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# 第六章 南へ(前篇)

# 第六章 南へ(前篇)


「まずいな」


セバスチャンは誰にともなく言った。


もう動いていた。


玉座の間からの回廊を下って。


衛兵を抜けて。


まだ低く、神経質な声で固まっている大臣たちを抜けて。


頭が考えを終える前に、足はもう門の方を向いていた。


(物語が変わった)


(俺は四十章書いた。すべての裏切り。すべての死。完全な政治的悲劇)


(それが今、シャストリンは人を食って、竜まで持ってるらしい)


(つまり、他に何が違うのか、俺にはわからない)


(つまり、頭の中の原稿は、もう地図じゃないかもしれない)


(まずいな)


門に着いた。


二人の衛兵が並んで前に出た。


「殿下」


足を止めた。


「どちらへ」


セバスチャンは振り向いた。


皇帝が、後ろの回廊に立っていた。


ついてきた足音に気づかなかった。


いつもそうだ。


「ヴェルドレイクへ」


一瞬の間。


「兵士の証言を聞かなかったのか」


問いではなかった。


「聞きました」


「竜のことも聞いたな」


「聞きました」


「人を食うことも」


「父上──」


「お前は皇太子だ」


声は上がらなかった。上げる必要が一度もなかった。


「お前は斥候じゃない。生きている人間が一人も残っていない王国に、一人で行くようなことはしない」


セバスチャンを見た。


もう決まっていた。話はもう終わっていた。


「部屋に戻れ。これは私が処理する」


セバスチャンは一秒、その視線を受け止めた。


それから頷いた。


「はい。父上」


---


レインが、東の回廊に着く前に横に並んだ。


「セブ」


「今はやめろ」


「顔つきが違う」


「いつもこんな顔だ」


「いや、それじゃない」


セバスチャンは歩き続けた。


レインも歩幅を合わせる。


「すでに何か決めてて」レインが言う。「みんなが話すのをただ待ってる、あの顔だ」


返事はなかった。


自室の扉を押し開けた。


レインも続いて入った。


---


セバスチャンはそのままカーテンへ向かった。


天井から床まで。重い刺繍入り。


一枚目を、ロッドから引き抜いた。


二枚目も。


結び始めた。


「一人で行くなよ」レインが戸口から見ていた。「どこへ行くにしても」


「北には行かない」


「じゃあどこだ」


「南だ」


結び目を試した。強く引く。


持った。


「ネクサス帝国」


レインは一瞬、黙った。


「なぜ」


「あいつらは人間だからだ」


セバスチャンは窓へ移動した。押し開ける。


二階分の高さ。下は庭。十分柔らかい。


「シャストリンはもう何か別のものになった。ネクサスは少なくとも、交渉できる相手だ」


レインを見た。


「向こうをシャストリンに対して動かせれば──本物の同盟、本物の軍隊──俺たちだけで戦わなくて済む」


レインはすぐには答えなかった。


考えてる時の沈黙。反対する時の沈黙ではなく。


「俺も行く」


「わかってる」


セバスチャンは結んだカーテンを窓から放り出した。


落ちながら伸びていく。


庭の土から、三十センチほど上で止まった。


十分近い。


衣装箪笥へ向かった。


刺繍も紋章もない、無地の乗馬用コートを二着取り出した。皇太子だともブラックウェルだとも言わないもの。


一着をレインに投げた。


それから箪笥の奥に手を伸ばす。


箱を見つけた。


仮面が二つ。黒い布。埃っぽい道を行く商人がつけるような種類。


一つを差し出した。


「これもつけろ」


レインは両方を受け取った。


仮面を見る。


セバスチャンを見る。


「これ、最初から計画してたな」


「色々計画してる」


「自分の部屋からカーテンで逃げる計画まで立ててたのか」


「コートも用意した」セバスチャンはベッドの足元の収納箱を開けた。金貨を革袋に数え入れ始める。「念入りなんだ」


---


(俺は、この物語に竜なんて望んでなかった)


袋の口を閉じた。


(俺の原稿は、政治的悲劇だった。シャストリンは計算高い。冷たい。暗殺と経済的圧力で動く──人間の顔をした人間の残酷さ。それが全部の要点だった)


(それが今、斧と空軍を持った怪物になった)


(セイリュウが変えた)


(つまり、他に何を変えたのか、わからない。覚えていることのうち、まだ正確なものがどれだけあるのか。まだ俺のものの章が、どれだけ残っているのか)


立ち上がった。


袋をポケットに入れた。


(あの男に会う必要がある)


(ネクサスの皇子。何者であろうと。あれが何を望んでいようと)


(あいつの顔を直接見て、俺の小説に何をしたのか聞く必要がある)


「行くぞ」


---


一人ずつ、カーテンを降りた。


レインの方が綺麗に降りた。


いつもそうだ。


セバスチャンも問題なく降りた。


誰にも見られなかった。


厨房の庭を抜けて厩舎へ向かう道は、セバスチャンが十二の頃から使ってきた、いつもの道だった。


衛兵の巡回も全部覚えている。


死角も全部把握している。


子供の頃の暇つぶしが、この宮殿で一番役に立つことになるとは。


厩舎の中庭は静かだった。


馬丁の多くは本庭にいて、宴の余り馬の世話に追われていた。


この区画はただ干し草と馬と、その両方の匂いだけだった。


セバスチャンは自分の黒馬に鞍をつけた。


レインも灰色の馬に同じことをした。


宣言もない。護衛もない。仰々しさもない。


馬を引いて、横の門へ向かった。


それから、走らせた。


---


都が、後ろで小さくなっていく。


南の道が、大きく開けた。


田畑。それから森。それから、本当にここを出たんだと実感させる、平らな距離。


朝日が東の丘を越え始めた頃、レインが横に並んだ。


「本当に、ネクサスが助けてくれると思うか」


セバスチャンは前の道を見た。


(ネクサスが助けてくれると思うか)


(正直に言うと?)


(もう、ネクサスが何者なのかさえ、俺にはわからない。俺が書いた帝国は、背景の質感だった。地図を本物らしく見せるための、三つ目の勢力。原稿全体で台詞は四行だけ)


(だが、シャストリンも俺が書いたものと違った。世界全体が動いてしまった)


(俺が知っていることのうち、何が本当に知っていることなのか、わからない)


息を吐いた。


「試す価値はあると思う」


レインはそれを受け入れた。


二人は南へ、共に馬を進めた。


太陽は、まだ昇り続けていた。


つづく──

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