第百七十四話「献上品のマカロンタワーと、モフモフの『嫉妬の周波数』」
その日の午後、薔薇の塔の居室は、祝祭のような賑わいを見せていた。シャルロッテ姫殿下の誕生日が近いこともあり、各国の諸侯や貴族から、競うように送られてきた豪華で愛らしい寄贈品で、部屋が埋め尽くされていたのだ。
エメラルドを散りばめた、小さなオルゴール。
フランス人形のような、精巧な陶器のドール。
そして、最も目を引くのは、パステルカラーの、天を突くほど高いマカロンタワーだった。
シャルロッテは、その絢爛豪華な「可愛い」の山に囲まれ、目を輝かせていた。
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しかし、その光景を、シャルロッテの足元で見ていたモフモフは、少しだけ面白くなかった。
「ミィ……」
モフモフの全身から、ごく微細な「嫉妬の周波数」が発せられていた。それは、「姫殿下の愛が、他の可愛いものに奪われてしまうのではないか」という、純粋で、切実な不安だった。
特に、マカロンタワーと、陶器のドールは、「人間が作った、最も完成された可愛さ」を持っており、モフモフは、自分の「ふわふわ」が、その人工的な美しさに負けるのではないかと恐れたのだ。
モフモフは、嫉妬のあまり、小さな、しかし確実な力で、シャルロッテのドレスの裾を、そっと引っ張り続けた。
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シャルロッテは、そのモフモフの「嫉妬の周波数」に、すぐに気づいた。彼女は、モフモフの純粋な不安が、可愛くて仕方なかった。
「ねえ、モフモフ。どうしたの? いつものあなたらしくないわよ?」
モフモフは、言葉を話せないため、ただシャルロッテの膝に乗り上げ、陶器のドールを睨みつけながら、喉の奥を力強く振動させた(※「あっちへ行け!」のゴロゴロ音)。
シャルロッテは、モフモフのその「不器用な愛の独占欲」に、心を射抜かれた。
「わあ、可愛い! モフモフ、あなた、嫉妬まで可愛いのね!」
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シャルロッテは、マカロンタワーには目もくれず、その場でモフモフを抱き上げた。
彼女は、モフモフを抱きしめながら、モフモフの耳元で、甘く囁いた。
「ね、モフモフ。あのドールも、マカロンも、確かに可愛いよ。でもね、ドールは、私を温めてくれないでしょう?」
シャルロッテは、モフモフの毛皮に、自分の頬を擦り付けた。
「あのドールは、私が動かしてあげないと、動けない。でもね、モフモフは、自分で、私の胸に飛び込んでくれる」
シャルロッテはさらにぎゅっとモフモフを抱いた。
「モフモフはね、冷たい宝石じゃなくて、温かい命なんだよ!」
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シャルロッテは、光属性と共感魔法を応用し、モフモフの心に、「あなたの愛は、誰にも奪えない」という、揺るぎない確信の波動を送った。
モフモフの嫉妬の周波数は、一瞬で、愛と安堵の温かい周波数へと変わり、彼の毛皮は、さらに一段と柔らかくなった。
シャルロッテは、モフモフの頭を優しく撫で、満面の笑顔で、最後の結論を告げた。
「だからね、モフモフ。ドールも、マカロンも、ユニコーンさんも、みんな可愛いけど、一番、世界で、宇宙で、可愛いのは、モフモフだよ!」
モフモフは、その言葉に、心から満足し、シャルロッテの頬に、感謝のキス……実際にはペロリとなめただけだが……をした。部屋に満ちた豪華な献上品は、二人の純粋な愛の前では、単なる背景と化したのだった。




