第百六十八話「城下町の債務と、王女の『金の重さの哲学』」
その日の午後、王城の執務室は、重い空気に満ちていた。アルベルト王子が、城下町のある有力な商人の抱える巨額の債務問題を検討していたのだ。その商人の破産は、多くの下請け業者や、貧しい職人たちの生活を脅かす、連鎖的な社会問題を引き起こす可能性があった。
「法と経済の論理に従えば、この商人を救う手立てはない。だが、彼の破産は、弱者を切り捨てることになる」と、アルベルトは、理想と現実の冷たい壁に直面していた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、兄の隣に座った。彼女の目には、その債務問題が、「金銭という名の、冷たい鎖」で、無数の人々の首を締め付けているように見えた。
「ねえ、兄様。お金って、どうして人を苦しめるの?」
シャルロッテは、兄の机の上に置かれた、光沢を放つ金貨の束を指さした。
「この金貨はね、誰かの笑顔を増やすためにあるのに、どうして誰かの涙を増やしてしまうの?」
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アルベルトは、妹の純粋な問いに、現実の冷たさを教えるべきか、迷った。
シャルロッテは、その金貨の束を手に取った。そして、土属性魔法を応用した。彼女の魔法は、金貨の「金銭的な価値」を操作するのではなく、金貨の「重さ」だけを、極めて微細に操作した。
「ね、兄様。この金貨を、みんなの笑顔の数だけ、重たくするね!」
シャルロッテの魔法は、金貨の「重さ」を、「金銭的な価値」から、「愛という、精神的な価値」へと変換する、ユーモラスな試みだった。アルベルトにはその意味がまだわからなかった。
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シャルロッテは、その「重くなった金貨」を、債務を抱える商人に会うアルベルトの手に握らせた。
アルベルトは、商人と対面した。商人は、破産を覚悟し、絶望的な顔をしていた。
アルベルトは、妹から託された金貨を、商人の机の上に置いた。金貨は、その精神的な「重さ」ゆえに、ドスンという、現実の重さ以上の音を立てた。
アルベルトは、商人に言った。
「この金貨は、王家の情けではない。これは、君の破産が、城下町の何人の人々の笑顔を奪うか、という重さだ。君は、金銭ではなく、人々の幸福に、これほどの負債を負っているのだ」
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商人は、その金貨の「精神的な重さ」に、心を打たれた。彼は、自分の破産が、単なる数字の問題ではなく、「人々の笑顔の崩壊」という、現実の悲劇に繋がっていることを悟った。彼は、債務から逃げるのではなく、「人々の笑顔」という富を取り戻すため、再建を決意した。
その日の夜、アルベルトは、妹に感謝を伝えた。
「シャル。君は、金銭という冷たい現実の中に、『人々の愛』という、最も尊い価値を見つけた。真の富とは、金貨の量ではなく、笑顔の数で測られるのだな」
シャルロッテの純粋な哲学は、冷たい社会の論理に、「富とは愛の集積である」という、温かい真理をもたらしたのだった。




