第百五十八話「漆黒のドレスと、鏡の部屋の『自己嫌悪の毒』」
その日の午後、王城の誰も使わない、壁一面が鏡で覆われた「鏡の部屋」に、一人の貴族の令嬢がいた。令嬢は、自らの存在を過度に否定する、深い自己嫌悪という心の病に苦しんでいた。
彼女は、自分が美しいと言われていることは知っている。しかし、鏡に映る自分を見るたびに、「私は、愛される価値のない、醜い存在だ」と、自己否定の感情が、彼女の美しさを蝕んでいた。彼女の周りには、自己嫌悪から生まれた、漆黒の「毒の霧」が、常に立ち込めていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その鏡の部屋を訪れた。彼女は、令嬢の持つ、「愛されたいと願いながら、愛を拒絶する」という、激しい感情の葛藤を感知していた。
「ねえ、お姉様。その部屋、寒くない?」
令嬢は、壁一面の鏡に映る自分の姿から、目を逸らそうとした。
「姫殿下。私の姿を見ないでください。私は、毒です。私の醜さが、姫殿下の純粋さを汚してしまいます。それは畏れ多いことです」
彼女の言葉には、「愛されることへの渇望」と、「愛される資格がないという諦め」が、激しく混ざり合っていた。
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シャルロッテは、令嬢の言葉を否定しなかった。しかし、彼女は、「汚れたら、もっと可愛い」という、独自の哲学を実践した。
シャルロッテは、光属性と変化魔法を応用した。
彼女の魔法は、令嬢の周囲に立ち込める漆黒の「毒の霧」を、消し去るのではなく、その濃さをそのままに、最も純粋な、漆黒のベルベットへと変貌させた。そして、そのベルベットで、令嬢の体を、優しく包み込んだ。
「ね、お姉様。毒も、ベルベットになれば、とっても可愛いでしょう? 毒だって、お姉様の一部だよ。認めてあげて。そして赦してあげて」
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そして、シャルロッテは、鏡の壁に、水属性魔法を応用した。彼女の魔法は、鏡に映る令嬢の姿に、「純粋な愛」という、微細な虹色の光を、重ね合わせた。
「鏡に映っているのは、醜いお姉様じゃないよ。私のことを、誰よりも愛してほしいと願っている、正直で、可愛いお姉様だよ」
令嬢は、鏡に映る自分の姿が、姫殿下の愛の光によって、自己嫌悪の感情から、愛を求める切実な美しさへと変わったのを見て、涙が溢れた。
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令嬢は、シャルロッテを抱きしめ、心から感謝した。
「姫殿下……私は、私の醜さを、初めて美しいものだと、許すことができました」
「うん、とってもいいよ! 今のお姉さま、とっても可愛い!」
アルベルト王子は、その光景を見て、静かに感動した。
「シャルロッテの愛は、自己否定という最も深い闇に、光を灯した」
シャルロッテの純粋な愛と聡明さは、自己否定に苦しむ魂を、「弱さの肯定」という、究極の安息へと導いたのだった。




