第百四十三話「銀河の鏡と、王女の『95パーセントの愛』」
その日の深夜、マリアンネ王女は、王城の屋根に設置された、最新の魔力望遠鏡を覗いていた。彼女は、王国の魔力と物質の分布図を作成していたが、その計算結果に、深い混乱を覚えていた。
「おかしいわ。目に見える物質と魔力の総量を計算しても、世界の法則を動かす力の、たった5パーセントにしかならない。残りの95パーセントは、どこへ消えたの?」
マリアンネの描いた運行図には、巨大な空白が残されていた。論理と既知の法則が、世界の大部分を説明できないという事実に、彼女は強い無力感を覚えていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、屋根にやってきた。マリアンネの顔には、「未知の恐怖」という、冷たい影が落ちていた。
「お姉様。そんなに難しいこと考えてると、お顔が怖くなっちゃうよ?」
マリアンネは、妹に、自分の苦悩を説明した。
「シャル。私たちが知っている世界は、たったの5パーセントなのよ。残りの95パーセントは、目に見えない、名前もない、冷たい未知の力が支配しているのよ。私はそれが怖くてたまらないわ」
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シャルロッテは、その言葉に、にっこり微笑んだ。
「ふーん。じゃあ、お姉様。95パーセントも、可愛いってことじゃない!」
「え?」
シャルロッテは、光属性魔法を応用し、夜空に浮かぶ銀河を、マリアンネに見せた。
「見て。確かに星は、たったの5パーセント。でもね、残りの95パーセントは、『誰にも気づかれないように、そっと星を支えている、優しい、見えない力』なんだよ」
「その見えない力は、意地悪じゃないよ。だって、意地悪だったら、星なんて、とっくに壊しちゃってるもの!」
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シャルロッテの純粋な視点は、未知を「恐怖」として捉えるのではなく、「愛という、無名の奉仕」として再定義した。
シャルロッテは、マリアンネの手を取り、闇属性の共感魔法を応用した。彼女の魔法は、マリアンネに、「見えない95パーセントの力」の波動を、感覚的に伝えた。その波動は、冷たく不気味なものではなく、「静かで、広大で、すべてを包み込む、揺るぎない温かさ」を持っていた。それは胎児が感じる、羊水の優しい温かさに似ていた。
そう、そこにあるのは「世界は、そのほとんどを、名も知らぬ愛によって支えられている」という、深い真実だった。
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マリアンネは、涙ぐんだ。彼女の論理と知性は、この単純な事実に、頭を垂れた。
「シャル……そうね……私たちが知るべきは、その力の正体ではなく、その力が、なぜ世界を破壊せずに、優しく支えているのか、という、愛の論理なのね」
マリアンネは、研究ノートの運行図の巨大な空白に、虹色の光の点を一つ描いた。
『宇宙の大部分は、純粋な愛と、無名の奉仕によって構成されている』
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、95パーセントも、愛で満ちている方が、ずっと可愛いでしょう?」
シャルロッテの「可愛い」の哲学は、人間の知性が直面した「未知の恐怖」を、「無償の愛」という、最も温かい希望の光で包み込んだのだった。




