第百四話「秋の木の上の猿と、王女の『見栄の蜜』」
その年の秋、王城の果樹園では、収穫を前に、ある問題が起こっていた。
一匹の若い猿が、果樹園の最も高い木の上で、収穫期ではない青い果実を掴み、降りてこようとしなかったのだ。その猿は、青い果実を自慢げに掲げ、下にいる他の動物たちや庭師たちを、愚かだと嘲笑っていた。
「見てみろ! 私は、お前たちには届かない、この貴重な果実を俺は持っているぞ!」
猿は、「誰よりも早く、誰よりも高い場所で、珍しいものを手に入れること」こそが、最高の知恵だと信じていた。庭師たちが猿を追い払おうとしても、猿は木の上から、石を投げつけるばかりで、誰も手を出せないでいた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その木の前に立った。彼女は、猿の持つ青い果実が、実際には酸っぱくて食べられない、何の価値もない果実であることを知っていた。猿は、その果実の「見栄え」と「高さ」だけに価値を見出していたのだ。
シャルロッテは、猿に、直接説得を試みることはしなかった。彼女の「可愛い」の哲学は、相手の愚かさを否定せず、自ら気づかせるという方法をとる。
「ねえ、モフモフ。猿さんの見栄っ張りにも困ったものよね」
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シャルロッテは、水属性魔法を応用し、果樹園の地面に、色鮮やかな、甘い蜜の池を出現させた。蜜の池からは、極上の甘い香りが立ち上り、周囲の動物たちを誘惑した。
そして、シャルロッテは、蜜の池の真ん中に、土属性魔法で、王城の紋章をかたどった、小さな金のメダルを出現させた。メダルは、「誰よりも甘い蜜を見つけた者への、最高の栄誉」を象徴していた。
「わあ! 見て、モフモフ! 美味しいものが落ちてるわよ!」
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高い木の上にいた猿は、その光景を見て、嘲笑した。
「ふん! なんと愚かな! 最高の栄誉は、この高い場所にある果実にあるというのに、あんな汚い地面の蜜に群がるとは!」
しかし、蜜の香りは、次第に猿の空腹と、「誰よりも甘いものを味わいたい」という、本能的な欲望を刺激した。猿は、警戒しながら、木の上の青い果実と、地上の蜜の池を、交互に見つめ始めた。
そして猿は、ついに「最高の栄誉」という見栄よりも、「本能的な欲望」に負け、青い果実を放り捨て、木から降りてきた。
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猿が地面に降りた瞬間、王城の庭師たちが猿を捕らえ、果樹園から追い出した。
シャルロッテは、猿が放り投げた、何の価値もない青い果実を手に取った。
「ね、モフモフ。本当の知恵って、誰かに自慢するためのものではなくて、自分を本当に幸せにしてくれるものを選ぶことなんだよね」
その日の午後、庭園の動物たちは、シャルロッテの知恵によって出現した蜜の池で、甘い蜜を味わい、心から幸せになった。シャルロッテの「可愛い」の哲学は、「見栄や虚飾」ではなく、「実質的な幸福」を選ぶことの価値を、ユーモラスな形で示したのだった。




