第百二十二話「夜の王城と、空中に響く『無線の調べ』」
その日の深夜、王城は深い闇に包まれていた。しかし、シャルロッテは、一人ベッドで目を覚ましていた。彼女は、王城の空気が、微細な、しかし規則正しい「振動」に満たされているのを感じていた。それは、魔力ではない、「電磁気」という見えない力の波動だった。この世界の人々にはまだ知られていない力だったが、シャルロッテは前世で電磁気のことを詳しく勉強していたのだ。
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シャルロッテが、この「見えない力」に気づいたのは、理由があった。最近、マリアンネ王女の魔法実験や、フリードリヒ王子の剣の強化魔法が、以前よりも効率が悪いという小さな問題が続いていたのだ。
シャルロッテの脳裏には、前世の物理学の知識が蘇った。彼女の目には、この「見えない力」が、魔法の波長と干渉し、無意識に効率を下げている可能性が大きいことが見えていた。
「いけない! 見えない力が、みんなの頑張りを邪魔してる! こんなの、全然可愛くない!」
シャルロッテは、「見えない力の存在」を可視化し、その干渉を解消する必要があるという、彼女らしい利他的な動機で、行動を開始した。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、古い実験棟へと向かった。実験棟には、マリアンネが研究用に残していった、巨大な魔力増幅コイルが置かれている。
シャルロッテは、コイルの前に立ち、光属性と風属性の魔法を融合させた。
彼女の虹色の魔力は、コイルに注ぎ込まれると、コイルは、激しく、しかし規則正しく、銀色の火花を放ち始めた。それは、「交流電流」という見えない力を増幅させた証拠だった。
シャルロッテは、「電磁気的な波動」を、空気の振動へと変換する、複雑な魔力操作を行い、実験棟の周囲には、突然、幽玄で、未来的なメロディが響き始めた。
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そのメロディは、王城の建物を透過し、王族たちの寝室にも届いた。
アルベルト王子は、そのメロディの論理的な完璧さと、空気が振動する異様な現象に驚愕した。
マリアンネ王女は、自分の研究室の魔力解析装置の表示を見て、青ざめた。装置は、「空気中を、魔力とは異なる、未知のエネルギーが満たしている」という結果を示していた。
「まさか! この未知のエネルギーが、私の魔法に干渉していたというの!?」
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夜明け前、シャルロッテは、実験を終えた。彼女の元に駆けつけたアルベルトとマリアンネは、その原理を尋ねた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「ね、お姉様。あれはね、『見えないのに、みんなの頑張りを邪魔する、意地悪な力』だったんだよ。でもね、可愛い音楽にしてあげたら、もう、邪魔しなくなったよ!」
マリアンネは、妹の純粋な動機と、その知的な解決策に、深く感銘を受けた。
「シャル。あなたは、この王国の科学の常識を覆した。そして、その目的は、ただ『みんなが気持ちよく魔法を使えるように』するためだなんて……」
シャルロッテの純粋な「可愛い」の哲学は、見えない科学の真理を、「愛という名の、干渉されない、最高のエネルギー」へと変貌させたのだった。




