第百六十六話「図書館の赤い糸と、古書が招いた『悲劇的な幸運』」
その日の午後、王城の図書館は、マリアンネ王女の発見により、奇妙なパニックに陥っていた。図書館の誰も使わない古い書架の裏側で、大量の、極めて美しい深紅の絹糸が発見されたのだ。
「おかしいわ。この絹糸は、王城の備品ではない。そして、この糸は、特定の魔力を持つ古書と、規則的に結ばれている。まるで、誰かの運命を、この図書館で編み直そうとしているかのようだわ」と、マリアンネは、その謎めいた光景に、好奇心と同時に不安を抱いた。
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アルベルト王子は、その糸が、王室の秘密や、不穏な陰謀に関わるものではないかと警戒した。糸は、特定の貴族や、王城の使用人の名前が記された紙片に繋がっていたからだ。
「これは、まるで『運命の赤糸』だ。だが、その結び方が、ごく細い糸と、太い糸が不均衡に結ばれている。誰かの運命を、意図的に歪ませようとしているのではないか」と、アルベルトは、事態の深刻さを感じた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その謎めいた糸の結び目を、じっと見つめた。彼女の目には、その糸が、「悲劇的な結果」ではなく、「ユーモラスな皮肉」を運んでいることが見えていた。
「ねえ、お兄様、お姉様。この糸、全然怖くないよ。だって、結び方が、全部、間違ってるもの!」
シャルロッテは、光属性と共感魔法を応用し、糸の持つ「感情の波長」を読み取った。
その糸は、王城の若い女性たちが、密かに図書館で行っていた、「好きな人と結ばれたい」という、ごく他愛のない、しかし真剣な縁結びの儀式だった。しかし、彼女たちは、儀式の方法を誤り、「好きな人」ではなく、「自分にとって最も不必要な人」と結びつけてしまっていたのだ。
その結果、当然のごとく、糸で繋がれた人々は、「不運」に見舞われていた。例えば、ある騎士は、「仕事で失敗する令嬢」と結ばれ、そのせいで、「完璧主義」から解放されるという、皮肉な幸運を得ていたりさえした。
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シャルロッテは、そのユーモラスな真実を、兄姉たちに説明した。
「この糸はね、悪い運命じゃなくて、『本当は、あなたに一番必要なもの』を、連れてきてくれる、お節介な糸なんだよ!」
シャルロッテは、糸を解く代わりに、水属性魔法を応用し、糸の結び目に、「この結びつきが、ユーモラスで、面白いものになりますように」という、愛を込めた。
「ね、お姉様。人生の失敗はね、ユーモアで、一番可愛く乗り越えられるんだよ!」
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アルベルトとマリアンネは、その真実のあまりの「洒落た皮肉」に、呆然とした。彼らが恐れていた「陰謀」は、単なる「他愛のない、失敗した恋の魔法」だったのだ。
マリアンネは、「究極の悲劇は、究極のユーモアに裏打ちされているわね」と、新たな哲学的な発見に感銘を受けた。
王城の謎は、シャルロッテの純粋な知恵と、ユーモアという名の「愛の皮肉」によって、優雅に解明されたのだった。




