第百三話「古城の泉と、苔むした『カエルの王子の憂鬱』」
その日の午後、シャルロッテとモフモフは、城の敷地の外れにある、もう使われていない古城の廃墟を訪れていた。古城の中庭には、苔むした石造りの泉があり、その水面は薄暗く、静まり返っていた。
泉の縁には、一匹の大きなカエルが座っていた。そのカエルは、他のカエルとは違い、目が深く、どこか人間のような憂鬱を湛えていた。
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シャルロッテは、そのカエルを見て、すぐに異変を察した。
「ねえ、このカエルさん、悲しい魔法にかかってるよ」
シャルロッテは、光属性と共感魔法を応用し、カエルの心に語りかけた。すると、カエルの心から、「愛する人に、その醜い姿を怖がられた」という、深く、呪いのような悲しみが伝わってきた。
カエルは、かつて、王族に連なる美しい青年であったが、失恋の悲しみから、森の魔女の呪いを受け、醜いカエルに変えられてしまったのだ。そして、呪いを解くには、「醜い姿のまま、純粋な愛のキスを受けること」が条件とされていた。
しかし、その醜い姿に、誰も近づこうとしなかった。
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シャルロッテは、カエルを抱き上げようとはしなかった。彼女の「可愛い」の哲学は、相手の尊厳を傷つけることを許さない。
「ねえ、カエルさん。あなたは、醜くないよ。だって、あなたの心は、悲しいけど、すごく優しい光があるから」
シャルロッテは、カエルの頭に、そっと、虹色の、小さな花の冠を置いた。それは、変化魔法を応用し、カエルの持つ「優しさの光」を、形にしたものだった。
「ね、あなたは、『優しいお花の王子様』だよ!」
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そして、シャルロッテは、カエルに、キスではなく、自分の温かい手のひらを、そっと、カエルの背中に触れさせた。彼女の指先から、光属性の「無条件の肯定」の魔力が、カエルの体へと流れ込んだ。
呪いを解く条件は「純粋な愛のキス」だったが、シャルロッテの「キス以上の、純粋な愛の肯定」の魔法は、その呪いの根源である「自己否定の悲しみ」を打ち破った。
カエルの体から、緑色の煙が立ち上り、カエルは、元の優雅で美しい青年の姿に戻った。
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青年は、自分の手のひらを見つめ、涙ぐんだ。
「私は、自分の醜さを憎んでいた。しかし、姫殿下は、その醜い姿を、『優しいお花の王子様』だと、肯定してくださった……」
青年は、シャルロッテに深く感謝し、彼女の前に跪いた。
シャルロッテは、青年を立ち上がらせた。
「もう大丈夫だよ。でもね、あなたは、醜いカエルさんの時も、可愛かったよ!」
シャルロッテの純粋な愛は、魔法の呪いと、それ以上の心の悲しみを解き放った。古城の泉は、この日、「純粋な愛の肯定が、最も強い魔法である」という、新しい教訓の場所となった。




