# 第七章 彼が招かれなかった葬儀(前篇)
# 第七章 彼が招かれなかった葬儀(前篇)
セイリュウは、自分の屋敷にいた。
小説が、膝の上で開かれている。
その一行を読んだ。
『レインは、光に似せて書いた』
もう一度読んだ。
口元が緩んだ。
「そりゃそうだろうな」
小説を閉じた。
立ち上がる。
コートに手を伸ばした。
---
墓地は、雨だった。
蓮はもう、土の中だった。
母親が、父親の胸に崩れ落ちて泣いていた。誰に見られているかなんて構わない泣き方だった。墓の周りには、黒い傘の群れ──同僚、遠い親戚、セイリュウ・コーポレーションから来た、おそらく一度も直接話したことのなかった何人か。
セイリュウは、その輪の外側に立っていた。
傘はない。
雨は、他の誰にでも当たるようには、彼には当たらないようだった。
墓石の一番近くに、誰よりも近くに立っている男が目に入った──全身ずぶ濡れで、傘もなく、片手に花を持ち、墓石の横の濡れた草の上に、エビスの瓶を一本置いていた。
(エビス)
(こいつ、好きだったよな)
セイリュウは歩いていった。
その横に立った。
男の目は、いっぱいだった。あふれ出ていた、というべきか。
「めちゃくちゃ、ある」彼は、ほとんど自分に向けて言った。何時間も前に誰かに聞かれた質問に、ようやく答えるみたいに。
「あんた、誰だ」セイリュウが聞いた。
「あいつの友達」一拍。「学校からの」もう一拍、もっと長く。「さよならも言えなかった」
「お悔やみを」セイリュウは墓石を見た。「安らかに眠れますように」
「眠れないさ」光の声が割れた。「こんなことした奴が死ぬまで」
セイリュウは彼を見た。
「その通りだ」
雨が止んだ。
---
セイリュウは、蓮の父親の方へ歩いた。
その年配の男は、一週間前より二十歳分は重くなったような顔をしていた。
「こんな形で連れていかれるのは」セイリュウが言った。「辛いですね。きっと、やった奴は見つかるはずです」
頷いた。空っぽに。
「それまでの間──」
セイリュウはコートに手を入れた。
原稿を取り出した。
「蓮さんは、小説を書くのが好きでした」差し出す。「これは、俺が読んだ中で、一番の出来です」
蓮の父親は、両手でそれを受け取った。
表紙を見た。
『セバスチャン──王にならなかった皇子』
---
少し離れていた光が、それを聞き取って振り向いた。
「おじさん──」
近づいてきた。
「それ、もらえますか」
蓮の父親は、手の中の原稿を、長い間見つめていた。
何も言わなかった。
ただ、それを渡した。
もう止まっていた雨の中へ、歩いていった。
---
光は、それが溶けてしまうみたいに、原稿を抱えた。
「蓮、いつこれ作ったんだ」顔を上げる。「で、お前に渡したのか」
セイリュウはもう、立ち去ろうとしていた。
「あいつを置いて楽しんでる代わりに、ちゃんとあいつの人生を見てたら」彼は言った。「わかってたはずだ」
返事を待たずに、歩いていった。
光はそこに立っていた。
もう降っていないはずの雨が、まだ顔に残っているみたいだった。
手の中の原稿を見下ろした。
「お前の最後の作品か」声がほとんど出なかった。「俺の親友」
それを、もっと強く抱えた。
「これ、出版してやる」墓石に向かって言った。草に向かって。誰にも聞こえないところで。「みんなに断られても。自分の金でやる」
息をついた。
「これだけが、まだお前にしてやれることだ」
つづく──




