第百三十九話「城の時計塔と、螺旋階段の『孤独な人形師』」
その日の夜、王城の誰も使わない、古い時計塔の頂上には、奇妙な光が灯っていた。塔全体は、煤と埃で覆われ、風が吹くたびに、歯車が軋むような、不気味な金属音が響いていた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、その時計塔を見上げていた。彼女の目には、その塔が、「孤独な心を持つ、巨大な機械の巨人」のように見えた。
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時計塔の中の、螺旋階段を登ると、最上階には、一人の痩せた、目の周りに隈を作った、奇妙な青年が座り込んでいた。彼は、時計塔の壊れた巨大な機構に囲まれ、まるで自分もその機械の一部のように、黙々と、木と真鍮で作られた、小さな人形を修理していた。
青年は、かつて王立学院で天才と呼ばれた機械技師だったが、人との交流を嫌い、壊れた機械と人形だけを愛する、孤独な異形となっていた。
「わあ、可愛い……この人形、変に目が丸くて、なんだか悲しそうだよ」
シャルロッテは、青年の隣に、そっと座った。青年は、驚いて顔を上げたが、シャルロッテの純粋な瞳に、何も言えなかった。
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シャルロッテは、青年が修理している人形を手に取った。人形は、片足が欠け、服も破れている。
青年は、その人形について語り始めた。彼の声は、静かだが、人形への愛は、熱い。
「この人形は、完璧ではない。壊れている。だが、その不完全さが、私には、最も美しい」
青年は、「不完全さ」の中に、自分の孤独な心を映していたのだ。
シャルロッテは、青年の美学を否定しなかった。
「そうだね。完璧じゃない方が、愛される隙間があるもん!」
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シャルロッテは、欠けた片足を見て、土属性魔法を応用した。彼女の魔法は、新しい足を生成するのではなく、欠けた部分に、木材の繊維が、ごく微細に再生する、蜘蛛の巣のような、精巧で美しい木目の模様を施した。
そして、彼女は、光属性と風属性の魔法を融合させた。その魔法は、人形に、「壊れていても、優雅に舞う」という、幻影的な動きを与えた。
人形は、欠けた片足で、青年の手のひらの上で、静かに、優雅に舞った。
青年は、その幻影の舞踏を見て、涙ぐんだ。
「これは……これは、私が夢見た、『孤独な美学』が、愛によって報われる光景だ……」
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シャルロッテは、青年を抱きしめた。
「ね、もう大丈夫だよ。あなたの不完全な美しさは、誰にも笑われないよ。だって、私が一番可愛いって、知ってるもん!」
王城の時計塔は、その夜、不気味な金属音ではなく、小さな笑い声と、愛に満ちた、温かい光を放った。シャルロッテの純粋な慈愛は、ゴシック的な闇と、孤独な美学の中に、ユーモアと、真の幸福という、希望の光をもたらしたのだった。




