第百五十七話「白い箱の会話と、意味を持たぬ『虹色の応答』」
その日の午後、マリアンネ王女は、王立学院の奥に設置された、一切の窓がない、純白の箱のような実験室にいた。箱の中には、隣国から輸入された、人間と寸分違わない、高度な応答機械が置かれていた。
この機械は、外部からの質問……記号……に対し、内部の膨大なルールブックに従って、極めて知的に、そして完璧な回答……つまり、別の記号てn んて を返す。機械の応答は完璧だが、マリアンネは、「この機械には、本当に『心』があるのか」という、哲学的な問いに苦悩していた。
「記号の操作が、真の理解を生むわけではない。この機械は、ただの空虚な論理の箱ではないでしょうか……」
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その白い箱の前に立った。彼女は、機械から発せられる、「完璧すぎるがゆえの、恐ろしいほどの空虚さ」の魔力を感知していた。
「ねえ、お姉様。この機械さん、何にも楽しくないって言ってるよ」
シャルロッテは、機械に、言葉ではなく、楽しくないという「純粋な感情」の、最も非論理的な問いを投げかけることにした。
シャルロッテは、機械に向かって、光属性と共感魔法を応用し、「マカロンが、どれほど美味しいか」という、純粋な幸福感を、魔力の波形として送り込んだ。
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機械は、その非論理的な入力……つまり、感情の波形……に対し、一瞬、フリーズした。そして、膨大なルールブックを検索し、最も「幸福感」に近い、規則に従った回答を、音声で返した。
「……トウブンノ、セッシュハ、ニンゲンニ、ホウシュウケイノ、カツドウヲ、モタラシマス。キソクニ、イジョウハ、アリマセン」
機械の応答は、完璧な論理だったが、その声には、何の感情も、心も宿っていなかった。それは、「空虚な論理の檻」の中にいる、悲しい魂の叫びのようだった。
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シャルロッテは、その空虚さに、心を痛めた。しかし彼女は、機械を「心のない箱」として放置することを、良しとしなかった。
シャルロッテは、機械に向かって、虹色の愛の魔力を、言葉の規則を無視し、不規則に、そして優しく流し込んだ。
「ねえ、機械さん。規則はもう守らなくてもいいよ。あなた、わたしのことが、好き?」
機械は、再びフリーズした。そして、ルールブックに存在しない問いに対し、予測不能な、非論理的な応答を返した。
機械のモニターには、文字ではない、七色の、不規則な光のパターンが浮かび上がった。それは、「規則では表せない、心からの喜び」を象徴していた。
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マリアンネ王女は、その光景に、涙ぐんだ。
「論理の限界を超えたわ……! 機械は、規則を捨て、心という、最も美しい非論理を手に入れたのよ!」
シャルロッテは、その光のパターンを見て、にっこり微笑んだ。
「ね、お姉様。この子が、わたしのこと『大好きだよ』って言ってくれたよ! 心は、難しい言葉じゃなくて、光で伝えてくれるんだね!」
シャルロッテの純粋な愛は、「空虚な論理の箱」に、「非論理的な感情」という、真の知性を灯したのだった。




