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9.道理と感情論の比重



 ここで問題となるのが私の家の現在の状況だ。簡単に説明…は、少々複雑なので難しいけれど。先程軽く触れたが、今でこそ婿の父を当主としていても家名を継ぐのは本来、母の役割。


 貴族の中では珍しく天涯孤独の両親を持つ彼女の母親は、母が幼い頃に病で亡くなった。唯一の肉親である父親も、彼女が成人を迎えるまで耐えていたかのように、母が十五になって間もなく、妻を後追いするような形で病を患い、この世を去ってしまったのだ。彼女に残された選択肢は、相続した財産に群がる者を牽制し続けるか、信用できる相手との政略結婚。没落するのも時間の問題と、陰で囁く悪意にさえ追い詰められている母へ、救いの手を差し伸べたのは、大方の予想通り父だった。幼馴染みという立場に、相思相愛である彼女との間に立ち塞がった障害が、長男の責務といえる彼の跡取り問題と、母の方が家柄的に上という身分差だった――なんて事情は蛇足だろう。それまで息を潜め、力を蓄えていた父の手によって、一気に展開がひっくり返ってしまったらしい。その華麗な早業に惚れ直したという、熱っぽい語り口での乙女発言は、今も変わらず彼女の思い出話の定番なのだ。


 そんな訳で、高い身分故の煩わしさと共に、しっかりとした地盤もないのが、我が家の現状である。



 力ある後ろ楯が存在しないのは、やっぱり心許なくて。いざという時、など考えたくもないが、すがれる藁の有無は大事だと思う。早計かもしれない。だが、権力者と結婚して血縁関係になるというのは、即効性の高い解決策である。そんな事情まで把握しているからこその招待状、なんだろう。此方の利点が明白で、彼方にも利点はあった。


 下手に有力貴族の令嬢を皇帝陛下に嫁がせては、様々な点で支障を及ぼす。ましてや、選り好みの激しい彼の皇帝からの指示ではない。恐らく側近たちが考えた、跡取り問題解決の打開案だ。皇帝陛下好みな皇妃を見つけるまでの繋ぎとして。そんな立場を納得する令嬢なんて、ねぇ?真実を知らなければ良いのかもしれない。だけど話に聞く限り、あの皇帝は最初から宣言してしまいそうだ。嫌々娶る、子を成せばお役御免(本人はともかく、親族に後見人となれるだけの力があれば、別に支障はないだろうが)の妾妃だと。適材適所、私向き。ここまでの情報を、私のような小娘が有しているとは、想像し得ないだろうし、競争率も限りなく高いけれど、目指してみる価値はあると思う。


 十五年という長い間、家族という幸福を与えられ、何不自由なく過ごさせて貰ったのだ。恩返しの一つぐらいしたいではないか。



 父も母も、そんな事は望んでいないだろう。普段の言動や性格からして、自分たちの子供も純粋に想い合う相手と結婚する事を願っているようだ。だからこれは、自己満足でしかない。ある意味、親孝行どころか親不孝とさえ言える。しかも狙う標的が皇帝陛下。無謀で不毛だと、自覚済み。


 実際のところ、バニラにしてみれば、皇帝などと大それた人物じゃなくても、それなりの相手なら、誰でも良かった。愛人は無意味なので論外だが、後妻なり二番、三番目の妻とかだって大歓迎。そう考えて色々と候補を探していたのだけれど、結果は空振りで惨敗。条件に当てはまる人物もいるにはいたが、どうやっても接点を作るのは不可能だったり、私の力不足――――いやバニラには、どんな(二回り以上の年齢差があろうと、好色家で危ない趣味をお持ちと噂されてようと※ただし生命の危機に直結する内容は除く)相手であっても、全然余裕だと妙な自信さえある。


「あのカミサマの目的って…私への嫌がらせ??」


 そう、バニラが疑心暗鬼に陥る程に、元・動物率が高くなければ。カラスや毒ヘビ、ハイエナと、ウサギ時代は出くわさなかったにも関わらず、見事な天敵揃い。外見から察せれる者もいれば、全く共通点がない者(でも何故か元・動物の彼らは皆、見目が一般的美醜感覚において、平均値を上回っていた。んん??)もいたり。しかし総じて、どうしてか私には本来……いわゆる前世の姿が、分かってしまうのだ。



 ありがた迷惑、極まりない。当時は生きて行く上で必要不可欠だった、生存本能と言うべき生理的嫌悪感が邪魔をし、とても家族の目を欺ける程、彼を愛している演技など出来ないと、困った事に確信できる。その点、まだ見ぬ皇帝陛下が万が一、元・動物だったとしても相手は国のトップ。多少顔が引きつったって、緊張してるからだと誤魔化せるだろう。冷や汗をかこうが、鳥肌が立とうが、思わず逃げ(…)出そうが問題ない、のだ。……多分。


 そもそも、この世界には何故こうも前世が動物、という存在が多いのか。――もう身近に三人いるのだ。この内の一人、何を隠そう


「(噂してないのに。想像だけでも影ってコト?)」


バンッと音をたて、勢いよく開いた扉から、部屋に飛び込んできた彼は


「ああっ僕の可愛いバニラ!遅くなってごめんね??お誕生日おめでとう」


プレゼントだよ(語尾には間違いなくハートマークが乱舞しているだろう)と、両腕に抱えていた二体のぬいぐるみ、それから、たっぷりのリボンで飾られた大きな箱を差し出してくる青年は


「ありがとう。とっても嬉しいわ。でも、ノックはしてね?レオ兄様」


二度目の生で、兄弟だった元・ウサギ。私、バニラの実兄、その人である。


登場したのは、期待を完璧に裏切り、バニラ兄でしたΣ(・д・;)この方も相当イタタな方ですけどね?トーゼンしすこん。次回は兄と…もう一匹(こ、今度こそ)出せれば出したい(弱)


当初は脱兎の如く逃走し、他国で特技を生かして働き、評判を聞いた○○様に拉致された場面から物語が始まる予定だったのですが…??なんか全然違う展開になって、る?予定は未定、素敵な言葉だと思います♪

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