表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の雷(トール・ハンマー)〜家族を奪われた天才物理学者の逆行転生。未来の知識で四大勢力に復讐する〜  作者: 天音天成
第5章:審判の日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/93

第84話 裏切り者の絶望と、絶対不可侵の契約

 アメリカのホワイトハウスとペンタゴン、中国の中南海、ロシアのクレムリン、そして欧州連合の合同軍事司令部。

 世界を支配してきた四大勢力の心臓部が、宇宙から撃ち下ろされた『神のトール・ハンマー』によって一瞬にして蒸発し、残された各国のトップ(指定生存者)たちが全世界の目前でイージス・イノベーションズに無条件降伏を誓ってから、数日が経過していた。


 世界は、かつてないほどの死に絶えたような静寂と、恐慌パニックの余韻に包まれていた。

 だが、その中で最も深い絶望のどん底に叩き落とされていたのは、大国からの直接的な攻撃を受けたわけではない『極東の島国』の政府中枢だった。


「――お、終わりだ……。我々は、なんという取り返しのつかない過ちを……」


 日本の首相官邸、地下危機管理センター。

 総理大臣は、血の気を失った顔で頭を抱え、床に崩れ落ちていた。周囲の閣僚たちも、魂が抜けたように虚空を見つめ、あるいは震える手で何度も顔を覆っている。


 数日前、彼らはG4(臨時四ヶ国協調体制)からの恫喝と甘言に屈し、自国の救世主であったはずのイージス社を『国際テロ組織』と認定し、自衛隊と警察の特殊部隊を六本木の本社ビルへと突入させた。

 大国という絶対的な権力(泥舟)に乗り換え、神盾宗一という男を生贄に差し出すことで、自分たちの地位と日本の平和が保障されると信じて疑わなかったのだ。


 だが、彼らが手にしたのは、完全にデータが消去されドロドロに溶け落ちたサーバーの残骸と、機能停止した深海プラントによる全国的な大停電ブラックアウトだけだった。

 そして極めつけに、彼らがすがりついた『大国』の軍事力そのものが、宇宙からの裁きの光によって物理的に消滅してしまったのだ。


「総理……! 各国の残存政府から、イージス社へ支払う賠償金の捻出のため、日本が保有している米国債および中国債の『事実上の踏み倒し』を通告してきました! 我が国の国家予算の基盤が根底から吹き飛びます!」

 財務大臣が、泣き叫ぶような声で報告する。


「国内のエネルギー備蓄は、あと三日で完全に底を突きます! 国民の怒りと不安は頂点に達し、官邸周辺では数万人規模の暴動が発生しています! 警察の機動隊も士気を失い、このままでは、日本という国家が内側から完全に崩壊します!!」

 経済産業大臣も、絶叫した。


「神盾社長に……神盾宗一に連絡はつかないのか!? 彼に土下座してでも、深海プラントを再稼働してもらわなければ、我々は完全に終わりだぞ!!」

 総理が狂乱して通信士に詰め寄るが、答えは数日前から常に同じだった。


「だ、駄目です! あらゆるルートを使っても、イージス社との通信は完全に遮断されています! 彼らは我々を……見捨てたのです……!」


 自らの保身のために恩人を裏切り、その結果として国家を破滅の淵へと追い込んだ官僚たち。

 彼らは今、電気が消えかけ、非常用電源の薄暗い赤い光に照らされた地下室で、自らの浅ましさと無能さを呪いながら、ただ震えることしかできなかった。


     * * *


「――実に滑稽な喜劇コメディですね、ボス」


玲奈が手元のタブレットから視線を上げ、心底からの軽蔑を込めて冷笑した。


「日本の首相官邸の監視カメラの映像です。総理以下、全閣僚が発狂寸前で互いに責任を押し付け合っています。彼らは今になって、自分たちがどれほど愚かな選択をしたのかを骨の髄まで理解したようですね」


「自業自得だ。裏切り者と、自らの頭で考えない権力者には、相応の末路が待っているというだけの話さ」

 私は、特注のレザーチェアに深く腰掛けたまま、冷めたコーヒーを口に運んだ。

 壁面の巨大モニターには、停電で真っ暗になった東京の街並みと、暴徒と化した群衆の映像が映し出されている。


「ボス。日本政府の各省庁から、一日に数万件もの『謝罪と懇願』の通信が入ってきていますが……いかがなさいますか? このまま放置すれば、日本経済は数日以内に完全に死に絶えます」

 玲奈が、CFOとしての冷静な視点で問いかける。


「放置はしない。日本は、私の家族が生きる国だ。彼ら無能な官僚のためにではなく、結衣やサチコ、誠、そしてユウキが平和で快適な日常を送るために、インフラは復旧させてやる必要がある」


 私はゆっくりと立ち上がり、モニターの向こうの暗号化回線へ視線を向けた。

「ヴィクトル、クリス。聞こえているな」


『はっ、ここに』

『おう、ボス! 最高の気分だぜ!』


 分割画面に映る二人の腹心は、長年の戦いを完全に制した達成感に満ち溢れていた。


「大国どもへの『戦後処理』はどうなっている?」

『完璧です、ボス』

 ヴィクトルの火傷の痕が残る顔に、冷徹な笑みが浮かぶ。

『四大勢力の残存政府との間に、『絶対不可侵条約』の調印が完了しました。彼らは今後、我が社の宇宙開発や深海プラントに対して一切の軍事的・政治的干渉を行わないことを確約し、軍備を大幅に縮小するプロセスに入っています。また、賠償金として総額五百兆円の振り込みが、オフショア口座を経由して開始されました』


「よし。クリス、軌道上の『神の雷』のステータスは?」

『いつでも撃てるようにアイドリング状態を維持してるぜ! ボスのバイタルとの同期デッドマンズ・スイッチもオールグリーンだ。連中が少しでも怪しい動きを見せりゃ、数秒で残りの都市も消し炭にしてやれる!』


「ご苦労だった。お前たちのおかげで、歴史の修正力は完全に粉砕された」

 私は深く頷き、再び玲奈へと向き直った。


「玲奈。日本政府への通信回線を一つだけ開け。……暗闇で震える彼らに、私からの『条件』を突きつけてやろう」

「了解いたしました。総理の直通ホットライン、接続します」


 数秒後、メインモニターに、首相官邸の地下でボロボロになった日本の総理大臣の顔が映し出された。


『か、神盾社長!! おおお、通信に出てくださったか!!』

 総理は画面越しの私の姿を見るなり、狂ったようにすがりついてきた。

『申し訳なかった! 我々は大国の圧力に屈し、あのような愚行を……! どうか、どうか深海プラントを再稼働させてくれ! このままでは日本が滅んでしまう!』


「総理。ずいぶんと見苦しい姿ですね」

 私は、極低温の氷のような瞳で彼を見下ろした。

「我が社に自衛隊を差し向け、テロリスト扱いしたその口で、よくもまあ助けを乞えるものだ」


『ひぃっ……! す、すべて私が悪かった! どんな条件でも飲む! だから、どうか……!』

 総理は、画面の向こうで文字通り土下座の姿勢をとった。一国のトップとしての威厳など、そこには微塵も存在しなかった。


「……条件は三つです」


 私は、冷酷な宣告を突きつけた。


「第一に、イージス・イノベーションズおよびその関連施設、ならびに私の家族に対する『完全な治外法権』を認める超法規的特別法を、明日中に国会で可決させること」

『ち、治外法権……!?』


「第二に、我が社が日本国内で行う一切の事業に対する無税措置。および、警察や自衛隊による干渉の永久禁止」

 私は、彼の言葉を遮って続けた。

「そして第三に。……あなた方、現内閣の全閣僚は、特別法の可決をもって即時総辞職し、政界から永久に引退すること。これが、私と家族を裏切った代償です」


 総理は顔面を蒼白にさせ、言葉を失った。

 それは、日本という国家の主権を完全に私に売り渡し、自らの政治生命を終わらせるという、究極の屈辱だった。

 彼らは国を率いる者として、最後まで抵抗するべきだったのかもしれない。だが、すでに大国すらも消滅させられた現実を前にして、彼らにそんな気概は残っていなかった。


「どうしますか? 三秒で選んでください。三、二――」

『の、飲む! すべての条件を飲みます!! だから、どうかエネルギーを……!』


「契約成立です」

 私は冷たく言い放ち、通信を一方的に遮断した。


「……見事です、ボス」

 玲奈が、深い感嘆の息を吐き出す。

「これで、大国だけでなく、日本という国家すらも完全に我々のコントロール下に置かれました。……私たちは、本当の意味で『誰にも干渉されない絶対的な聖域』の土台を手に入れたのですね」


「ああ。これで日本の『事後処理』は完全に終わった」


私はレザーチェアからゆっくりと立ち上がり、暗闇のコントロールルームの壁に広がる世界地図を見つめた。

 地球上の覇権と宇宙の絶対的な力を手に入れ、大国どもの狂気も、裏切り者たちの浅ましさも、すべてを私の圧倒的な力でねじ伏せた。


「ですがボス。大国のトップと日本の官僚を黙らせても、まだ世界には我々を憎む『火種』が燻っています」

 玲奈が、タブレットの画面を世界地図の別のエリアへと切り替えながら告げた。


「わかっている。……ヴィクトル、クリス。聞こえているな」

 私がモニターの向こうの暗号化回線へ視線を向けると、二人の腹心が瞬時に居住まいを正した。


『はっ、ここに』

『おう、ボス! いつでもいけるぜ!』


「トップの首が飛んだことで、世界中の裏社会や軍の残党どもがパニックに陥り、自暴自棄の行動に出る可能性がある。……日本へ帰還する前に、地球上のすべての『ゴミ掃除』を終わらせるぞ」

『御意。すでに網は張ってあります』


極東の悪魔の視線は、日本から世界全土へと向けられた。

 愛する家族と共に帰還する絶対的な平和(日常)を完璧なものとするため、歴史の裏側で行われる『最後の徹底的な掃除クリアリング』が、静かに幕を開けようとしていた。

【読者の皆様へのお願い】

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

もし「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と、ページ下部からの【星評価】をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ