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# 第六章 南へ(後篇)

# 第六章 南へ(後篇)


ソーンミアという名の町だった──小さく、城壁に囲まれた、道が一旦立ち止まるために存在しているような場所。


宿屋は広場の角にあった。


木の梁。すでに焚かれている火。シチューと古いエールの匂い。


セバスチャンとレインは、角のテーブルについた。


店員が、頼まれる前から黒いエールのマグを二つと、根菜の炙り焼きと塩漬け肉の皿を持ってきた。


セバスチャンは飲んだ。


たくさん。


レインは自分のマグの縁の向こうから、それを見ていた。


「今日はここに泊まりたかったってわけか」


セバスチャンはすぐには答えなかった。


もう一杯飲んだ。


「今、頭がぐちゃぐちゃなんだ」マグを思ったより強く置いた。「次に何をすればいいのか、わからない」


火を見た。


「人生って、クソだな」


(昨日は、何も変えられないと思ってた)


(今日は、俺がいない間に全部もう変わってしまったみたいに見える)


コートから煙草を取り出した。


火をつける。


長く吸い込んだ。


「もう知るか」


立ち上がった。


扉へ向かって歩き始める。


「おい──待て──」


レインは金貨をいくつかテーブルに置いた。


追いかけて出た。


---


「どこ行くんだよ」レインが広場で追いついた。「行かなきゃならないんだぞ」


セバスチャンは歩き続けた。


「シャストリンが攻めてきてるんだ」レインの声が低くなる。「皇太子が今、適当な町をふらふら歩いてていいわけないだろ」


「あのなレイン」


セバスチャンが足を止めた。


「俺は皇太子の資格なんてない」


「そんなクソみたいなこと言うな」レインが彼の腕をつかんだ。引き戻す。「行くぞ」


(どうやって説明すればいい)


(俺は、あいつが思ってる完璧な皇太子セバスチャン・ブラックウェルじゃない)


(俺は中村蓮だ)


---


少し離れた井戸の影で、一人の男が、じっと立っていた。


聞いていた。


「皇太子か」その声は静かで、面白がっていた。「シャストリンの襲撃」


一瞬の間。


「面白いな」


---


レインはもう何も言わずに、セバスチャンを宿屋へ引き戻した。階段を上がり、部屋の中へ。


ベッドに放り投げた。


内側から鍵をかけた。


「少し寝てろ」金貨袋をつかむ。「すぐ戻る」


出ていった。


セバスチャンは天井を見上げていた。


(レインは、光に似せて書いた)


(同じ頑固さ。同じ、行きたくないところへ引っ張っていくやり方。部屋で一人、ぐるぐる考え込ませてくれない、同じ性格)


目を閉じた。


---


レインは町を歩き、必要な物を探していた。


干し肉。水袋をもう一つ。あと二日、馬の上で過ごせるもの。


---


広場にいた男が、宿屋に入ってきた。


鍵を持っていた。


誰も、どこで手に入れたか聞かなかった。


静かに階段を上がる。音もなく扉を開けた。


セバスチャンは眠っていた。


男は戸口で一瞬、立ち止まった。


それから中へ入った。


外套を外した。


手を伸ばす。指が、セバスチャンの顔に近づいていく。


セバスチャンの手が、それが触れる前にその手首をつかんだ。


セバスチャンが、寝返るように振り向いた。


目はまだ半分閉じている。


上にいた男は、一瞬止まった。


それから、ゆっくりと、その横に寝そべった。


---


早朝の光の中で、セバスチャンが眠っているのを見つめながら、彼女はそこに留まった。


彼の横に。


---


レインは市場で、二種類の干し肉のどちらにするか悩んでいた時、後ろの会話が耳に入った。


「──皇帝自らヴェルドレイクへ軍を率いていくらしいぞ」


「でも皇太子がもうヴェルドレイクの件は片付けたんじゃなかったか」


「シャストリンが攻めたのかもな」肩をすくめる。「ヴェルドレイクは結局あいつらに加担してたんだから。それが今回の発端かもしれない」


「ああ」別の男が頷く。「それなら筋が通る」


レインは表情を変えなかった。肉の代金を払った。


(シャストリンが攻めたことは、もう知れてるのか)


(竜のことはまだ知らない。あれが何なのか、本当にはまだわかってない)


(いい。もう少しその状態のままでいてくれ)


宿屋へ戻った。


---


扉を押し開けた。袋を落とした。


口が開いたままになった。


セバスチャンは上半身裸だった。


その胸の上に、女がいた。


「は──」


横のテーブルから水差しをつかんで投げた。


二人とも、同時にむせながら目を覚ました。


「エリナ?!」レインの声が、名前のところで裏返った。


「お前、何やってんだ」セバスチャンが急いで体を起こした。水が滴っている。「レイン──自分の部屋に戻れ──」


「バカか」レインの表情は、嫌悪と困惑の間のどこかだった。「ここはお前の宮殿じゃない。宿屋だぞ。あの扉、俺が自分で鍵かけたんだぞ」エリナを指す。「で、お前は何でここにいるんだ。今、都にいるはずだろ」


エリナは毛布を引き上げた。明らかに動揺している。


「ただ──町を歩いてただけ。それで、二人を見かけて、それで──」


言い切らなかった。


セバスチャンはもう、全部思い出していた。


彼女を見た。


(どうしてここにいる)


(今はシャストリン側にいるはずだろう。戦争が始まったところだ。皇帝の計画を全部、向こうに流してるはずだ)


(それとも──)


(ああ)


(物語が変わった)


(都じゃなく、ここにいるってことは──まだ裏切ってないってことだ)


(少なくとも、今のところは)


彼女を見つめ続けた。


彼女も見返した。待っている。


「これから、どこ行くの」彼女が聞いた。


「お前には関係ない」レインが即答した。


「関係あるよ」毛布を胸に抱えたまま、背筋を伸ばす。「セブを一人で行かせるつもりはないから」


「あいつは子供じゃないし、お前はあいつの母親でもない」レインはすでに荷物をつかんでいた。「行くぞ、セブ」


セバスチャンは服を着始めた。


エリナが、着終わる前に彼の手をつかんだ。


「セブ」握る力が強くなる。「私を置いて行かせない」


一拍。


「わかった」セバスチャンは彼女を見た。「じゃあ、一緒に来い」


「は──」レインが彼を見つめた。「おい。何やってんだ」


「信じてくれ」


セバスチャンはコートを結び終えた。


「行くぞ」


つづく──

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