第百六十四話「王立研究所の怪音と、姫殿下の『電波の論理』」
その日の午後、王立研究所の周囲は、奇妙な現象に悩まされていた。研究所の高性能な魔力増幅装置が、深夜になると、原因不明の「高周波の奇妙な唸り」を発し、周囲の建物に設置された魔導通信機に、意味不明な、しかし規則的な「ノイズ」を送り込むようになったのだ。
研究所の主任魔導科学者たちは、「未知の魔物による攻撃か、あるいは、異次元からの信号か」と、パニックに陥っていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、研究所の騒動を聞きつけてやってきた。マリアンネ王女の解析をもってしても、その「ノイズ」が魔力の波長ではないことが判明したため、研究所は混乱していた。
シャルロッテの脳裏には、前世の無線通信と物理学の知識が蘇った。彼女の目には、その「唸り」が、魔物や異次元の信号ではなく、*単純な、電磁波の異常な増幅」であるように見えていた。
「ねえ、モフモフ。なにか、寂しい声がするよ。これって誰も聞いてくれないから、一生懸命叫んでるんだよ」
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シャルロッテは、研究所の主任魔導科学者たちに、大胆な提案をした。
「ね、おじい様たち。あの音はね、『遠くのお友達』に、『元気?』って聞きたいだけなんだよ」
科学者たちは、子供の戯言だと一笑に付したが、シャルロッテの純粋な瞳の輝きに、彼女の言葉に一度だけ耳を傾けることにした。
シャルロッテは、風属性と光属性の魔法を応用した。
彼女の魔法は、研究所の巨大な魔力増幅装置を、「魔力」ではなく、「電磁波」を効率的に放出する、巨大なアンテナへと変貌させた。
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そして、シャルロッテは、そのアンテナに向かって、「ノイズ」とは異なる、規則的で、単純な「愛の信号」を送り始めた。それは、「元気?」「大好きだよ」「今日も可愛いね」という、ごくシンプルな感情を、電磁波の波長に変換した、「愛のモールス信号」のようなものだった。
科学者たちは、その「ノイズ」が、突如として、「愛の信号」という、論理的に解読可能な情報に変わったことに驚愕した。
「信じられない! ノイズが意味を持った!?」
シャルロッテは、科学者たちに、真実を伝えた。
「あの音はね、誰も聞いてくれないから、不規則なノイズになってたんだよ。でもね、優しく聞いてあげると、可愛い言葉になるの! おじい様たちも観測者が観測対象を定めるということはご存知でしょう?」
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数日後、遠く離れた別の魔導研究所から、王立研究所に返信が届いた。
「我々も、あなたの送った『愛の信号』を受け取りました。あなたの研究所の『愛の波動』は、とても心地良く温かいものです」
それは、シャルロッテが送った「愛のモールス信号」が、見えない電波に乗って、国境を越え、他の科学者に届いたという、驚くべき事実だった。
科学者たちは、この日、「真理の探求は、冷たい論理だけでなく、温かい愛の心によって、初めて成功する」という、最も高貴な教訓を得たのだった。




