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異世界転生した底辺盗賊の俺、悪名を喰らって悪の帝王へ成り上がる  作者: タクト
第三章 黒煙と双環

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第1話 使われなかった銀の皿


 食卓には、温かい料理が並んでいた。


 焼いた肉。

 硬いパン。

 湯気の立つスープ。

 茶。


 向かいの席には、エイベルが座っている。


 いつものように背筋を伸ばし、膝にはきちんとナプキンを置いていた。

 セリカはその隣で、皿の位置を少しだけ直している。


「ハルト。食事中に肘をつかないでください」


「勝った後くらいいいだろ」


「勝った後だからこそです」


 エイベルは、静かに言った。


「食事は、生き残ったことを確かめる時間でもありますから」


「……相変わらず、飯にも理屈つけるんだな」


「理屈のない食事は、ただの摂取です」


「めんどくせぇ」


「ハルト様ほどではありません」


 セリカが淡々と言った。


「おい」


「事実です」


 いつもの調子だった。


 おかしいくらいに、いつも通りだった。


 エイベルがいて。

 セリカがいて。

 料理が温かくて。

 自分は文句を言いながら席についている。


 あり得てもよかった食卓だった。


「よく頑張りましたね、ハルト」


 エイベルが言った。


 ハルトは、スープに伸ばしかけていた手を止めた。


「……珍しいな」


「褒めるべき時には褒めます」


「じゃあ、もっと早く褒めろよ」


「あなたは、褒める前に死にかけるので」


「それは俺が悪いのか?」


「半分ほどは」


「残り半分は?」


「環境です」


 エイベルは、少しだけ笑った。


 ハルトも笑い返そうとして、うまく笑えなかった。


「……エイベル」


「はい」


「あんたがいたから、俺はどん底までは堕ちなかった」


 エイベルの手が、わずかに止まった。


 セリカも、何も言わずにこちらを見る。


「粛清場で、誰も仲間じゃなかったって思った」


 声は、自分でも驚くほど静かだった。


「あの時、俺は本当に一人だった。そう思った」


 ハルトは、食卓の上に視線を落とす。


「でも、あんたが拾って、教えて、面倒見てくれて」


 喉の奥が、少し詰まった。


「俺はまた、誰かを信用することができたよ」


 言ってから、胸の奥が変に熱くなった。


 自分で言っておいて、らしくないと思った。


 エイベルはしばらく黙っていた。


 それから、困ったように少しだけ笑った。


「らしくありませんね」


「……悪かったな」


「いえ」


 エイベルは穏やかな声で言った。


「『毒は入ってないか?』ではないんですか」


「それは……!」


 言い返そうとして、言葉が止まった。


 それは。


 最初にこの館で飯を食った時の話だ。


 まだ何も信用できなくて。

 出された食事すら疑って。

 毒が入っていないか、と本気で考えていた。


 それなのに今は、こんなことを言っている。


 ハルトは、何かを誤魔化すように視線を落とした。


 その時、目が止まった。


 エイベルの前に置かれた皿。


 銀の皿だった。


 縁に、細い彫り模様が入っている。

 派手すぎないものを選んだ。

 けれど、安物には見えないものを選んだ。


 何度も店を回って、結局これが一番似合うと思った。


 ハルトが、エイベルに渡した皿。


 その返しに、エイベルは黒い短剣をくれた。


 あの黒い短剣。

 エイベルが、ほとんど抜かなかったのに、いつも大切に身につけていたもの。


 今は、ハルトのものになった短剣。


 けれど。


 この銀の皿は、現実では一度も使われなかった。


 ハルトは、息を吐いた。


「……そうか」


 胸の奥が、静かに沈む。


「夢か」


 エイベルは否定しなかった。


 セリカの姿は、いつの間にか薄くなっていた。

 食卓の湯気も、少しずつ白く霞んでいく。


「はい」


 エイベルは、いつものように穏やかに頷いた。


「そうです」


 そして、少しだけ申し訳なさそうに目を伏せた。


「すみません」


「なんで、あんたが謝るんだよ」


「この皿を、現実で使うことができませんでしたから」


 ハルトは銀の皿を見た。


「……せっかく選んだのにな」


「ええ」


「似合うと思ったんだよ」


「はい。とても良い皿です」


「使ってねぇだろ」


「ここでは、使っています」


「夢の中じゃ意味ねぇよ」


 エイベルは、少しだけ笑った。


「意味のないものを、人は夢に見ません」


 ハルトは何も言えなかった。


 銀の皿。

 温かいスープ。

 向かいに座るエイベル。


 全部、あったかもしれないものだった。


 金剛を倒して。

 エイベルが生きていて。

 セリカがいつも通り小言を言って。

 自分が文句を言いながら食卓につく。


 そんな朝が、あったかもしれない。


 けれど、なかった。


 エイベルは死んだ。


 この皿は、一度も使われなかった。


「ハルト」


 エイベルが言った。


 ハルトは顔を上げる。


「食べなさい」


「……」


「あなたは、生き残ったのですから」


 食卓が白く霞む。


 エイベルの輪郭も、湯気の向こうへ溶けていく。


「では、起きなさい」


 声が遠くなる。


「セリカが待っていますよ」


 ハルトは、目を開けた。


 白い天井が見えた。

 薬草の匂いがした。

 胸の奥が、焼けるように痛んだ。


 食卓はない。

 銀の皿もない。

 エイベルもいない。


 あるのは、寝台と包帯。


 それから、枕元に置かれた黒い短剣だけだった。


「……エイベル」


 声は、ほとんど息だった。


 黒い鞘。

 細い柄。

 使い込まれているのに、手入れの行き届いた短剣。


 エイベルが、銀の皿の返しにくれたもの。


 夢の中で使われていた皿は、現実では一度も使われなかった。

 けれど、この短剣だけは現実に残っている。


 食卓ではなく、戦うための刃だけが残った。


「……死んだのか」


 分かっていた。


 あの傷で助かるわけがない。

 血の中で、あの人は笑っていた。

 勝ちましたか、と聞いた。

 見事です、と言った。


 ハルトは、エイベルの娘を探すと約束した。


 生きているなら見つける。

 死んでいても、ちゃんと知る。


 そう言った。


 エイベルは、安心したみたいに目を閉じた。


 それが最後だった。


 胸の奥に、冷たい石を入れられたような重さがあった。


 その時、椅子が小さく軋んだ。


「目が覚めましたか」


 セリカがいた。


 黒髪をきっちりまとめ、背筋を伸ばして座っている。

 いつものように整っている。

 けれど、その目元には、わずかに疲れが残っていた。


「……セリカ」


「医者を呼んできます」


「医者?」


「三日、眠っていました」


「……三日?」


 聞き返すより早く、セリカは立ち上がった。


 その動きは静かだった。

 だが、いつものセリカより少しだけ早かった。


 扉が閉まる。


 部屋に静けさが戻った。


 三日。


 そんなに眠っていたのか。


 ハルトは、もう一度短剣を見る。


 たった三日。

 けれど、その三日の間に、世界は勝手に進んでいるのだろう。


 金剛を殺したこと。

 銀翼がどうなったのか。

 黒牙がどう動いたのか。

 エイベルの死が、どう扱われたのか。


 何も知らない。


 ただ、腹の奥が空っぽだった。


 ぐう、と腹が鳴った。


 あまりにも間抜けな音だった。


「……最悪だな」


 人が死んで。

 約束を背負って。

 身体中が痛くて。

 それでも腹は減る。


 生きているというのは、思ったより図々しい。


 しばらくして、扉が開いた。


 入ってきたのは、黒髪の魔法治療師だった。


 クロード・ヴェイン。


 相変わらず愛想のない顔をしている。


「……またあなたですか」


「起きて最初にそれかよ」


「前回は粛清場で半壊。今回は金剛と呼ばれる怪物に殴られて内臓損傷。あなたは治療師を何だと思っているんですか」


「命綱」


「迷惑です」


 クロードはそう言いながら、寝台の横に立った。


 手つきは丁寧だった。

 言葉よりずっと優しい手つきで、包帯の上から胸の状態を確かめる。


「痛みは?」


「全部痛い」


「正直でよろしい」


「褒められてる気がしねぇ」


「褒めていません」


 淡い緑の魔力が、クロードの手から流れ込んだ。

 胸の奥にあった焼けるような痛みが、少しだけ遠のく。


「肋骨、内臓、打撲、裂傷。どれも軽くありません。一度に治しすぎると身体が持ちませんので、数日に分けます」


「まだ寝てろってことか」


「当然です」


「どのくらい」


「最低でも数日」


「最悪だな」


「生きているだけで十分です」


 クロードは淡々と言った。


 その言葉に、少しだけ喉が詰まった。


 生きているだけで十分。


 それを、素直にそうだと思えない自分がいる。


 エイベルは死んだ。

 俺は生きた。


 その差に意味があるのか、まだ分からない。


 クロードが処置を終えて部屋を出ると、入れ替わるようにセリカが戻ってきた。


 手には木の椀。


 湯気。

 白く濁ったもの。


 嫌な予感がした。


「食べられますか」


「……肉は?」


「三日眠っていた重傷者に肉を出す治療師がいたら、資格を剥奪されます」


「クロードはもう剥奪されてるだろ」


「それでも出しません」


「スープは?」


「粥です」


「パンは?」


「粥です」


「選択肢が死んでる」


「あなたは生きています」


 セリカは椀を差し出した。


 ハルトは包帯だらけの手で受け取る。

 少し震えた。


 セリカはそれに気づいたが、何も言わなかった。


 粥は白く濁っている。

 細かく潰された穀物に、薬草のようなものが混じっていた。

 湯気の匂いだけで、あまり期待できないことは分かる。


 一口食べた。


 まずかった。


 薬草の苦味。

 薄い塩気。

 潰れすぎた穀物。

 舌触りも悪い。


「……まずい」


「それは私が丹精込めて……」


 セリカの言葉が、途中で止まった。


 ハルトは椀を見下ろしたまま、泣いていた。


「……まずい粥だな」


 もう一口、食べる。


「ほんと、まずい」


 涙が、椀の縁に落ちた。


 自分でも驚いた。


 泣くつもりなんてなかった。


 エイベルが死んだことも。

 金剛を砕いたことも。

 ロウエンを殺したことも。

 自分が三日も眠っていたことも。


 全部、どこか凍ったみたいに胸の奥へ沈んでいた。


 なのに、まずい粥を口に入れた瞬間、急に分からなくなった。


 エイベルは死んだ。

 俺は生きている。

 腹が減っている。

 目の前の粥は、どうしようもなくまずい。


 それだけのことが、苦しかった。


「……まずい」


 また食べる。


 涙がまた落ちる。


「なんで、こんなまずいんだよ」


 セリカは何も言わなかった。


 責めることも。

 慰めることも。

 冗談にすることもできなかったのだと思う。


 ただ、少しだけ目を伏せた。


「……はい」


 静かな声だった。


「味付けは、次までに改善します」


「次もあんのかよ」


「あります」


 セリカは、椀を持つハルトの手が震えないように、そっと下から支えた。


「あなたは、また怪我をするでしょうから」


「ひでぇ信頼だな」


「信頼ではありません。予測です」


 ハルトは笑おうとして、失敗した。


 涙と粥と痛みで、顔がぐちゃぐちゃだった。


 それでも食べた。

 まずい粥を、最後まで食べた。


 夢の中で、エイベルは食べなさいと言った。


 だから食べた。


 生き残った者の朝食は、夢で見た銀の皿ではなく、木の椀に入ったまずい粥だった。


 椀が空になる頃、部屋の外が静かになった。


 セリカは椀を受け取り、布でハルトの手元を拭いた。


 それから、一通の封書を取り出した。


 黒い封。

 黒い蝋。

 牙の印。


 見た瞬間、ハルトは息をのんだ。


 嫌な予感がした。


「団長から、あなたへの通達があります」


「……今かよ」


「今です」


「病人なんだけど」


「意識はあります」


「黒牙って、意識があったら働かせるのか」


「状況によります」


「今回の状況は?」


「働きます」


「最悪だな」


 セリカは封を切った。


 中の紙を開く。


 部屋の空気が、少し重くなった気がした。


黒牙(こくが)団長、ゼギル・ヴァルグの名において、ハルトに通達する」


 セリカの声は、いつもより硬かった。


「銀翼団長、金剛(こんごう)のヴァルド。銀翼副団長、銀脈(ぎんみゃく)のロウエン。この二名の討伐功績を認める」


 ハルトは黙って聞いた。


 功績。


 黒牙は、あの夜をそう呼ぶ。


 エイベルが死んだ夜。

 金剛を砕いた夜。

 ロウエンの頭を石畳に叩きつけた夜。


 それを、功績と呼ぶ。


「これにより、ハルトを黒牙(こくが)幹部に任ずる」


 言葉の意味が、すぐには入ってこなかった。


「席次は第六席」


 セリカは続ける。


「正式称号、王牙六領(ヘキサレイン)


 ハルトの喉が詰まった。


 黒牙幹部。

 第六席。

 ヘキサレイン。


 遠い言葉だった。


 少し前まで、俺は灰鼠(はいそ)だった。

 荷車を押していた。

 倉庫で荷物を運んでいた。

 殴られ、蹴られ、粛清されかけた。


 それが今。


「……俺が?」


 掠れた声が漏れた。


「俺が、幹部……?」


 セリカは紙から目を上げた。


「はい」


 その顔は静かだった。


 けれど、どこか決意したようでもあった。


「あなたは、黒牙(こくが)第六席です。ハルト様」


「……」


 ハルトは、包帯だらけの指を少し動かした。


 今、妙なものが耳に刺さった。


「今、なんて?」


「ハルト様、と」


「やめろ。なんか気持ち悪い」


「慣れてください」


「無理だろ。三日前までハルトだったじゃねぇか」


「三日前までのあなたは、第六席ではありませんでした」


「細けぇな」


「重要です」


 セリカは真顔で言った。


「今のあなたは、黒牙(こくが)第六席。王牙六領(ヘキサレイン)です。補佐である私が、呼び捨てにするわけにはいきません」


「……むずむずする」


「それも慣れてください」


「黒牙って、怪我より先に変な呼び方で殺しにくるんだな」


「死因としては珍しいですね」


 ハルトは小さく息を吐いた。


 笑ったつもりだった。


 でも、声は少し震えていた。


 枕元の短剣を見る。


 エイベルの短剣。


 あの人が死んだ夜に、自分は生き残った。

 その結果として、椅子が一つ転がり込んできた。


 勝ったから。

 殺したから。

 生き残ったから。


 黒牙は、それを功績と呼ぶ。


「……最悪の出世だな」


 セリカは否定しなかった。


 代わりに、通達書の続きを読み上げた。


「なお、旧第六席管轄、および黒煙のレヴィン管理下にあったカジノ、酒場、外縁区の一部を、第六席ハルトの管轄へ移す」


「……待て」


 嫌な予感が、さらに大きくなった。


「また、銀翼より奪取した外縁区周辺の縄張り、倉庫、取引路、付随する人員も同じく第六席管轄とする」


「待て待て待て」


 ハルトは身体を起こそうとして、胸の痛みに顔をしかめた。


「動かないでください、ハルト様」


「その呼び方も待て。今なんて言った? 管轄? 人員? 取引路?」


「通達の通りです」


「俺、まだ寝台の上なんだけど」


「称号と管轄は、歩けるかどうかに左右されません」


「左右されろよ」


 セリカはさらに紙をめくった。


 まだあるのかよ。


「第六席補佐として、セリカを任ずる」


 そこで、セリカは一度言葉を止めた。


「……以上です」


「お前もかよ」


「はい」


「決まってたのか?」


「先ほど知りました」


「お前も被害者じゃねぇか」


「補佐です」


「便利な言葉だな」


 セリカは通達書を丁寧に畳んだ。


「ハルト様」


「だから、むずむずするって」


「慣れてください」


「努力はする」


「では、早速ですが」


「嫌な言葉だな」


 セリカは寝台の横に、小さな紙束を置いた。


 それは、小さな紙束に見えた。

 だが、その後ろにはもっと大きな紙束が控えている気配がした。


「こちらが、現在あなたの管轄となったシマの概略です」


「病人に?」


「病人でも、領地は待ってくれません」


「領地って言うな。怖くなる」


「実際、領地です。第六席の領域ですから」


「……ヘキサレインって、そういうことかよ」


「はい。王牙六領(ヘキサレイン)。第六席が支配する領域を持つ者、という意味合いもあります」


 ハルトは天井を見た。


 夢の中には、銀の皿と温かい食卓があった。


 現実には、包帯とまずい粥と、山ほどの帳簿がある。


「……エイベル」


 ハルトは小さく呟いた。


「あんた、文字教えるタイミング完璧すぎんだろ」


 セリカが、少しだけ目を伏せた。


「エイベル様は、先を見る方でした」


「ああ」


 ハルトは通達書を見た。


 そこに並ぶ文字は、まだ少し読みにくい。

 けれど、読める。


 エイベルに教わったからだ。


 風魔法だけじゃない。

 戦い方だけじゃない。

 この世界で、文字を読めなければ食い物にされるということまで、あの人は教えていた。


 死んでもまだ、助けられている。


「……で」


 ハルトは息を吐いた。


「俺は何から見ればいい」


 セリカは、ほんの少しだけ驚いたように目を開いた。


 それから、すぐいつもの顔に戻る。


「まずはレヴィン様の管轄だった酒場とカジノの収支です」


「収支」


「売上と支出です」


「それくらいは分かる」


「本当に?」


「たぶん」


「不安ですね」


「補佐だろ。助けろ」


「助けるためにいるわけではありません。補佐です」


「似たようなもんだろ」


「違います」


 セリカは即答した。


 そのやり取りに、少しだけ呼吸が戻る。


 ハルトは枕元の短剣に触れた。


 黒い鞘は、冷たかった。


 エイベルは死んだ。

 ハルトは生きている。


 泣いても。

 粥がまずくても。

 身体が痛くても。

 変な称号を押しつけられても。


 生き残った者には、次が来る。


 セリカが紙束を開いた。


 文字の列が、紙の上にびっしりと並んでいる。


 ハルトは、それを見て小さく笑った。


「金剛の次が帳簿かよ」


「黒牙では、よくあることです」


「絶対嘘だろ」


「少なくとも、今日からはそうなります」


 ハルトはもう一度、短剣に触れた。


 それから、紙束に目を落とす。


 黒牙(こくが)第六席。

 王牙六領(ヘキサレイン)


 最悪の出世。

 最悪の朝食。

 最悪の仕事始め。


 だが、生きている。


 なら、食べる。

 読む。

 聞く。

 死なない。


 そしてハルトは、第六席として最初の帳簿を開いた。

もちろん。第3章1話用のあとがきなら、今回はエイベルの余韻+第六席就任+次回シマ問題を軽く触れるのが良さそう。


あとがき


第3章「黒煙と双環」開始です。


金剛を倒し、黒牙第六席へ。

……と言えば聞こえはいいですが、ハルトにとっては勝利よりも先に、エイベルを失った痛みが残る朝になりました。


今回の夢の食卓は、エイベルが生きていればあったかもしれない未来です。

銀の皿と黒い短剣。

食卓に残れなかったものと、現実に残ってしまったもの。

この二つは、今後もハルトにとって大事なものになっていきます。


そして、ついにハルトは黒牙第六席。

王牙六領(ヘキサレイン)となりました。


ただし、いきなりかっこよく幹部生活が始まるわけではありません。

待っているのは帳簿、シマ管理、薬物問題、売人の反発、そしてセリカの補佐です。


次回からは、第六席になったハルトが初めて「自分のシマ」を持つことになります。

戦って勝つだけでは終わらない黒牙の世界を、ここから描いていきます。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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