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異世界転生した底辺盗賊の俺、悪名を喰らって悪の帝王へ成り上がる  作者: タクト
番外編 受け継がれる黒鋼の短剣

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番外編-22 猫と狼

番外編 猫と狼


 目を覚ますと、白い天井が見えた。


 薬草の匂いがする。

 体は重い。指先を動かそうとしただけで、全身のどこかが痛んだ。


 エイベルは、ゆっくりと瞬きをした。


「おはよう」


 声のした方へ視線を向ける。


 椅子に座ったレヴィンが、こちらを見ていた。

 顔色は良くない。腕にも包帯が巻かれている。

 それでも、いつもの調子で軽く笑っている。


「……レヴィン」


 エイベルは掠れた声で呟いた。


「ここは?」


「うちの管轄の館。黒牙(こくが)のアジトの一つだよ」


「それは大変ですね……」


「普通ならね」


 レヴィンは肩をすくめる。


「でも、そうじゃないだろ?」


 エイベルは、ほんの少しだけ目を伏せた。


「はい……この度は、ありがとうございました」


「エイベルは真面目だなぁ」


 レヴィンは、どこか嬉しそうに言った。


「そういうところもいいよね」


「褒められている気がしません」


「褒めてるよ。それはそうと、今後はどうするつもり?」


 エイベルは、迷わなかった。


「……ミアを探します」


「うん。協力する」


 あまりにも簡単に、レヴィンはそう言った。


 エイベルは言葉を詰まらせる。


「……ですが」


「今更なに? 不都合でもある?」


「……いえ、ないのですが……いろいろ問題があるかと」


「たとえば?」


「私は、裏組織や商会から恨みを買いすぎています。それに、雷鶏(らいけい)に手を出したのも、黒牙としては看過できないでしょう」


「まあ、粛清返し(しゅくせいがえし)すればいいよ」


「粛清返し?」


 聞き慣れない言葉に、エイベルは眉をひそめた。


「そう。粛清人を殺せば無罪放免なんだ、うち」


「……凄い掟ですね」


「あ、もちろん明確な罪があれば駄目だよ。けど、今回は雷鶏は掟を破ってたし、その雷鶏もアレンにアジトごと焼かれたらしいからさ」


 レヴィンは軽く指を立てた。


「もしかして、粛清すらされないかもね」


「……ですが、他の組織には」


「対抗組織なら別にそのままでいいし、協力組織には……そうだ」


 レヴィンは、ぱっと顔を上げた。


「火刑のアレンを退けてるんだよ、俺たち。このネームバリューは凄いよ。もう噂になってる」


「それがどう関係するのですか?」


「この世界は、恐怖や力が支配する側面がある。そういうこと」


「……なるほど」


 エイベルは少しだけ考える。


「納得です。理解はできませんが」


「これから嫌でも理解していくよ。第八席正式補佐なんだから」


「……はい?」


「だから、今日からエイベルは俺の正補佐。書類も兄さんに提出したから」


 エイベルは、言葉の意味を飲み込むまでに数秒かかった。


「ちょっと待ってください。どういう……それに、兄君というのは?」


「俺の兄さんは黒牙の団長だから。俺も幹部なのは知ってるよね。だから、ある程度は融通が利くし」


「……なんだか、無理やりですね」


「今更?」


 レヴィンは笑った。


「ずっとそうでしょ。エイベルに言われたくないし」


「私は無理やりなど……」


「してるよ」


 即答され、エイベルは黙った。


「それに、メリットだって沢山ある。表じゃ到底入らない情報は多いよ。特に、ミアちゃんを見つけるなら必ず力になる」


 レヴィンの声が、少しだけ落ち着いた。


「今回みたいな化け物を相手にすることだって出来る。二人なら……ね」


 エイベルは、レヴィンを見た。


 頑固で、自分勝手で、妙に距離が近い。

 無茶を言っているのに、不思議と嘘には聞こえない。


「あなたには本当に呆れますね」


 エイベルは、小さく息を吐いた。


「頑固で、自分勝手で、それでいて行動力がある」


「ありがとう」


「褒めてません」


 そう返してから、エイベルは少し黙った。


「……ですが」


 レヴィンが、静かに続きを待つ。


「情報と計画なら、役に立てます」


 エイベルは、自分の包帯だらけの手を見る。


「私なら、補佐できるかもしれません」


「そう言うと思った」


 レヴィンは笑った。


「頼りにしてるよ、エイベル」


「ですが、私にも条件があります」


「えぇ!? そうなの!?」


 レヴィンが素直に驚いた。


「ええ。三年分の給与を、現金で用意してください」


「三年分!?」


 レヴィンが椅子から落ちかける。


「できなくはないけど!? なんで!? すぐに困るような生活はさせないよ!?」


「生活費ではありません」


「じゃあ、何?」


「どうしても買いたいものがあるのです」


 レヴィンはしばらく目を瞬かせた。


「……二日くらい待ってくれる? 都合してみるからさ」


 ◇


 銀匙亭は、まだ営業を再開していなかった。


 空はよく晴れている。

 焼け残った看板は外され、壁には新しい板が打ちつけられていた。


 宿主と女将は袖をまくり、数人の大学生が荷運びを手伝っている。


「あんた、これいつになったら営業再開できるんだい!?」


「口より手を動かせ。もっと早く再開できる」


「はぁ。まあ、その前向きなところは嫌いじゃないよ」


 そこへ、大学生の二人がよろよろと戻ってきた。

 大きな革鞄を二人がかりで抱えている。


「銀匙亭さんにって……重い! 何なんですか、これ!」


 どん、と鞄が置かれた。

 乾いた土埃が、ふわりと舞う。


「なんだろうね」


「さぁな。爆弾じゃねぇだろうな」


 周囲の大学生たちが、ぎょっとして一歩下がった。


「冗談だ」


「冗談に聞こえないんだよ、あんたは」


 女将が鞄を開ける。


 中には、金貨が詰まっていた。


「……なんだ、これ」


「あ、あんた。手紙があるよ」


 宿主は、震える手で封を切った。


 中には、短い文だけが書かれていた。


『豆のスープの代金を、先払いしておきます。

 いつか、また食べに行きます。』


 宿主と女将は、顔を見合わせた。


「誰からか、分かるんですか?」


 大学生の一人が、恐る恐る聞く。


 宿主は、しばらく黙っていた。


 それから、喉の奥で笑った。


「うちの、手のかかる常連さんだ」


 女将が、そっと宿主の腕に手を添える。


「生きてるんだね」


「ああ」


「それだけで、良かったね」


 大学生たちは、意味が分からないまま目を瞬かせていた。


 宿主は、鞄の中の金貨を見下ろす。


「立派な宿にしよう」


 宿主は、焼け跡の残る店を見上げた。


「いつ戻ってきても、豆のスープを出せるようにな」


 ◇


 リンドベル家の屋敷は、静まり返っていた。


 窓は閉め切られ、重いカーテンが光を遮っている。

 食堂のテーブルには、ほとんど手をつけられなかった食事が残っていた。

 メイドたちが、それを音を立てないように下げていく。


 居間では、アルフレッドとマリアンヌが寄り添うように座っていた。

 二人とも、何かを話す気力さえ失っているようだった。


「奥様。話題の焼き菓子が手に入りました。いかがなさいますか?」


 メイドが、できるだけ柔らかい声で尋ねる。


「今は大丈夫……ありがとう」


「旦那様。本日は庭の花も綺麗に咲いております。少し外の空気など……」


 執事長が控えめに言う。


「そういう気分じゃないんだ。いつも、ありがとう」


 二人は、使用人に強く当たることはなかった。

 悲しみに沈んでいても、礼を忘れない。


 だからこそ、屋敷の者たちは余計に胸を痛めていた。


 廊下へ下がった執事長とメイドは、小さく顔を見合わせる。


「どうにかして、旦那様と奥様を元気づけられないものでしょうか」


「ええ。ここまで良くしてくださったお二人に、少しでもお返しがしたいです」


「しかし……どうすれば……」


 その時、若いメイドが小走りでやって来た。


「執事長。こちらが門の前に」


 差し出されたのは、封筒だった。


 蝋は押されていない。

 差出人の名もない。

 宛名すら、最低限の文字だけだった。


 執事長は眉を寄せ、封を開ける。


 中身を見た瞬間、息が止まった。


「……これは」


「執事長?」


 メイドが覗き込もうとする。


 執事長は封筒を閉じた。


 迷いは、一瞬だけだった。


 彼は踵を返し、居間へ向かう。


「旦那様。手紙が届いております」


「……確認しておいてくれ」


「いえ」


 執事長は、いつになく強い声で言った。


「旦那様の目で、確認するべきものです」


 アルフレッドが、ゆっくりと顔を上げる。


「……なんなんだ、一体」


 封筒を受け取る。

 中から、小さな折り紙が滑り落ちた。


 アルフレッドの指が、止まった。


 見間違えるはずがなかった。


 何度も貰った。

 何度も笑った。

 何度も、これは何だと聞いた。


 自分が送った折り紙で折られた、少しいびつな形。


「これは……」


 執事長が、静かに言った。


「恐らく、クマの折り紙でございます」


 マリアンヌの目に、涙が浮かんだ。


「……違うわ」


 彼女は震える手で、その折り紙に触れる。


「これは、猫よ」


 アルフレッドの喉が鳴った。


「そうだ……ミアの猫だ」


 声が、崩れる。


「あの子が、くれた猫だ……」


 マリアンヌが折り紙を抱きしめる。

 アルフレッドがその肩を抱く。

 二人は、言葉にならない声で泣いた。


 執事長は、静かにカーテンへ向かった。


 重い布を開けると、白い光が居間へ差し込んだ。


 アルフレッドは、眩しそうに目を細める。

 マリアンヌは、胸に抱いた折り紙を少しだけ強く握った。


「旦那様」


 執事長は、柔らかく告げる。


「もう、雨は上がっております。いかがなさいますか」


 アルフレッドは、しばらく何も言わなかった。


 やがて、マリアンヌの手を握る。


「……そうだな」


 声はまだ掠れていた。


「庭で、お茶でもしよう。みんなで……いいか?」


「ええ」


 マリアンヌは、折り紙を胸に抱いたまま頷いた。


「いいわよ」


 ◇


 黒板の端に、小さく文字が残っていた。


『クロウ教授が戻ってきますように』


「……これ、消す?」


 友人が黒板消しを持ったまま、困ったようにリディアを見る。


「消さない」


「でも、ここ研究室だよ? 掃除してるんだよね?」


「消さない」


「リディア」


「消さないったら消さない」


 リディアは、机の上の紙束を揃えながら言った。

 声は妙にきっぱりしていた。


 友人はため息をつく。


「じゃあ、他の式だけ消すよ?」


「うん」


「ここだけ残すの、逆に目立つけど?」


「いいの」


「戻ってこなかったら?」


 リディアの手が、一瞬だけ止まった。


 けれど、すぐに紙束を整え直す。


「戻ってくるよ」


「……根拠は?」


「ない」


「ないんだ」


「でも、戻ってきた時に、研究室が埃だらけだったら困るでしょ」


 友人は、黒板の端の文字を見る。


「……あんた、ほんと頑固」


「知ってる」


「クロウ教授に似てきたんじゃない?」


「それは褒め言葉」


「そういうところだよ」


 その時、扉の外から声がした。


「リディアさんですか?」


 リディアと友人が同時に振り向く。


 扉の外に、配達員らしき青年が立っていた。

 小さな箱と封筒を抱えている。


「はい、そうですけど……」


「ああ、じゃあ、やっぱりこの研究室宛で良かったんだ」


 青年は首を傾げながら、箱と封筒をリディアへ渡した。


「差出人は?」


「書いてないですね。ただ、ここに届けるようにって」


 そう言って、配達員は足早に去っていった。


 リディアは、手の中の箱を見る。

 宛名は確かに、この研究室になっていた。

 だが、自分は正式な助手ではない。


「なになに?」


 友人が横から覗き込む。


「郵便……かな。でも、私、ここの正式な助手じゃないし。研究室宛に届くのは、ちょっと……」


「変だね。まあ、見てみたら? 中身」


「うん……」


 リディアは恐る恐る箱を開けた。


 中には、一本の万年筆が入っていた。


 真っ黒な万年筆だった。

 飾り気は少ない。

 だが、重厚で、妙に目を離せない。


「なにこれ……ちょっと怖い」


 友人が眉をひそめる。


「鋼……かな。見た目よりは軽いけど……」


 リディアはそっと持ち上げる。

 冷たい。

 けれど、ただの金属ではないと分かる。


「手紙、開けてみなよ」


「うん」


 封を切る。


 中には、丁寧な字で短く書かれていた。


『リディア・フォルムへ。


 黒鋼(クロガネ)の万年筆を贈ります。


 黒鋼は断てず、砕けず、折れません。

 万年筆には、勤勉と精進の意味があります。


 どうか、それを忘れずに学び続けてください。


 優秀な助手へ。』


 リディアの指が止まった。


 目が、文字の上で震える。


「……う」


「リディア?」


「うわぁぁぁぁぁぁあ!!」


「ど、どうしたの!?」


 友人が慌てて肩を掴む。


「だって……だって……!」


 リディアは手紙を胸に抱きしめた。


「優秀な助手だって!!」


 友人は目を丸くする。

 それから、手紙と万年筆を見比べた。


「これ……あの人?」


「うん、絶対そう! 絶対そうだよ!!」


 リディアはぐしゃぐしゃに泣きながら、何度も頷いた。


 友人は少しだけ黙る。


「ふーん」


 そして、研究室の奥を見る。

 整えられた机。

 消された黒板。

 空いたままの椅子。


「もう、戻ってこなそうだね」


「うわぁぁぁぁぁぁあ!!」


「泣かないでよ!! ねえ、大丈夫!」


 友人は慌ててリディアの背中を叩く。


「それなら、私たちが研究でびっくりさせちゃえばいいじゃん!」


「……する」


「うん?」


「そうするーー!! 絶対、絶対、絶対そうする!!」


 リディアは涙でぐちゃぐちゃの顔のまま、黒鋼の万年筆を握った。


「先生が続きを見たくなるくらい、すごい研究にする!!」


「もー、泣きすぎだって……」


 友人は呆れたように笑いながら、黒板の端を見た。


『クロウ教授が戻ってきますように』


「……これ、やっぱり消す?」


「消さない」


 リディアは、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、黒鋼の万年筆を握りしめた。


「先生が戻ってきた時に、びっくりするくらい進めておくの」


「戻ってこなかったら?」


「それでも」


 リディアは黒板の端を見上げた。


「いつか届くくらい、遠くまで進める」


 友人は呆れたように笑って、黒板消しを置いた。


「はいはい。じゃあ、まずは掃除からね」


「うん!」


 ◇


 その店は、いつものように落ち着いた匂いがした。


 石壁と木の梁。

 磨かれた廊下。

 表の席からは、常連たちの小さな話し声が聞こえてくる。


 レヴィンは、裏口から入った。

 エイベルも、その後に続く。


「レヴィン様」


 主人が、穏やかに頭を下げる。


「いつもの食事を、二人前でよろしいんですよね?」


「うん。今日は、二人前で」


「ご用意できておりますので、少々お待ちください」


 主人は深く頭を下げ、奥へ戻っていった。


 エイベルは、その言葉に目を向けた。


「……今日は?」


「前は、一人分になっちゃったから」


「すみません」


「いいよ。今日は二人で食べられるし」


 運ばれてきたのは、豆のスープとパン、それから肉と野菜の煮込みだった。


「食事は大事だよ」


「……前にも、そう言っていましたね」


「うん」


 レヴィンは、スープ皿をエイベルの前へ少し寄せた。


「やっと二人で食べられる」


 エイベルは、しばらく湯気を見ていた。


 それから、匙を取る。


 豆のスープを一口飲む。


「……温かいですね」


「うん。ここ、結構好きなんだ」


「分かる気がします」


 しばらく、二人は黙って食べた。


 沈黙は重くなかった。

 湯気と、匙の音と、外の小さな話し声だけがあった。


「それにしても」


 レヴィンが、パンをちぎりながら言う。


「お金の使い方、すごいね。何も自分のものを買わないんだ」


「今の私に必要な物はありませんから」


「何かはあるでしょ」


「ありません」


「大切なものは?」


 エイベルは少し黙った。


「……ミアに貰った、この狼のお守りだけです」


 取り出した小さな狼は、少し曲がり、汚れていた。


 レヴィンは、それをじっと見た。


「それ、家に置いておきなよ」


「いえ……ですが……」


「大事に保管した方がいいと思う。額にでも入れて、部屋に置くとかさ」


「そこまでする必要は……」


「あるよ」


 レヴィンの目が、真剣だった。


 エイベルは何も言えなくなった。


「代わりと言っちゃなんだけど、普段はこれを持っておきなよ」


「代わり?」


 レヴィンが腰から短剣を外し、テーブルの上に置いた。


 光を吸うような黒い刃。

 黒鋼の短剣だった。


「頂けません。黒鋼は貴重品です」


「エイベルも万年筆を贈ってたじゃん」


「これと比べれば、安いものです」


「黒鋼の意味は知ってるよね?」


「……はい」


「良かった。だから、持っていてほしいんだ」


 レヴィンは頑固だ。

 きっと、受け取るまで続けるのだろう。


「私は短剣を扱えませんよ?」


「俺も使ってないよ」


 レヴィンは笑った。


「でも、使うほど硬く鋭くなる。俺たちと同じじゃない?」


「ふ……そうかもしれませんね」


 エイベルは、黒鋼の短剣を見る。


「これは兄さんに貰ったんだ」


「団長に……?」


「そそ。兄さんが団長になる時、どうしてもそのままの自分ではいられなかった。十六で団長になっちゃったからさ」


 レヴィンは、少しだけ目を伏せる。


「舐められないように、必死だったのかもね。それでも俺たち兄弟と、ヴァイスの関係は変わらない」


 レヴィンは、短剣の柄を指で撫でた。


「勝手にだけど、そういう意味だと思って受け取ったんだ」


「そ、そんなものを頂いても?」


「そんなものだからだよ」


 レヴィンは、まっすぐエイベルを見る。


「今の俺にとって、命くらい重いんだ。その短剣は」


 エイベルは、短剣をまじまじと見つめた。


「俺は、エイベルの命を預かったつもりだ」


 レヴィンが言う。


「だからエイベルには、俺の命を預かってほしい」


 エイベルは、深く息を吸った。


「レヴィン様」


 覚悟を決めた声だった。


「この風読み、エイベル・クロウ。身命を賭して、レヴィン様の正補佐を務めさせていただきます」


「……うん。そこまで畏まらなくてもいいんだけど」


 レヴィンは困ったように笑った。


 それでも、その目は嬉しそうだった。


「よろしく、エイベル」

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