第百八十一話「大食堂の『ドジな給仕』と、姫殿下の『不完全な愛の受容』」
その日の午後、王城の大食堂は、厳かな午後のティータイムを迎えていた。しかし、新しく配属された給仕の青年が、極度の緊張から、次々と失敗を繰り返し、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
彼は、優雅な姿勢を保とうとすればするほど、手が震え、ティーカップを倒しそうになり、最後には、王妃へのハーブティーを、間違えてルードヴィヒ国王の袖にこぼしてしまうという、致命的なミスを犯した。
青年は、顔面蒼白になり、「私の存在が、すべてを台無しにする」と、深い自己嫌悪と絶望に苛まれた。
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ルードヴィヒ国王は、怒るどころか、静かに笑った。彼は、娘の哲学の影響で、「失敗」という現象を、一種の愛らしいユーモアとして受け止め始めていたからだ。
しかし、給仕の青年は、自己嫌悪のあまり、その場から逃げ出そうとした。
シャルロッテは、モフモフを抱き、青年を追いかけた。彼女は、青年の持つ、「完璧でない自分は、愛される資格がない」という、悲しい思いを感知していた。
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シャルロッテは、青年の前に立ち、微笑んだ。
「ねえ、お兄さん。逃げちゃだめだよ」
青年は、涙ぐんだ。
「しかし、姫殿下……私のせいで、王様にご迷惑を……。私は、皆の笑いものです……この城の恥さらしです……」
シャルロッテは、その言葉に、強く首を横に振った。
「ううん、違うよ! あなたは、笑いものなんかじゃないよ!」
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シャルロッテは、青年の濡れた袖に、そっと触れた。そして、光属性と共感魔法を融合させた。
「ね、お兄さん。あなたはね、みんなに、迷惑をかけたでしょう? でもそれがね、『みんなに、笑顔になる機会を、プレゼントした』ってことなんだよ!」
シャルロッテの純粋な魔法は、青年の心に、「失敗(=迷惑)は、愛の交換のきっかけとなる」という、逆説的な真理を流し込んだ。
「みんな、お兄さんが、あんなに一生懸命だったから、微笑むことができたんだよ。笑うってね、愛を分けてもらったってことなの!」
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アルベルト王子は、その哲学に、深く感銘を受けた。
「シャルロッテの言う通りだ。彼の失敗は、我々が『完璧主義』という名の、冷たい緊張から解放されるための、愛らしい「触媒」だったのだ」
青年は、シャルロッテの純粋な愛の肯定によって、自己嫌悪の鎖から解放された。彼は、自分の失敗が、「ただのミス」ではなく、「愛という名の贈り物」になったことに気づいた。
青年は、再び大食堂に戻り、不器用だが、心からの笑顔で、一同に謝罪した。その笑顔は、彼自身の存在を、最大限に肯定していた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「ね、お兄さん。迷惑ってね、『愛を交換するための、最も大切な合図』かもしれないよね?」
シャルロッテの純粋な哲学は、失敗という闇の中に、「不完全さの肯定」という、最高の光をもたらしたのだった。




