第百四十二話「午後の『灰色の会話』と、感情を写す虹色の糸」
その日の午後、王城のサロンで、外交官の貴族たちが集まり、最近の貿易交渉の難航について話し合っていた。彼らの会話は、終始、「灰色」だった。失敗の可能性、リスクの増大、そして、誰もが安全策に固執する停滞感。
「まったく、この状況は薄い青のようだ。どうにも、憂鬱で、先に進まない」と、ある伯爵が、母国の古い表現を引用して、嘆いた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、その会話を聞いていた。彼女の目には、その「薄い青」という言葉が、実際には「自己保身という名の、くすんだ茶色」の感情を隠していることが見えていた。
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シャルロッテは、その「色と感情の結びつき」が、さまざまな国の固定観念によって、歪んでいることに気づいた。彼女の哲学は、「色は、感情の真実を語る、最も純粋な言葉」であり、文化的な縛りから解放されるべきだと思っていた。
「ねえ、伯爵様。薄い青は、憂鬱の色じゃないよ」
伯爵は、五歳の姫殿下の言葉に、笑みを浮かべた。
「では、姫殿下。あなたにとって、『薄い青』は何色ですか?」
シャルロッテは、そう問われ、その場で、土属性と光属性を融合させた魔法を応用した。
彼女は、テーブルに置かれた白いナプキンを、「感情のキャンバス」へと変貌させた。そして、光の粒子を使い、ナプキンに、「薄い青」が持つ、真の感情の色彩を映し出し始めた。
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ナプキンに映し出された薄い青は、遠い空の広がり、静寂な湖の深さ、そして、誰にも言えないが、確固たる『未来への希望』という、複雑で、しかし美しい色彩だった。
シャルロッテは、その光の色彩を指さした。
「薄い青はね、『今は動けないけど、心は、遠い希望の光を見ている』って、教えてくれる、勇気の前の静かな色なの。憂鬱なんかじゃないよ!」
そして、シャルロッテは、貴族たちの会話の「灰色」を見て、付け加えた。
「伯爵様たちの会話が、くすんだ茶色なのはね、お互いを信じられない、不安の色が混ざっているからだよ」
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その純粋な指摘は、貴族たちの心を鋭く貫いた。彼らは、色という共通の言語が、自分たちの「薄い青(つまり憂鬱)」という言葉の裏に隠された真の感情(つまり不安と不信)を暴いたことに、驚愕した。
マリアンネ王女は、妹の言葉を「言語人類学的な革命」と捉え、すぐに研究ノートに記録した。
「シャルロッテは、言語が定める感情の枠組みを、純粋な感性で乗り越えたわ! みんな、この偉大さがわかる!?」
アルベルト王子は、妹の知恵を、外交に活かすことを決意した。
「我々は、言葉で議論するのではない。感情の真実の色を、相手に伝えるのだ」
シャルロッテの「可愛い」という哲学は、色彩と感情の間に敷かれた文化の壁を打ち破り、「真実の感情は、最もシンプルで、純粋な色彩を持つ」という、新しい真理をもたらしたのだった。




