない性質」の正体を悟った。
「ねえ、お姉様。このドーナツさん、私と兄様の愛と同じだよ!」
マリアンネはびっくりして、「どういうこと?」と尋ねた。
シャルロッテは、ドーナツ型の粘土を手に取った。そして、その粘土を、風属性魔法で、ユーモラスな、いびつな形に引き伸ばした。粘土は、奇妙に細長く、まるで紐のようになったが、真ん中の「穴」だけは、頑なに維持されたままだった。
「見て、お姉様! 形はね、怒ったり、泣いたりして、すぐ変わっちゃうでしょう?」
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そして、シャルロッテは、穴のないボール型の粘土を手に取った。そして、それを叩き潰し、薄い皿のような形に変えた。
「でもね、このボールさんは、絶対に穴が開かないの。だから、『秘密の欠けた部分』がないのよ」
シャルロッテは、マリアンネに、「穴が一つある」ことの、哲学的な意味を教えた。
「穴があるドーナツはね、誰かに、その穴を覗き込んでほしいの。そして、『私は、欠けているけど、それでも愛してね』って、お願いしてるの」
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そして、シャルロッテは、ドーナツの穴に、光属性と共感魔法を応用した。
「ね、お姉様。愛はね、この穴と同じだよ。形が変わっても、愛の『核』は、絶対に変わらないの。そして、欠点……穴……があるからこそ、誰かに優しく、繋がっていたいって思うの」
マリアンネは、妹の純粋な愛の哲学が、高度な幾何学の真理を、いとも簡単に解き明かしたことに、深く感動した。
「シャル。あなたが教えてくれたのは、『愛の位相幾何学』だわ。真の愛は、欠点があるからこそ、永続するのね」
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、欠点がある方が、みんなで助け合えて、可愛いでしょう?」
シャルロッテの純粋な愛の哲学は、冷たい論理の世界に、「不完全さこそ、愛の不変の形である」という、温かい真理をもたらしたのだった。




