第百三十一話「偽りの銀髪と、いたずら妖怪の『可愛い叱り方』」
その日の王城は、朝から奇妙な混乱に陥っていた。
「姫殿下! 廊下で遊ぶのは、いけません! はしたないですぞ!」と、執事オスカーが声を上げると、目の前のシャルロッテは、「うるさい! 今日は、このお城のお菓子を全部一人で食べるんだ!」と、普段のシャルロッテからは考えられない、乱暴な言葉を返した。
その直後、本物のシャルロッテが、モフモフを抱いて、別の廊下から現れた。
「おはよう、オスカー! 今日の紅茶も美味しかったね!」
「!?」
オスカーは眼前の光景に目を白黒させた。王城に、二人のシャルロッテが出現したのだ。
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王族たちは、大騒ぎになった。
「どっちが本物だ!?」と、ルードヴィヒ国王は頭を抱え、アルベルトは、二人の魔力パターンを分析しようとするが、偽物の魔力は、本物と寸分違わないほど精巧に作られており、判別がつかない。
偽物の正体は、古くから城に住み着いていた、いたずら好きな『影法師』という名の妖怪だった。彼は、王族の愛情が集中するシャルロッテの存在に嫉妬し、その姿に化けて、混乱を楽しんでいたのだ。
偽のシャルロッテは、王城で次々といたずらを仕掛けた。高価なタペストリーに落書きをしたり、フリードリヒの剣の鞘をキャンディで満たしたり、マリアンネの研究ノートに、意味不明な「ゲラゲラ」という文字を書き込んだりした。
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本物のシャルロッテは、その偽の自分の仕業の根底にあるものを、すぐに察した。
彼女は、偽の自分が、単なる悪意ではなく、「誰にも見てもらえない寂しさ」からいたずらをしていることを感じ取ったのあ。
「ねえ、偽物のわたし。もう、おしまいだよ」
シャルロッテは、偽物のシャルロッテが最後に隠れた、広間の隅の暗がりへと向かった。
偽物は、その場で本来の姿である、黒い影のような、小さな妖怪へと姿を現した。
シャルロッテは笑顔だったが、その発するオーラはいつもと違う、見るものが気圧されるものだった。
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妖怪は、怯えて震えていたが、シャルロッテは、彼を責めることはしなかった。
「ねえ、あなた。いたずらは、全然可愛くないよ。だって、みんなが悲しい顔をするでしょう?」
シャルロッテは、妖怪を叱るのではなく、諭した。
「あなた、誰かに、笑ってほしかったんでしょう? でもね、誰かを笑わせるには、自分も笑わないとだめなんだよ」
そして、シャルロッテは、モフモフを抱き、妖怪にそっと差し出した。
「ね、この子みたいに、優しくて、ふわふわなことをすると、みんな、笑ってくれるよ」
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妖怪は、シャルロッテの純粋な優しさと、モフモフの温かさに触れ、生まれて初めて、「愛される」という感情を知った。彼は、いたずらを悔い、小さく泣いた。
「姫殿下……私は、ただ、寂しかったのです」
シャルロッテは、その小さな妖怪を抱きしめた。
「大丈夫。寂しくないよ。これからは、わたしが、あなたのお友達になってあげる!」
その日の午後、王城の騒動は、シャルロッテの純粋な愛と、優しさの魔法によって、静かに収束した。妖怪は、王城の「影の守り人」として、二度といたずらをすることなく、シャルロッテの愛の輪の中で、静かに生きることを選んだのだった。




