第百五十六話「舞踏会の不協和音と、王女の『真実の布批評』」
その日の夜、王城の舞踏会は、きらびやかな衣装で溢れていた。しかし、その華やかさの裏で、イザベラ王女と、社交界のファッション評論家として名高い双子の貴族(ベール子爵とルージュ子爵)の間には、冷たい緊張が走っていた。
双子の貴族は、公の場では優雅だが、裏では、他人のファッションの欠点を鋭く指摘し、優雅な毒舌で知られていた。彼らは、舞踏会の衣装に、「本人の個性に合わない、借り物のエレガンス」が混じっていることに、強い不満を抱いていた。
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「見て、ベール。あの侯爵夫人のドレス、レースが過剰だわ。本人の魂が、レースの陰に隠れて、息苦しそうよ」
「ルージュ。まったくよ。まるで、予算を自慢するための広告塔だわ。ああ、真のエレガンスは、どこへ消えてしまったのかしら」
彼らの鋭い批評は、周囲の貴族たちを、不安と自己嫌悪に陥らせていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その批評の渦の中に飛び込んだ。彼女の目には、双子の貴族の「毒舌」の裏にある、「真実の美しさへの切実な憧れ」という、純粋な感情が見えていた。
「ねえ、お兄様たち。みんな、可哀想だよ」
「可哀想? 姫殿下。彼らは、自分の趣味で着ているのよ」と、ルージュ子爵が皮肉を込めて言った。
「ううん、違うよ!」
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シャルロッテは、光属性と変化魔法を応用した。彼女は、舞踏会の参加者の一人一人に、「その人の最も個性的で、内面が輝く色」を、ごく微細な光の輪郭として纏わせた。
そして、シャルロッテは、双子の貴族の前に、一人の地味なドレスの令嬢を連れてきた。その令嬢は、流行とは無縁だが、彼女の個性は、深みのある、優雅なインディゴブルーの光を放っていた。
「ね、お兄様たち。このお姉さんにはね、インディゴブルーが、一番可愛い色なの。でもね、誰も、その色に気づいてあげることができてないの」
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双子の貴族は、妹の魔法によって、その令嬢の「個性の真実の色」を視覚的に見て、驚愕した。
「な、なんて美しいインディゴブルーだ! まるで、夜の湖の静寂だわ!」
「そして、このドレス! この地味なドレスこそ、この色の最高の額縁だわ!」
彼らは、批判の言葉を忘れ、令嬢のファッションを、心から褒めた。令嬢は、自分の個性を肯定され、自信に満ちた笑顔を浮かべた。
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シャルロッテは、双子の貴族に、にっこり微笑んだ。
「ね、お兄様たち。『毒舌』はね、誰かを傷つけるためにあるんじゃなくて、一番可愛い真実を見つけるための、魔法の針なのよ。その針で、真実の布だけを選び出して縫ってあげるの!」
双子の貴族は、妹の純粋な愛と、その鋭い知恵に、心を打たれた。
「私たちは、愛の針の使い道を、間違えていたわ」と、ルージュ子爵は涙ぐんだ。
その日の舞踏会は、シャルロッテの「真実の批評」によって、優雅な毒舌が、温かい愛の批評へと変わる、愛に満ちた場所となったのだった。




